第2話

 オマケ?


 そこには、二人の男が椅子に座っていた。

細身の男「どうも、細身の男です。一応、このランドシン伝記の主人公をしてます」

大男「いきなり、大嘘を吐(つ)くな。全く、お前は。

   というか、言ってて虚(むな)しくならないか?

   あ、一応、自己紹介をしておくと、俺とこいつは、

   剣聖シオンのギルド・メンバーだ」

細身「なぁ、大男はん」

大男「なんだ?細身の男」

細身「前から、ずっと、ずっと、言いたかった事があるんや

けど・・・・・・」

大男「ああ、察しはついてるが、言ってみると良い」

細身「ワイら、なんで名前、出てこんのやッッッ!」

 そして、場を沈黙が支配した。

大男「・・・・・・まぁ、シオンのギルドは人数が多いからな。

   俺達の名前まで出てきたら、誰が誰か、分からなく

   なるんじゃないか?」

細身「分かる。きっと、分かってくだはる。

   だから、名前、名前だしてもええんや」

大男「うーん。よし、じゃあ、ここで名前を言ってしまおう」

細身「おおッ!じゃあ、ワイの名前は×××やッ!」

大男「・・・・・・すまん、聞こえなかった」

細身「え?じゃあ、もう一度。ワイの名前は×××や、

   ええ名前やろ?」

大男「・・・・・・細身の男、諦めろ。どうも、名前を出す事は

   出来ないらしい」

細身「何でやねんッ!何で、名前を言う事すら出来へんのや!」

 そして、細身の男は泣き出した。

大男「まぁ、そう泣くな。もしかしたら、

このオマケ・コーナーを進めていけば

名乗れるように-なるかも知れない」

細身「ほんまかいなッ!よっしゃ、なら、頑張っていきましょ!

