第11話『旅クラゲ』

僕がなぜ、詩を書き続けているのか。

いや、書き続けねばならないか。


これを説明するには、どうしても

“旅クラゲ”のことを話さないといけないんです。


いえ、“食べ比べ”でも“旅比べ”でもありません。

“旅クラゲ”です。


ああ、わかります。

私も初めてこの話を聞いたときは

同じような顔になったと思います。

しかし、僕は至って真面目です。


旅クラゲと言っても、

喜望峰から東南東へ約150km、アガラス岬を回って

更にマダガスカルヘと旅してまわる

渡りクラゲの類の話ではありません。


いえ……旅はするんですが、

そういうスケールの話ではないというか……

あ、それと断っておきますが、

一度話したらもう元には戻れませんよ?

それでもかまいませんか?


いや、これは別に出し惜しみしているわけではなく、

一応、僕の優しさから言ってるつもりなんです。


わかりました。あなたが詩人として……

どうしても望むならお話ししましょう。


あれは、うだるような熱気と都会の人いきれで、

街全体がまるで陽炎のように揺らめていた

夏の午後のことです。


『たとえ宇宙が微塵に帰しても僕の詩神ミューズは滅せず。

飽くなき探求の徒となりし僕のエーテルが溢れ続けるが如く豊潤かつ芳醇に……」

という、少々ご託めいた長ったらしいタイトルの壮大な詩を書き上げ、

一息つこうとした矢先、ふいに『彼女』ーーあ、いや、「彼ら」は現れたんです。


いえ……玄関から。

                          (了)


※読みたい人が増えたら続き書きますね。(笑)

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