【6話】 嵐の前
今日は先に進むのはあきらめて、街道上だが、ここで一泊したほうがいいかもしれない。
ルーリィはお姫様のベッドと化した仮眠室で眠れば問題無い。
問題は、眠ったままの神官達だ。
俺は、6人の神官達が乗っていた馬車を【マニュピレイト・アーム】で、
どうにか掘っ立て小屋風味に組み立て直し、その中に気を失った彼らを寝かせた。
全員息はあるし、明日になって目覚めたら、コカ・○ーラをご馳走してやろう。
巨乳神官のホーリーシンボルは気にしないことにした。
確かに俺に似てはいるが、トラックが、なんというか神的なアレって、ちょっと信じられないしな!
まんがいち、世界を救ってとか言われても、実際困る。
俺はルーリィを幸せにできればそれでいいのだ。
そもそも俺はトラック。
できることと、できないことがある。
そんな俺のプリンセス、ルーリィはさっきまでお姫様ベッドで大はしゃぎしていたが、
俺が神官達の様子を気にして、ぼろぼろの毛布とかアームでかけ直してやってる間に、
糸が切れたみたいに寝ていた。
「ふー…」
俺も一息ついた。
明日のルート確認をして、俺も寝るか。
俺はカーナビを起動して、明日走行する道を予習する。
「は?」
異常に、すぐ気が付いた。
俺達が目指す、サイハティーンへ続く道は、緑色のラインで示されている。
その途中が、まるで事故現場のように真っ赤に染まっている。
表示には 『魔王軍』 とある。
「なんだ、そりゃ!」
しかも俺達が示された現在地と同じマップに、その危険地帯は収まっている。
「ゆっくり、移動してる? 近づいてる……? はっ!」
俺は意識を前方に向ける。
真っ暗な中に、明かりが見えた。
超至近じゃん!
視界いっぱいに揺らめいているのは、たいまつの明かりか……?
「これが、魔王軍……?」
つまり、あの神官達は、この魔王軍から逃げてきた?
それがここで、あのワイバーンにつかまって……。
「そんなことより、」
オーク達に追われていた、奴隷エルフ幼女、ルーリィ。
「まさか、ルーリィを……?」
俺は思わず、フロントに【ラムドリル】を最大レベルの10で起動。
「いや、落ち着け……」
だが、俺のドリルがなかなか引っ込もうとしない。
エンジンがドルドルと脈打ち、フロントガラスが歪む。
「ルーリィを追って……」
あの時、背後のオークを見たルーリィは怯えていた。
まだ断言できない。
けれど、
「あいつらが、ルーリィの肌に、あんな、消えない傷を、残したのか……?」
ルーリィ。
俺、おまえをすごくかわいいと思う。
美しいし、絶対に守る。
もうおまえに、だれからも、傷一つ付けさせやしない。
「あ、あれ、なんだこれ……」
ハンドルが、震える。
俺、たぶん、すごい怒ってるんじゃ、ないか?
ぎゅんるるる、ふぉす、ふぉす、ずもももももも
魔王軍、か。
「挨拶ぐらい、した方がいいかなぁ……っ」
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