   大男はん!」

大男「ああ、細身の男」

細身「・・・・・・何か、その呼び方、すごく悲しくなるんやけど。

   でも、考えてもしょうがあらしまへん。よっしゃ、なら、

作品の解説をさせてもらうわ」

大男「ほう、確かに、ランドシン伝記は設定が分かりづらい所

   が-あるからな」

細身「そうなんや。ワイも、この国に来た時は苦労したで。

じゃあ、まずはワイらの居るエストネア皇国(おうこく)を説明させてもらうわ。この国は、エルフと人間が主(おも)に住んでおるんや」

大男「そして、王家や貴族はエルフ、官僚(かんりょう)や庶民(しょみん)は人間という、

   区別が付けられている」

細身「そうなんや。とはいえ、人間がエルフより劣った生活を

   しているか、と言われれば、必ずしも-そうでは無いんやで。人間の商人や高級官僚は下手な貴族より金持ちやし、

   エルフの貴族の中でも結構、貧乏貴族は多いんや。

   とはいえ、それでも、エルフに対し、鬱屈(うっくつ)した感情を

   持った人間も少なく無いんや。

   そして、この事が、後の《第3章・エストネア動乱-編》

   にて語られる予定なんや」

大男「相当、先になりそうだがな。しかし・・・・・・」

細身「どうしたんや、大男はん?そないな深刻な顔しなはって」

大男「いや、俺達、そこまで生き残れるのかと思ってな」

細身「え?」

大男「いや、今度のククリ島での戦いは、熾烈(しれつ)を極めそうだし、

   嫌な予感が-するんだ」

細身「そんなッ!いやや、ワイは死にとうないッ!」

大男「お前も素直な奴だなぁ・・・・・・。だったら、付いて来なくても良いんだぞ」

細身「いややッ!一人ぼっちは、もっと嫌やッ!」

大男「なんか、段々と、お前のキャラが分からなくなってきた」

細身「そんな事、言われても困るわ!まぁ、ええわ。

   話(はなし)、戻そ。えぇと、とはいえ、貴族の全てがエルフというワケでも無いんや」

大男「そう、たとえば、狂戦士ロータ・コーヨ・・・・・・じゃなかった、ロー・コヨータさんも、男爵だけど人間だ。

   ただし、領地も狭く、爵位も低いが」

細身「まぁ、そこら辺に差別は-あるねん」

大男「ちなみに、爵位の前には、その領地の名前が付く。

   ロー・コヨータさんの場合、エスネルという土地を

   治(おさ)めているから、エスネル男爵というワケだ。

   だから、コヨータ家のエスネル男爵って事だ」

細身「ちなみに、《アルカナ・ドラグーン》の魔導アルマの

   機体のエスネル系列とは多分、関係ないんで気にせん

といてや」

大男「また、マイナーな話を。それで、話を戻すと、

   聖騎士団が人間、王立-騎士団がエルフ、

   元老院が人間、王宮内に存在する枢密院(すうみついん)がエルフ。

   という感じで区分されているんだ。

   もっとも、わずかな例外も存在して居て、たとえば、

   聖騎士団の中でも、エルフの聖騎士は数名、存在する

   んだ」

細身「とはいえ、色々とあって、エルフの聖騎士の立場は

   非常に悪いんやけどな」

大男「まぁ、それの詳細は本編に回すとして、次に移ろう」

細身「おう。ほな、ルーテス家の説明をさせてもらうわ。

   この家は、比較的、新しい家なんやけど、爵位を

一気に高めていったんや。そして、今や公爵家や。

   いやぁ、大出世やなぁ。ちなみに、複雑な話になるんやけど、ルーテス家は下の名前を領地名にしたりするんや。

   たとえば、セーファ王妃の兄のカレギエ公爵の場合なんやけど、あの人はエイン・カレギエ・ルーテスを名乗っとるんや。

これはシュトネイ国でもよくある事で、あの国では下の名前と領地の名は同じで、たとえばジン・ド・レイスさんなら、レイスはレイス地方を所有するという証なんやで」

大男「厳密に言えば、ジン・ド・レイス=レヴァルが本名であり、

   レヴァルが家名となる。さて、話をルーテス家に戻そう。

   ルーテス家はエストネア国にありながら、シュトネイ国

に近い命名式を使った。これはルーテス家がシュトネイ

からの移民という説もあるが、それだけでは無いだろう。

彼らは家名にあたる場所に公爵領の名を置く事により、

公爵領を決して手放しはしないと宣言しているのだろう」

大男「ところで、彼等(かれら)は純血を尊(たっと)び、一族の中での結婚を良しとする。そのせいか、近親などの行為も、多くみられ、現に、王妃(おうひ)陛下(へいか)とカレギエ公爵(こうしゃく)は腹違いの兄妹であるが不義(ふぎ)密通(みっつう)の関係にある」

細身「ちなみに、カレギエ公爵には一人娘が-おられての。それ

   がセレス姫なんや」

大男「そして、王妃陛下の一人息子、すなわち第1王子

   エギルフィア殿下と、セレス姫は婚約の関係にある。

   つまり、二人は従兄弟(いとこ)という事になる」

細身「いやぁ、結構、真面目に説明したでぇ。

   そろそろ、ワイの名を紹介してもええとちゃうか?」

大男「ああ。そろそろ、いいだろうな」

細身「よっしゃ!ワイの名は×××や!よろしくな!」

大男「待て、細身の男、まだ、聞こえてないぞ」

細身「そんな・・・・・・何でやねん、ワイが何をしたんやッ!

