ポエミック・ライフ

 ――――無駄。


 辞書には「役に立たないこと」って書いてあるその言葉。


 でも、本当?


 無駄って、本当にいけないこと?


 ううん、きっとそんなことない。


 世の中に、無駄なものなんてきっとない。


 無駄に見えても、それはきっと何かにつながってる。


 世界の輪に、つながってる。


 うん、きっとそうだと思う。


 だから、今日は自分の感覚に導かれるまま、「無駄」なことをやってみよう。


 ……そんなの、「無駄」?


 いいじゃないか、そんな「無駄」な一日があったって。


 「無駄」から見えてくる何か。


 わたしは、それを見つけたいんだ。



        *


「ただいま」

「あ、おかえり、お父さん」


 夜の八時。帰宅する父親を待ちわびていた子供が、うれしそうに玄関に飛び出した。


「今日の晩ご飯、なに? ポテトサラダ、買ってきてくれた?」

「ああ、もちろん。……でも、その前に」


 父親はしゃがみ込み、いつものように問いかけた。


「お母さん、今日は何してた?」

「えっとね……」


 子供はリビングを振り返り、そこに母親がいないことを確認すると、小声で答えた。


「一日中トイレにこもって、千切ったトイレットペーパーを少しずつ水で流してる」

「……そうか。たしかに『無駄』だな……」


 帰りの電車内で確認したツイッターに書かれていたポエムを思いだし、父親はつぶやく。

 それから、一つため息をつくと、


「ポテトサラダ食べようか」


 子供を促し、疲れた足取りでリビングへ入っていった。

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