第50話 「素顔のままで」 妖怪「レタッチ」登場
1
心の闇にとらわれて 出口の見えない人がいる
天狗の力の少年が 来たりてこれを焼き払う
てんぐ探偵只今参上 お前の心の悪を斬る
内村先生の人脈をたどって、またも「依頼」が持ち込まれた。
「今度はどんな事件?」
シンイチは依頼人の写真を先生に見せられた。うつっているのは、会社で撮られたOL姿の
彼女のフェイスブックから落とした、同僚と昼休みのランチ中の写真を内村は見せた。
「先生もう分かってると思うけど、妖怪はデジタル写真にはうつらないよ?」
「知ってる知ってる。まずは何枚かの写真を見てくれ。これが最近彼女がネットにアップした写真だ」
と内村先生は、紙焼きしたものを順に見せた。
「キレイな人だね。……ん?」
「気づいたか?」
「んん? ……なんか分かんないけど、何かヘン。んんー、違和感というか……」
シンイチは言い淀んだ。自分の中の違和感をうまく言葉で説明できない。
「これが彼女の高校時代、大学時代、そして入社当時の写真だ」
内村は時系列で彼女の写真を見せた。
「アレ? ……徐々に、顔が変わってる!」
「そう。少しずつ、少しずつ、変わっていってる。こうやって飛び飛びに写真を見ると、それが明らかになるだろ」
「……髪型は同じだし、化粧? ……整形?」
「それが違うんだ。コレ、俺が彼女を盗み撮りしてきた写真」
内村先生は更にもう一枚の写真を出した。
「ん? ぜんぜん違うじゃん!」
むしろ最初の一枚、彼女の高校時代の顔に近かった。肌が浅黒く、あかぬけない、バランスのあまりよろしくない、いわば味のある顔立ち。それが写真の中では、時を追うごとに、顔が白くなり、目が大きくなり、くっきりとし、ニキビやホクロが消え鼻が高くなり、エラが削られ、顔がほっそりし、唇の肉感が増し、肌がスベスベになり髪がサラサラになり……
「レタッチだ」
内村先生は彼女の「病」の名を告げた。
「レタッチって?」
「フォトショップとかのデジタルソフトで、写真を加工するのさ」
「『修正』とかいうやつ?」
「そうだ。最近はスマホのアプリで自動でやってくれるやつもある。彼女は決して他人のカメラには写らない。自分のデジカメでしか自分を写さないんだ」
「それって……」
「自分で写真を修整する為だろうな」
「はあああ。修正って、そんな簡単に出来るの?」
「きっと何年もかけてレタッチ技術をマスターして来たんだろう。だから時を追うごとに、技術の進歩に比例して本当の彼女から離れていったんだ」
シンイチは時系列に写真を並べてみた。サルが人に進化するような感覚が思い起こされる。
「
「真を写すと書いて写真。写真の定義が、デジタルによってよく分からなくなってきてるな」
二人は、実際の彼女を見に行くことにした。物陰から、オフィスで働いている彼女を覗き見た。
「どうだ?」と、妖怪の見えない内村先生はシンイチに耳打ちする。
「ビンゴ。彼女の肩に、妖怪『レタッチ』が」
妖怪「レタッチ」は、紫色の異常な顔だった。地肌の上に顔を真っ白に塗り、目が巨大化した、整形しすぎた女のような不自然な顔であった。
シンイチは家に帰って、作戦を練ることにした。
「ネムカケ。レタッチってCGのこと?」
駄目元で、遠野の知恵袋ネムカケに聞いてみた。田舎の居眠り猫がCGのことなんか知らないだろうと思っていたら、意外にもネムカケは博識だった。
「レタッチもCGも、コンピューターでデジタル写真を加工するという点では同じじゃな。レ+タッチじゃから、元のものに手を加える、という意味合いじゃ。CGはゼロから画像をつくる場合、レタッチは既にある画像を
「ネムカケ……CGにも詳しいの? 意外!」
「わしの愛読書は、月刊大衆文楽と、月刊CGワールドじゃぞい!」
「へええええ」
ネムカケは、得意気になって解説を続けた。
「合成とは別々の写真を合成することじゃが、レタッチは元の写真を元の写真に合成するようなものじゃな」
「はあ」
「どんなことが出来るかを示したほうがよいじゃろうな」
ネムカケは「CGワールド」四月号を持ってきて開いた。