   確かに、若い頃は悪さもしたもんやで。

   畑から野菜を盗んでポリポリと食べたモノや」

大男「お前は、一度、きちんと農家の皆さんに謝れ」

細身「え・・・・・・うん。農家の皆さん、申しワケありませんでした。つい、出来心やったんですぅ!」

 と、頭をテーブルに-こすりつけながら言うのだった。

大男「やれやれ」

細身「しかし、昔、匍匐(ほふく)前進(ぜんしん)で野菜を盗みに行ったら、蛇と

   遭遇して、噛(か)まれた事が有ったわ」

大男「自業自得としか言いようがないな」

細身「よい子のみんなは、野菜を盗む時は匍匐(ほふく)前進(ぜんしん)はしちゃ

   あかんで」

大男「よい子は、そもそも野菜を盗まない気もするが・・・・・・。

   ところで、前から気になっていたんだが」

細身「なんや?大男はん?」

大男「お前の-その方言は何だ?何か色々とごっちゃになって

   ないか?」

細身「う・・・・・・とうとう突っ込まれる日が来てしもうたか。

   これは、ワイの故郷の方言に、色々と違う方言を混ぜた、

   言わばミックス弁(べん)やな」

大男「ミックス弁(べん)って・・・・・・。何かミックス弁当みたいで、

   おいしそうだな」

細身「その発想は無かったわぁ。まぁ、ワイは一応、共通語を

   話しとったんやけど、どうもエストネアでは、すごくなまって聞こえるらしいねん。あっ、これ、ワイがエストネアに来たばっかの時の話やで」

大男「分かってるから、続けてくれ」

細身「それで、ワイは考えたんや。都会の言葉に合せると

   ワイのアイデンティティが崩れてまう。しかし、

   なまってると思われるのは嫌や」

大男「なる程。それで、新たな-なまりを作ったのか」

細身「せや。まぁ、そういうワケや。さて、そろそろ、

   ワイも名前を語れるやろ。ワイの名前は×××や」

大男「駄目だな」

細身「何でやッ・・・・・・何で名前すら言えないんじゃぁ!」

 と、半泣きになりながら細身の男は言うのだった。

細身「あ、そうや。一応、言っておかな-あきまへん。

   孤島で医者をしていた夫婦、ロイスはんとリコリスはん、

   この二人は、実は、実はぁッ!」

大男「カンナ・エクステンションの主人公ユウトの義理の両親

   だな。ユウト母とユウト父として出ている」

細身「なんで言っちゃうんや!ワイが今、まさに言わんとしとったのにッ!」

大男「す、すまん・・・・・・」

細身「まぁ、ええわ。ふふ、でも、あの二人もウチらと同じで、

   名前が出てきとらんからの。なんか、親近感を持てる

   わぁ」

大男「あ、ちなみに、前世がリコリスさんのユウト母の

   名前は如月(きさらぎ) リエ。前世がロイスさんのユウト父の

   名前は如月 ヨシハル、だ」

細身「って、普通に言えとるやん!なんや、これ!

   しかも、ランドシン伝記で名前、出しても、

   しょうがあらへんッ!」

大男「いやぁ、言ってみるモンだな」

細身「ちっくしょう!ワイの名前は、×××、×××、

   ×××なんやぁぁぁぁぁ!」

 そして、細身の男は-さめざめと泣き出した。

 それから、細身の男は-ゆらりと顔を上げて、鞄の中から、

ノート・パソコンを取りだした。

大男「お前、それは・・・・・・」

細身「世界観とか、知った事やあらへん!

   ワイもエレナはんみたいに、このアカシック・レコードに接続して、名前を出すんや!」

 そして、パソコンを起動しだした。

大男「おい・・・・・・それって、以降の展開が書かれてるんじゃ」

細身「構(かま)へんッ!ネタバレとか、知った事やあらへんッ!

   全部、ぶちまけてやるわぁぁぁぁぁッ!」

大男「おいッ!なんか、逆恨み-みたいになってるぞ」

細身「ええんやッ!うおおおおッ!」

 そして、細身の男はデータとして保管されている文書を

読み出した。

細身「おおッ、ランドシン伝記は全9部-予定。ククリ島のいざこざが終わる頃で、第1部終了や。

   何て事や。第×部では、何と×××に行く事に。

   しかも、シオンはんの子供が成人して出て来る

   やあらへんかッ!」

大男「ほう・・・・・・。しかし、その時、俺達は生きてるのか?」

細身「う・・・・・・それは重要や。もうちょっと、探してみよ」

 そして、細身は、さらに情報を探るのだった。

細身「あっああ、なんて事や、ワイ、ワイ、そんな所へ!

   まるで、左遷やないかッ!?」

 すると、一人の男が部屋に駆け込んできた。

 彼こそは、狂戦士ロー・コヨータだった。

ロー「こら、ネタバレは、私が許さん!」

細身「くぅ、主役級のあんたには分からへんのやッ!

   ワイらの気持ちなんてッ!というか、《アルカナ・ドラグーン》では、あんさん、主役やないかッ!」

ロー「それとこれとは関係ないだろう。えいッ!」

 そして、ローはパソコンに水をかけた。

 それと共に、パソコンは白い煙をあげて、止まった。

細身「ああっ!何て事、するんやッ!

