5話『銅の券』
《
外で起きたような事件はアルカディアでは良くあることなどで、職員達は慣れたようにてきぱきと行動している。
内部の案内板に従い、俺は《
「マナさん。はぁはぁ……まだ《
見知った顔のギルド受付嬢--マナさんに声をかける。
マナ・スチュアート、俺が冒険者になった頃からお世話になっている人だ。
「リビくん、おはよう。残念だけど……」
マナさんは黄金色の瞳を細め、神妙な赴きで言葉を続ける。
「今回は定員数が少なかったからね。また次頑張って」
--目の前が真っ暗になった。
今回は若干諦めかけていたが、もしかしたら行けるんじゃないかと思っていた。
しかし、先月と同様今回もダメだったらしい。
「フフッ」
俺が膝を折って項垂れていると、マナさんがクスッと笑った。
肩口で切り揃えられた緑色の髪がはためく姿はまるで、神話などに出てくる妖精のように見えた。
「お姉ちゃん、ちょっとイジワルしちゃった。ごめんね♪」
お茶目なセリフと共にポーズを取るマナさん。
大きな胸が上下に揺れ、不覚にも思わずドキッとしてしまった。
「はい。《
マナさんが差し出してきた、《
俺はついに《
嬉しさのあまり、一瞬固まってしまう。
「フフフッ」
その姿を見たマナさんにまた笑われてしまった。
「それにしても、冗談がきついですよマナさん。それでなくても前回一度失敗しているんですから」
「リビくん面白いから、ついからかいたくなっちゃうのよ。リビくんみたいに必死にチケット貰いに来る人他にいないもん」
「精霊石買える程の
「《
「すいません。ちょっといいですか」
マナさんと二人で会話をしていると、横から声をかけられた。
「一応なんですけど、《
そこにいたのは、俺の知り合い--昔の仲間エンジュ・リークだった。
「ちょっと待っててね。はい、最後の一枚」
エンジュはマナさんから、《
「よし、これで全部なくなったわね。私は《
バイバイと言って、大きな胸を揺らしながら、マナさんは走っていった。
「エンジュはどうしてここに?第四ゲートの前には居なかったよな」
エンジュの方を向き、質問をする。
彼女はマナさんとは違い、胸が小さく良く言えばスレンダー美人という感じだ。
「イテテテッ!」
何故かエンジュに耳を引っ張られる。
「胸」
「?」
「私の胸を見て、物凄く失礼な事を思っていたでしょ」
エンジュが俺の耳を離すと同時に、青色のポニーテールが大きく揺れる。
「そんな事ないってってイテテテッ!」
またも、エンジュに耳を引っ張られる。
紺色の瞳からは、マジで耳を引き裂いてやるという意志が感じられる。
「ふいません!ちょっとだけ失礼な事をかふがえました!」
エンジュの手が耳から離れる。
「まぁいいわ。さっきの質問の答えだけど、第2ゲートで換金を済ませた後、何となくここによっただけ」
「何となくよっただけで《
「ええ。外の冒険者はみんな倒れていたから。もしかすると、まだ余ってるかなって」
さすが幸運の持ち主だ。エンジュは昔からとても幸運で、《
俺にもその運を分けて欲しい。
「そういえば換金ってことはダンジョンに潜っていたのか?」
「ええ。《
「《
クラン《
ついこの間も六十四階層を攻略したらしい。
「ちょっと大声出さないで。それに私がついていったのは二十階層だし、それも攻略というよりは調査だったわ」
「調査?」
「最近、冒険者の間でダンジョン上層部で
「
「あまり聞き慣れない言葉だけど、本来なら下層部で起こる現象らしいわ。大量の瘴気とともに、
「そうだな」
「じゃあ、私はそろそろいくわ。丸一日ダンジョンに潜っていたから、早くシャワーを浴びて寝たいの」
そういってエンジュは踵を返し、帰ろうとする。
「ちょっと待ってくれ」
俺は一つ要件を伝え忘れていたので、エンジュの肩を掴み、引き留めた。
「ひゃっ!なっな何?」
肩を掴まれたエンジュがすっとんきょうな声をあげた。
「いや、ちょっとお願いなんだけど……ライルに治癒
「来た時にやっといたわ。もう要はないわね」
怒ったようにそう言ってエンジュは、第四ゲートを出ていった。
--何だったんだ?
『本日六の刻から開催されていました《
呆然と立ち尽くす俺の元にマナさんのアナウンスが鳴り響いた。
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