「簡単なのは
「高校の頃の写真は、やけに肌だけが白いんだ。そのときに覚えたんだね」
「簡単じゃからな。次は、特定の部位の変形。福笑いを想像するとよいぞ。丁寧に目を切り取って、ちょっと拡大コピーして元の写真の上に乗せると、まるで目が大きくなったようになる」
「へえ!」
「さらに細かく切り取れば、黒目だけ大きくすることも出来るし、タテ方向だけ拡大して白目を大きくし、その上に大きくした黒目を置くことも出来る」
「鼻を細くするのは逆にすればいいのか。拡大縮小の福笑いなんだね」
「そうじゃ。キレイに切り取らないとバレバレだから、レタッチはキレイに切る技術が不可欠なのじゃ」
「なるほど。それを徐々に覚えるのか」
「これを応用して、顔を細くしたりエラを削ったりも出来るぞ。輪郭を削るのはさらに技術がいる。膨らませるより、削るほうが難しいのじゃ。削ったところ、余った空間を、埋めなければならん。背景ごと歪ませるとバレバレじゃから、背景は背景、削った人物は人物、と完全に一回分離しなければならん。で、削って余った空間は、背景が続いているように元の背景を加工する。『
「はああああ」
「レタッチは元の写真から作るしかないから、実は加工するたびにどんどんおかしくなってくるんじゃ。情報が減ってくるからのう」
「?」
「肌のぶつぶつを消すためには、ツルツルの肌の部分を切り取ってきて変形して、上にかぶせる。つまりツルツルの部分がコピーされる。元の部分は消えるから、全体としては情報が減っている。これを繰り返すと情報が減っていって……」
「どうなるの?」
「全体にのぺーっとした、アニメっぽい不自然な顔になるのじゃな」
「あ……。最初に感じた違和感は、そんな感じだ!」
ネムカケはファッション雑誌の何冊かを持ってきて、表紙のモデルを見せた。
「最近の女性雑誌の表紙は、実は皆
「全身の整形も出来るのかあ……」
「要するに福笑いじゃからの。切って貼ってなじませて、じゃ。専属メイク、専属スタイリスト、専属カメラマンに加えて、専属
「じゃみんな嘘つきじゃん! 美人ばっかかと思ってたよ!」
「そうじゃ。その嘘こそが、心の闇なのでは」
「でもさ、実際に会えば写真とぜんぜん違う! ってなるよね? 整形ならまだ分かるけどさ、写真だけ整形するのはなんでだ?」
「ふうむ。そこが『現代の闇』なのかのう」
闇は思ったより深い。女心のいまいち分からないシンイチは、ミヨちゃんに相談することにした。
2
「フェイスブックとかネットの為でしょ?」と、ミヨはあっさりと答えた。
「なにそれ?」
「自分の写真を撮って、ブログとかツイッターとかインスタとかフェイスブックとかの、ネットにアップするのね。そこにはいろんな人たちがいて、互いに繋がってるわけ」
「その人たちに向けて整形してるってこと?」
「そうね」
「その人たちは友達より多いの?」
「多いから、そうしてんじゃない?」
「ばれなきゃ嘘をついててもいい、って感じか」
「たぶん」
「じゃさ、……現実より、ネットのほうが大事ってこと?」
シンイチは時々本質を槍で刺すように、真芯に到達する。ネムカケは今日も感心した。
「その女、会ってみたい」
とミヨは言った。
「私だって、妖怪『みにくい』の克服者なんだから」
シンイチとネムカケとミヨと内村先生は、実際に塔子に会って話を聞くことにした。自分の肩の妖怪「レタッチ」を見せられた塔子は、これまでのレタッチをすべて認め、それが何で悪いのかと逆切れした。
「別に、誰に迷惑かけてるでもなし、どこが駄目なのよ!」
シンイチは冷静に説得しようとした。
「でもさ、これを放置すると妖怪『レタッチ』は巨大化して、あなたの心を食い殺すんだ。悪いとか迷惑とかじゃなくてさ、あなたの心があなたを食い潰す。そもそもさ、なんで手間のかかるレタッチばっかすんのさ?」
「記録に残るほうが大事じゃない」
と塔子は悪びれもせずに言った。
「今の私なんて、すぐに流れて消える。他人が私を見るのは、私の記録から見るでしょう? 『渡良瀬さんってどんな人? 写真見せてよ』よね? 誰も私なんか見ない。私の記録から、私がどうであったかを見るわけ。記録に残る私が、だから本当の私なの」
