ショー・マスト・ゴー・オン――PART2
――北海道の一部と千葉は滅びたが、芝居の幕は上がり続けている。
舞台は早くも中盤に差しかかったころだった。私は、いつも通り最高の演技をする役者たちを、舞台袖から見つめていた。丸三ヶ月もの稽古の結晶。それが今この瞬間、目の前にある。この芝居は「劇団
皆、たとえ親の死に目に会えなくても、舞台に立つという覚悟でこの場所にいるのだ。そしてそんな彼らに、舞台監督である私にできることはただ一つ。それは、この芝居の幕を最後まで上げ続けることだ――。
「
一旦、外に戻ったはずの受付スタッフが戻ってきたのは、その直後だった。どうした、声を殺して問い返すと、
「さっき北海道と千葉に落ちた隕石ですけど、あれはただの隕石じゃなかったらしいです!」
「なに?!」
「隕石には未知のウイルスがくっついたみたいなんです! それで、そのウイルスに感染した人間がどんどんゾンビ化して、町の人間を襲い始めたって!」
ドン、ドン――そのとき、私の耳に低い音が聞こえた。
「まさか――」
「そのまさかなんです! もう既にゾンビたちはこの劇場まで迫っていて……!」
私は最後まで聞かずに舞台裏のドアに駆け寄ると、両手でそれを押さえた。ドアの隙間から、人間のものではない腐った目が垣間見える。ひどい臭いが鼻をつく。
しかし、私は全身の力を込めて、そのドアを押さえ続けた。
The show must go on――たとえ外で何が起こっていたとしても、芝居の幕は決して下ろしてはならないのだ――――
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