夢の扉は開かない

葉月秋渡

プロローグ

今朝見た「悪夢」

 気づいたらそこは暗闇だった。

 そこには一差の光もなく何も見えなかったが、目の前ある扉だけはその存在をはっきりと主張していた。

(なんだここは。)


 困惑しているとその疑問に呼応するかのように名状しがたい声が響いた。

「私を殺して。」

 突然の声に驚き身構えたが周りに扉以外に見えるものはなく、また何らかの気配もしないようだった。

 一先ず危険はないとして肩をなでおろした瞬間、少しの息苦しさを感じた。

 次第にそれは大きくなり、息を吸っても吸っても苦しく、まるで溺れたようになった。


(これは、やばい。)

 顔は青ざめ、見開かれた眼球はせわしなく動き、視界は虹色に反転し、手は水面を目指すように空を切った。

「……!!」

 のどが震えているのにも関わらず声は音にならなかった。

 死を直感し、意識が白く遠のいていくその時、またあの声が響いた。


「私を殺して。」

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