   許さへんッ、もう絶対、許さへんッ!」

 そして、細身の男は全身の魔力を高めた。

大男「オオッ、これ程の迫力、恐らく、作中でも無いぞッ!」

細身「悲しい事、言わんといてッ!くらえ、狂戦士ローよッ!

   我が最上級-剣技をッッッ!」

 すると、ローは両手を広げた。

ロー「やめるんだ。ナックッ!」

 とのローの言葉に、細身の男は、魔力を解いた。

細身「い、今、何て・・・・・・。もう一回、言ってや」

ロー「ああ、ナック。それが-お前の名だ。

   私は、お前の名を告げたぞ」

 すると、細身の男ことナックは涙を流し出した。

ナック「ローはん・・・・・・あんたって人はッ。

    襲いかかろうとしたワイを救ってくれはるなんて。

    うおおおおおぉぉぉんッ!」

 と、泣きながらローに抱きついた。

ロー「はい、よしよし。あと、鼻水を付けるのは止(や)めような」

大男「おお・・・・・・流石(さすが)に主役を任せられる人はクオリティが

   違う・・・・・・」

ロー「レギンも。むしろ、君のクオリティこそ高いぞ」

 と、大男レギンの名を言うのだった。

レギン「おおッ、俺にも-ついに名前がッ!」

ナック「流石(さすが)やッ!ローはん、これからは、ローの兄貴と呼ばせてくださいッ!」

レギン「俺も、一生、付いて行かせて下さいッ!」

ロー「いやぁ、照れるね。まぁ、来るモノ拒(こば)まずだから、

   好きにすると良いよ」

ナック「よっしゃあああッ!ワイも騎士になったるでッ!」

レギン「ああ、俺も、ローの兄貴のように、騎士を

    目指(めざ)そう」

ロー「そ、そうか、よし、なら、今日は私のオゴリだッ!」

ナック「よっしゃぁぁぁッ!流石、ローの兄貴やッ!」

レギン「ああ、この懐(ふところ)の太さ、やはり違うな」

 すると、剣聖シオンは入って来た。

シオン「待ってくれ。二人とも、俺のギルドは-どうなるんだ」

ナック「・・・・・・シオンはん、なんで水を差すような事、

    言いはるんや」

レギン「それに、俺達が居なくても、エレナさん達が

    居るじゃないか。むしろ、よりハーレムが濃く

なるんじゃないのか?」

シオン「そんな事、言わないでくれよ。二人の力が必要なんだよ」

ナック「クゥ。こういう時だけ、引き留めるなんて。

    大体、シオンはん、あんたの未来、少し見させて

    もらったでッ!正直、幻滅やッ!あんさん、何て

    事、しはるんやッ!」

シオン「え?俺、何かするの?」

ロー「まぁ、その話は置いといて。二人とも、シオンが

   可哀相(かわいそう)だから、やっぱり、シオンのギルドに居て

   あげたら、どうだい?」

 との言葉に、ナックとレギンは感動の面持(おもも)ちを

浮かべた。

ナック「流石(さすが)やわ・・・・・・。他人をこうも気遣(きづか)えるなんて」

レギン「ああ。シオンとは大違いだ」

シオン「待ってくれッ!あんまし、俺をいじめないでくれッ!」

ロー「いやぁ、シオンは-いじめたくなるんだよ」

シオン「そんな・・・・・・。くぅ、じゃあ、みんな、今日は俺の

    おごりだ!」

ナック「うわ・・・・・・飯で釣ろうとしてきたわ・・・・・・」

レギン「ちょっと、懐(ふところ)の狭さが見て取れるな」

シオン「待ってくれ。何で俺、そんなに責められなくちゃ

    いけないんだ?」

ナック「うっさい!植物族のリステスともヤルくせにッ!」

シオン「え?そうなのッ?」

ロー「こらこら、ネタバレは、あんまし」

ナック「あ、すいまへん、ローの兄貴。もう、口(くち)はチャックに

    しときますわ」

ロー「いや、別にそこまでしなくても、まぁ、でも、そろそろ

   食事にするか。シオンのおごりでね」

シオン「え?俺、ロー先輩にもおごるんですか?」

ロー「当然だろう。じゃあ、See You Next Time」

シオン「・・・・・・今月、財布(さいふ)がピンチだな。ハァ」

 と、ため息を吐くのだった。


 ・・・・・・・・・・


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