ガーナット ~継がれた証~
高城ゆう
0.群青
リグール大陸中央、デルビゥール荒野の西、帝国の首都キールムの門より30km照りつける太陽が激しさを増す中、ローブをかぶった一人の男は今にも倒れそうなくらいに衰弱していた。
足はもう一歩も動かない、それどころか言うことさえ聞かなかった。男は歯を食いしばりどこか遠くを見据えて、今にも息絶えそうなかすれた声で何かをつぶやいた。
「デル・クィーザ・フュール」
忘却のかなた人々に忘れ去られし言語だった。
刹那、轟音と共に群青色の閃光が男を包んだ。空気は振るえ、鳥は一斉に飛び立ち、遠くから薄く、薄く、女性の叫び声が聞こえる。閃光は時間と共に小さく圧縮されていった。やがて拳ほどの大きさになると、はるか上空へ上昇し、消えていった。
それを見たどけた男は、最後に薄く前歯が見えるほどの笑みを残して、そこに倒れこんだ。群青色の閃光が荒野に持たらした静寂の中、男が地面に倒れこんだ音はどこまでも響いていくようだった。
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