第37話 フィーネとの待ち合わせ場所へ

 俺はカルニバスから聞いた情報をミミカとラミイに伝えた。


 ガリュウは俺達の元いた世界に行っていて、そこで大量虐殺を企てていること。目的は【最終スキル】を得ること。しかし元いた世界に戻って実体化するためには鍵が必要で、どうやらそれが『女神と繋がっている』俺のことらしい、と。


 話し終わるとミミカとラミイからの質問攻めにあった。


「カルニバスって誰よ。信用できるの?」


 ダークエルフとサキュバスのハーフだそうです。それ以外は知りません。初めて会ったので……。


「ガリュウはどうやって異界――私たちが来た元の世界へ行ったんや? その手段は?」


 わかりません……。


「それでガリュウが手に入れようとしている【最終スキル】っていうのは?」


 さあ、何でしょうか……。


「鍵ってマヒロのことやんな? マヒロを捕らえてどないしようというん? どうやってマヒロを利用するん?」


 まったく不明で……。


「ガリュウの最終目的は? 最終スキルを手にしてどうするの?」


 ……。


 どの質問にも答えられなかった。


 まともに答えられたはずの質問はラミイのこの質問だけだった。


「カルニバスのおっぱいと私のおっぱいどっちが大きかったん?」


「断然カルニバ……」


 ラミイの鉄拳が飛んできたので、結局どの質問にも答えられなかった。


「マヒロはお馬鹿さんね……」

「マヒロ使えんなあ」


 鼻血を垂らした俺を二人は呆れたように見て言った。


「徹底的に情報を引き出さないとダメでしょうが」

「おっぱいに気を取られてたんやないの?」


 ミミカ様、ラミイ様のご意見、もっともでございます。心の声ですら、俺は従順な下僕として振舞っていた。


 そんなこんなで二人に頭が上がらないまま三日間が過ぎた。


 家事に雑用に俺は馬車馬のごとく働いた。ひたすら二人に頭を下げ続けた。


 それはもう地獄の三日間だった。




 フィーネと約束の日の前日に、落ち合う予定の場所へ来ていた。前日のうちにテントを張って一泊し、ここで朝ごはんを作っている時にエミリスさんも到着した。


「お、少年が朝食を作っているのか。感心、感心。だが、気のせいか少年がやつれているような……」


「エミリス様……おはようございます」


 実際俺はやつれていたと思う。しょうがない。これも今日までだ。早くフィーネに会って癒やされよう。きっとゴブリン娘の顔が天使に見えるはずだ。


「エミリス様おはようございます」


 ミミカとラミイも起きたようで、テントから顔を出してエミリスさんに挨拶した。


「うむ、おはよう。約束は今日の昼頃だな。いい返事をフィーネ殿が持ってくると良いのだがな」


「ええ、そうですね。そうだと良いのですが」


 不安そうにミミカが答えた。


 だが約束の昼になってもフィーネは現れなかった。そして夕方になった。やはりフィーネは現れない。


「どうしたんやろうね……」


 ラミイが心配そうにゴブリン帝国の方角を見つめる。


「フィーネ殿に何かあったのだろうか」


 夕日を見つめながら、エミリスさんも不安そうな顔に変わる。


 そのまま太陽は地平線に沈み、暗闇が訪れた。


 結局この日はフィーネが姿を現すことはなかった。撤去してしまったテントを張り直し、エミリスさんを加えて一晩を明かした。だが翌日もフィーネは姿を見せない。


 微かに見える極細の糸はゴブリン帝国に伸びている。俺のスキルにもフィーネの名前がある。フィーネは確かに生きていてゴブリン帝国にいるはずだ。


 二日が過ぎ、三日が過ぎた。


 フィーネに何かがあったことは確かだった。ここに戻れない何かがあったのだ。

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