愛に生きる乙女の話

海翔

愛に生きる乙女の話

はじめまして!いきなりだけど私には付き合ってる人がいるの!今日は何だか誰かに惚気たい気分だから話すわね!



私の恋人は『 』さんって言ってねとっても素敵な人なのよ?でも私と高校が違うからあんまり頻繁には会えないの...。それに今年は受験で忙しいみたいだから私が負担になっちゃいけないのよ。



それでも、たまに校門のところに迎えに行くの。でもね、私恥ずかしくなっちゃっていつもあの人の事を見ると隠れちゃうの...勇気って大切よね。あの人はいつも私に気づいてくれるのよ?その瞬間がたまらなく好きなの。私を見つけた時のあの人の顔...あの顔は私にしか見せてくれないんだもの。画像フォルダにも沢山あるわ。



その後はね、一緒に帰るの。でもやっぱり恥ずかしくって私、少し離れて歩いちゃうの...本当は隣で手を繋いだりしたいのよ?でも、どうしても勇気が出なくて...



多分、私のおばあちゃんに昔から良く『女の子は少し後ろを歩いて守ってもらうものなんだよ』って教えられていたからなのね。おばあちゃんは大和撫子って感じの素敵な人なのよ?



そんな風に暫く歩くと、あの人も私と並んで歩きたいのね?出てきなよ、って言うのよ。それから私は隣を歩くの。あの人ったら家まで競争とか言って走っちゃうのよ?子供っぽくて可愛いでしょう?



その後はあの人の家の前で別れてから私も家に帰るわ。家に帰ってから私たちのラブラブ生活は本番よ?



まず、あの人が寝る前には必ず電話するの。あの人、夜更しが苦手だから良く寝落ちしちゃうの。その後暫く寝息を聴いてると私も寝ちゃうのよ。でもあの人が起きる前には起きてモーニングコールしてあげるのよ。だからあの人は朝が弱いけれど遅刻はしたことないの。それが私の自慢かな。



登校は学校が違うから一緒には出来ないの。だから浮気とかしてないか心配...疑いたくはないんだけどね?あの人モテるから...。





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「ふふ、今日も迎えに行っちゃおうかな♪」



鼻歌交じりに自分の学校の門をくぐる。学校は違うけれどそこまで遠い距離ではない。



いつも通り、何も変わらずあの人の学校の校門前で待っている。そんな日常。でも今日はちょっとだけ勇気を出してちゃんと話しかけようと思っていた。



そんなワクワクした気持ちはあの人の姿を見た瞬間に消え去ったけれど。



「...え、誰...あのヒト...私のあの人と手繋いで...歩いてる、?」



玄関から出てきたのは楽しそうに話しながら、手を繋ぎ歩いてくるあの人と知らない女。そのまま私の横を素通りしてしまった。私は絶句して何も言えずにしばらくそこに立ち尽くした。



「......なんで、なんでよ...浮気...?あの人に限ってそんなこと...!」



二人が横を通り過ぎる時、一緒にいた女がチラリとこちらを見たのも癪に障った。まるで、まるで『ざまぁみろ』とでも言うように...!!



「許せない...、許せないわ...。浮気なんてしないって、そう約束したのに...!!」





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ピンポーンピンポーン



静かな住宅街、月灯りの下で響くチャイムの音



いつまで経っても出てきてくれない



ピンポンピンポンピンポン



ガタン



家の中から物音がする


あぁ、ほら、居るじゃない早く出てきてよ



ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン



「ひぃっ...!」



まだ開けないの?居留守は通じないのよ



ガチャガチャガチャガチャ



焦れったくなってドアノブを回す



当然鍵がかかっているから開きはしないけれどそれでも出てきてくれるならば...



「もう、もうやめてよ!!私が何をしたって言うの!?」



ドアの向こう側で何か叫んでる



何をしたかって?


そんなの貴女が一番知っているでしょうに!!!!



ドンッドンッ



怒りに任せてドアを叩く



私のあの人を誑かして



私からあの人を奪おうとして



それで私に勝ち誇ったような顔したあの女



ドンッドンッドンッドンッ



知っているわよ?金曜日の夜は両親が家にいないことくらい



ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ



知っているわよ?ズボラな貴女は庭の大きな窓を開けっ放しって事



ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッ



「やめてっ、...!やめてよぉ!!」



私はドアを叩くのをやめた



これ以上やっても無駄だと思ったから



それに、『庭 の 窓 が 空 い て い る も の』





――――――――――――――――――





その日は午後から土砂降りだった



朝、傘を持たずに家を出たあの人の為にいつも通り校門の前で傘を持って待っていた



本当は玄関まで迎えに行きたかったのだけれど、それはきっと迷惑だから、他の友達に校門まで傘に入れてもらって出てきてくれれば、なんて思っていた



でも、『あの人』は傘もささずに私の目の前に立ったの



濡れることも気に止めずに、私の目をじっと睨みつけて、『あの人』はこう言ったの





「この......、人殺し...ッ!」





――――――――――――――――



嗚呼、可哀想なアナタ



あの阿婆擦れに毒されてしまったのね



大丈夫よ、私が正気に戻してあげる



なぁんにも、怖がる必要なんてないのよ



私のアナタ



私だけのアナタ



安心して、世界中の全てがアナタの敵になろうとも



私だけはアナタの味方よ



だから、だからね




嗚呼、貴女の愛を私に頂戴な





――――――――――――――――




感情のないニュースキャスターの声がテレビから聞こえる



何処かで事件があったらしい



「...あら、家の近くね。殺人事件なんて怖いわ」



『大丈夫、守ってあげるよ』



「ふふ、嬉しい...、私もアナタを守るわ」



『ありがとう』



こんな幸せってないわ



アナタがいて、私がいる



それだけでとても幸せで



他の事なんてどうでも良かった



それが、私の手に入れたかったもの





―――私が手にしたもの―――













―――――――――――――――――




夕方のニュースをお伝えします



行方不明になった××市の『 』さんですが、以前からストーカー被害にあっていたと知人が話しています



今回の行方不明事件との関係性は依然調査中ですが、『 』さんが行方不明になる数日前に、自宅で殺害されていた友人の○○さんの事件との関係性が強いとの発表がありました



警察は捜索態勢を拡大する他、ストーカー事件も同様に調べていく方針です



以上、夕方のニュースでした












貴女はワタシノモノ


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