ミヨがぶちきれた。
「ネットに逃げてんじゃないわよ!」
「はい?」
「現実の世界がここに確かにあるでしょ! この世界で決着つけなさいよ! なんかキモイのよ! 『もうひとつの世界で生きてる』かんじがさ! 人は写真とつきあう訳じゃないでしょ? 本物の人と人が、笑ったり喧嘩したりするのよ!」
「なんで子供に説教されなきゃいけないのよ? 写真をシェアする世界のほうが、私にとっては現実よ!」
「一生二次元の世界に閉じこもってろ!」
喧嘩腰のミヨを、シンイチは後ろから羽交い絞めにした。
「ミヨちゃん! ケンカしに来た訳じゃないんだ!」
「だってなんか腹立つんだもん!」
「ミヨちゃんは『みにくい』をどうやって克服したの! それを話しに来たんじゃないの?」
「……美人だけどバカを沢山見たからよ! バカじゃ意味がないって分かったからよ! でもハナからこの女バカじゃん! 二次元世界で嘘つき続けてればいいんだわ!」
とりあえず今日のところは出直すことにした。
その夜フェイスブックに上がった彼女の写真をチェックすると、アップされていたのは3D写真だった。
「三次元にしてきやがったか……」
ミヨは舌打ちした。
シンイチは考えを口に出した。
「ミヨちゃんの時みたいにさ、かくれみので『理想の顔』に変身してもらえばいいんじゃない?」
「そんなの出来るの?」
「リアルレタッチ!」
3
翌日、シンイチとネムカケとミヨと内村先生は、再び彼女を訪ね、天狗のかくれみのを被ってもらうことにした。天狗のかくれみのは、姿を消す
「自分のレタッチ後の『理想の顔』をイメージして! そうすればその通りになるよ!」
「……鏡見ながら変形させてっていい?」
「もちろん!」
塔子は鏡を見ながら、自分を「レタッチ」しはじめた。
まず、肌を白くした。ニキビやホクロや産毛や腋毛の剃り跡を、綺麗な肌を移植してなめらかにした。入念に入念にツルツルにし、ファンデーションで毛穴まで塗り潰したような、セルロイドのような肌になった。
目を大きくし、目頭を切開して広げ、白目の面積が大きくなるので黒目を大きくしてバランスを取る。白目の血管も消す。涙袋を大きくし、隈を消し、まぶたも二重に。まつげをエクステさせて大きい目をさらに大きく見せる。アイシャドウを黒くし、ハイライトを足し、目全体を立体的に見せる。
鼻を細く高くする。高さが幅より勝り、ヒレみたいになってゆく。唇をさらに厚く、ツヤを足してぷるぷるに。
エラを削り、顎をシャープに。手足を細く、腰も細く、胸と尻は不自然に大きく。髪にも光が当たってないのにツヤを足す。それは恐らく彼女が写真でやっていることと、同じ段取りなのだろう。
「なんかさ」
とシンイチはミヨに囁いた。
「宇宙人のグレイみたいじゃね?」
ミヨは爆笑を我慢した。
「それが理想の顔だね?」と、シンイチは塔子に尋ねた。
「うん。マジで3Dで出来るとは!」と、塔子は人間のバランスを逸した異様な顔で上機嫌だった。
「じゃあ、リアル街を歩いてみようよ!」
「その前にフェイスブックにあげなきゃ!」
「みにくい」の時と同じく、原宿へ出て歩いてみた。誰もが塔子を振り返った。「美しくて」ではなく、「ぎょっとした」ニュアンスだった。
人の欲望は醜い。それが顔にかいてあるのだ。つまり彼女の顔は、妖怪そのものだったのである。
「おかしい」
塔子は気づいた。
「なんで皆、化け物を見るような目で私を見るの? キレイでぽーっとなったり、美しさに嫉妬するんじゃないの?」
不安の塊が彼女に押し寄せた。顔が歪み、その恐ろしい顔を見た若者は、恐怖にかられて逃げていった。
彼女は大きなショウウインドウを鏡代わりに、さらに「レタッチ」を進めた。
「目を大きく! もっと! もっと!」
顔の半分を目が占める。
「目が離れてる! もっと寄せなきゃ! 鼻はもうすこし上に!」
まるで3D福笑いである。目が動き、鼻が魔女のように変形していく。妖怪「レタッチ」は、さらに膨れ上がってゆく。
「わかった!
