サウンドデュエル
ぴろる
宿敵(ライバル)前編
「貴様!今すぐ俺と戦え!デュエルだ!!」
とある日曜の昼間、人通りでごった返すホコ天の秋葉原中央通りにけたたましい声が鳴り響いた。
「はぁ、お客さん。ご注文は何にしますか?ケチャップ、マヨ、ミックスがありますけど」
「ケバブなどいらん!俺は貴様とデュエルをして徹底的に叩きのめしたいだけだ!!」
「あのー、今バイト中なんで後にしてもらっていいすか?つーかケバブ買わないんなら他のお客さんに迷惑なんでどっか行ってもらえます」
列に並んでる他の客がいったい何が起こってるのかと、苛立ちと不安げな顔でこちらの様子を伺っている。
「何だと貴様!この連戦連勝のサウンドデュエリストであるこの俺にたった一度勝ったからといって調子に乗りおって。俺を愚弄する気か!許さんぞ!!」
「なになに~浦野くん、クレームなら勘弁だよ」
奥から店長が出てきた。
「すいませんね~、お客さん。ウチの店員が何か粗相をしましたか?」
「かっ、海座さま!」
店長が急に慌てふためいた。
「お前、いったいこのお方に何をしたんだ!このお方はフーゾク(大声)などのナイトレジャー産業を営んでおられる海座財閥のご子息様で先月からこのAKBケバブのオーナーでもあるんだぞ!」
ややコーフン気味に店長がそう言った。
「店員の教育がなってないようだな、店長よ」
「すっ、すいません海座さま。ほらお前、何やってんだ、早く謝れ!」
「いや、別に僕なにも悪いことしてないスよ。この人が客でもないのに大声で変なことわめくので他のお客さんに迷惑かなと」
「貴様、まるで自分の立場が分かっていないようだな。この店は貴様が働いていることを知り、貴様をゆさぶるため先月俺が買収したのだ」
「貴様が俺とデュエルして俺に勝てば、何もなかったことにしてやろう。だが、断る場合、無条件で貴様そして店長もクビだ!」
(え!?なんで俺まで・・・・)
店長はその時そう思った。
「な、何だとー、きったねぇ真似しやがって。一体なんのつもりだ!」
「言ったはずだ。俺はただ貴様とデュエルをして叩きのめしたいだけだと」
「こっちはお前と違ってバイトしないと生活できないんだよ!」
「貴様に選択の余地はない。今俺とデュエルするか、店長もろともクビになって路頭をさまようかだ」
(クッソー、今クビになったら今月の家賃払えないし、つーか色んなトコ100箇所以上面接してやっとゲットしたかったバイトだし。これはヤバいな)
店長はガクブル状態で恨めしそうにこっちを見ている。
「さあ、どうする?貴様に選択の余地は残されておらんぞ」
「分かった、やってやんよ!けどデュエルするったって何処でやんだよ」
ぴろるはふてくされながらそう言った。
「フッ、心配には及ばん」
そう言うと海座はポケットから手のひらサイズの機械を取り出しスイッチを押した。
するとなんと、店の天上が中央から左右に屋根ごとバカンと割れて観音開きにオープンし、中央通りにサウンドデュエルを行うための特設ステージが轟音と共に突如現れた。
ありえない光景に通りを行く人の動きが止まり、こちらを注目している。
「貴様とはここで戦う!この店を買収した時から密かに毎日深夜、改造しておいたのだ。そしてついに昨日出来上がったというわけだ」
「さぁ、ぴろるよ!今ここにいる全員がオーディエンスだ!秋葉原の公衆の面前でこのDJカイザー様に大敗し、赤っ恥をさらすがいい!ハーッハッハッハッ!!」
「あー!DJカイザーだ。キャー!かっこいい!」
女子高生が騒いだ。
「なるほど。しかしデュエルするのはいいが、今俺はディスクを持っていないぜ」
「問題ない、ディスクならここにある」
今度は巨大なケバブが刺さった全てのグリルがくるりと反転し、大量のディスクが収められた棚が出現した。
「この中には今まで発売された全てのディスクが入っている。好きなディスクを選べ!」
そしてぴろるは制限時間内に規定である40枚のディスクをディスキングした。
「用意は整ったようだな」
「ああ」
海座は店内の奥に出現した特設ステージへ続くエレベータに乗り込み、ぴろるもそれに続いた。
後編へ続く
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