ショート、ショート集

盛田雄介

1.黒い診察室

「それで、今日はどうしましたか」医者は目の前に座っている丸々とした顔の男に尋ねた。

「最近、身体が細くなって咳も止まらないんです。熱もどんどん高くなって困ってます」

「確かに顔が青白いですね。ちょっと、身体の中を調べるので、口を開いてください」医者は大きく開かれた男の口の中をライトで照らし、細い吸引機で何かを採取した。しばらく、顕微鏡でそれを観察し診断を下した。

「これは、獰猛な菌にかかりましたね」

「え、治らないんですか」

「確かにこいつ等は種類も多く、色んな場所に寄生して身体を蝕みますが、ほっとけば、勝手に死滅しますよ。ご安心ください」

「それで、どのくらい掛かりそうですか」

「ちょっと良いですか」医者は了承を得て聴診器を背中に当て音を聞いた。

「皆殺しだ。隣の国を根絶やしにしろ」

「仕方ない。新型殺戮兵器の使用を許可する」医者はその後も身体の色んな場所の音を聞いて笑顔で答えた。

「ご安心下さい。もうすぐで勝手に死滅しますよ」

「良かった。これで今日はゆっくりと寝れますよ」男はお腹を擦りながら診察室を後にした。

「それでは、お大事に。じゃあ、次の火星さんどうぞ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る