当代の美人女優やアイドルやモデルのパーツを塔子は言った。塔子の顔の上に、顔が上書きされてゆく。
「
リアルモンタージュである。顔がくるくる変わって、シンイチもミヨも気分が悪くなってきた。
「わかった! 目を増やせばいいんじゃない!」
塔子の目は四つになり、口は三つに増やされた。
「こうよ! きっとこうよ!」
振り返って同時に瞬きする四つの目を見て、ミヨは恐怖のあまり失神した。
「おかしい…… 理想の顔が出来たと思ったんだけど」
四つの目と三つの口を持つ塔子は、何をしてよいか分からなくなった。
「理想の顔になってさ、どうしたいの? 恋人ゲット?」
とシンイチは塔子に聞いた。
「どうする、とか別にないわよ」
と、もはやリアル妖怪と化した塔子は、深いため息をついた。
「……私は、誰からも好かれたいだけ」
「……女って大変だなあ」
とシンイチは言った。
「レタッチも整形も、リアルかバーチャルかの違いでしかないよね。それ、嘘だよね」
「?」
「嘘ってさ、ひとつつくと、どんどん嘘を塗り重ねなきゃいけないじゃん」
「どういうこと?」
「『宿題やった?』ってお母さんから聞かれたらさ、『やったけど、学校に忘れてきた!』って嘘つくとするじゃない? でもカバンに入ってたの見つかってさ、『そのノートじゃない』って嘘ついて、『じゃどれ』って言われて『どこか分かんない』って嘘ついて、『じゃ先生に電話する』ってなって、『思い出した! 学校でやってノート忘れた』って言って、『じゃあ答え言ってみなさい』って言われて、『学校に取りに行く!』って嘘ついて、どんどん引き返せなくなるあの感じに、今、とても似てる」
「お前家でそんな嘘ついてんのか!」と内村先生は突っ込んだが、今はそんな場合ではない。
ネムカケは落ち着いて評した。
「レタッチは嘘じゃ。嘘に嘘を重ね塗りしている。自分を良く見せたい心を、自分に合成し続けとるのじゃから」
「なるほどね。それがループしてるんだ」
「……」
すっかり妖怪になってしまった彼女は、あとへの引き方を知らなかった。
「じゃ、本当って何よ?」
その答えは、誰も分からない。
さっき逃げていった若者が、仲間を連れてやってきた。カメラを構え、塔子を写真に撮ろうとした。
「妖怪だー!」
「妖怪だー!」
「ネットにアップしてやる!」
「現代の東京に妖怪出現!」
「やめてよ!」
「不動金縛り!」
天狗のかくれみのの本来の力、透明になる力でこの場を退散した。
一行は地下に降り、とりあえず地下鉄でこの場を去ろうとした。塔子は一番最初のバージョンの顔に渋々戻し、ホームで電車の到着を待った。
腰の悪そうなおばあさんが、混雑するホームぎりぎりを歩いていた。急ぐ人をよけようとしてバランスを崩し、ホームから消えた。
落ちたのだ。
「ヤバイ!」
シンイチは天狗の面を被り、救出しようとした。
それより先に中年男性が一人、走って線路へ飛び降りた。おばあさんを助けるつもりらしい。
「痛い!」
おばあさんは悲鳴を上げ、立ち上がれない。男性は彼女をおぶり、ホームに手をかけて登ろうとした。が、腕力が足りないのか、足をかける所がないのか手間取った。
警笛が鳴った。電車が見えた。ヘッドライトを明るく照らし、警笛を何度も鳴らす。
「そこのあなた! 手を貸して!」
