淡々として、それから

君尋

プロローグ

七つある曜日のうち、土曜日が一番好きだ。もっと正確に言うと、金曜日の夜から始まる、土曜日にかけての何にもやらない時間が恋しくてたまらない。

何もしない。ご飯も食べないし、いつもの出掛ける前のシャワーもしない。テレビとか本とかに支えられている毎日が、他人事のように感じる。

その時間私は、呪縛に向けての心構えをしているのだと思う。

ただ一人、部屋中にある積み重ねられた本に囲まれながら、壁を見つめていたり、窓の向こうに流れる雲を目で追っていたりする。

すると段々と貴方にまた会いたくなるのだ。不思議と昨日までの焦燥と苛立ちが薄れて、もう一度陽介に会いたいと思ってしまう。

いい加減に時間が勿体ないから全て忘れて、早く一人の私になって心を隠してしまおうなんて思っている、平日が嘘だったみたいになる。

そして、日曜日が来る。すると、また日常の地獄が始まる。死んでしまえたら楽なんだろうな、そんなことばかりを反芻する毎日が始まる。

その時陽介は、憎しみの対象で、そして少しだけ幸せであってほしい対象でもある。

自分以外の誰かなんて、私にとったら全てが粗末なものでしかないのに、陽介だけは違った。

寝ても覚めても、陽介の影を探してしまう。

どうしようもないことを、長時間見せ続けられるのは、酷く苦痛だった。

けれど、土曜日が来るとまた心のバランスを回復する。昨日までの絶望を簡単に忘れてしまう。私の頭は小鳥のようだ。

私は晴れた土曜が恋しくてたまらない。




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