お客様は神様です

「お客様は神様です!」


 バックヤードにいた店長の俺に、店員がそう叫びながら駆けてきた。


「おお、元気いいな」


 俺はそれに笑って答える。お客様は神様です――そのフレーズは我が社のポリシー。朝礼でも使われる言葉なのである。


「お客様は神様です!」

「わかったから。まったく、君は熱心だなあ」


 俺が笑うと、


「違うんです、店長! お客様が神様なんです!」


 しかし、店員は俺の袖を掴み、売り場へ引きずり出した。そして、


「お客様は神様です!」


 入り口を指して叫ぶ。


「なるほど、お客様は神様か……」


 そこまでされて、俺もようやく納得してうなずいた。なぜなら、入り口に立っていたのは、大黒天。その後ろには、まばゆいばかりの光を放つ宝船がつけてあったのだ――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る