男性の一番近くにいたのは、塔子だった。
「引き上げて! 私は医者だ! 彼女、骨折してるんだ!」
電車は迫る。
「早く!」
なりふり構っていられなかった。塔子は必死で彼の手をつかみ、力いっぱい引き上げた。おばあさんがホームに転げる。男は自力でホームに上がり転がって、入ってくる電車から身をかわした。
急ブレーキの音を立てながら、一瞬前まで彼らのいた空間を、巨大な質量が通過した。
駅員たちがかけつけてきた。男は彼らに言った。
「大丈夫。私は医者です。彼女は骨折している。痛がってるので、痛み止めを処方してから外科へ連れていきます。うちの医院、すぐそこなので」
おばあさんは、ありがとうありがとうと何度も言った。
医者は塔子に礼を言った。
「ありがとうございました。偶然にも、こんな美しい女神が手を貸してくれるとは」
「えっ?」
塔子は焦った。先ほどのどさくさで、天狗のかくれみのが脱げていたことに気づいたからだ。つまり、今の彼女は
「美しくなんか。こんな不細工に何言ってるんですか」
「顔は関係ない。人助けをした、心の話ですよ。実は私、医者は医者でも、整形外科医なんです」
「えっ?」
「顔だけ取り繕う、表面的なことにしか興味のない、汚い心の女ばかりを今まで見てきた。うちのお客さんをそう言うのもなんですけどね。それに比べて、あなたは清い女神のような心の人だ。ほんとうの自分ってのは、顔じゃなくて心ですから」
「ほんとうの……自分」
「まじめな話、ひとめぼれしました。こんど食事に誘ってもいいですか? あ、フェイスブックとかやってます?」
「あ、やってはいますけど……」
「じゃあ友達申請とかしてもいいですか?」
「ひとめぼれって……私、手を貸しただけですよ?」
「顔なんてどうせすぐ老ける。整形メンテナンスのくり返しだ。でも、心や行動は、老けない。ほんとうのあなたは、行動したあなただ」
その言葉で、彼女の表情が変わった。
「フェイスブックはあります。……けど」
「けど?」
「……故あって、これまでの記事全部削除します」
かくして、彼女の心から妖怪「レタッチ」は外れた。
「不動金縛り!」
シンイチは九字を切り、周囲に金縛りをかけた。シンイチは天狗の面を被ると天狗の力が増幅する、てんぐ探偵である。
「一刀両断! ドントハレ!」
整形しすぎた顔の、醜くて不自然な妖怪「レタッチ」は、火の剣、小鴉の炎に巻かれて清めの塩になった。
その後、二人は交際を始め、ツーショット姿がフェイスブックに時折アップされるようになった。
「なんか生き生きしてるね。前のレタッチ写真より全然いい」
とシンイチは彼女の表情を見て言った。ネムカケは言う。
「CGやレタッチの弱点は、顔が固くなるのじゃ。やわらかくて生き生きした表情は、生身の人間にしか出来んよ」
「素直に笑うのが一番ってことか!」
「でも、それが難しいのよ。すぐ笑い方が分からなくなる」
ミヨは、自分の経験を交えて言った。シンイチはミヨの脇をこちょこちょして、反射的に笑わせた。
「ホラ、笑うのなんて簡単だよ!」
「ずるい!」
素直になるのは難しい。でも、一番簡単なことでもあるはずだ。
てんぐ探偵只今参上
次は何処の暗闇か
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