子供のつくり方
「子供の作り方はね、まず……キャベツ畑! そう、畑に行かないといけないの。それで種を蒔いて、キャベツを育てて……。なぜって、知らない? 赤ちゃんはキャベツから生まれるのよ?
だから、キャベツが大きくなったら、赤ちゃんを起こさないようにそうっと葉っぱをめくって――ええ、もちろん、どこの家に行く赤ちゃんかっていうのは決まってるの。誰が決めたか? そんなの、神さまに決まってるでしょ。
ううん、裸で眠ってるけど寒くないのよ。キャベツの葉っぱが温かいから……冷たい? んー、赤ちゃんが眠ってるときは、キャベツもちょっと煮えてて温かいのよ。うん、畑に生えてるけどね、煮えてるの。スープ……じゃないけどね、
まあ……何て言うか、じゃあ煮えてるってのはナシで、毛布! そう、毛布掛けてるから温かいんだった。うん、それでほら、足に名札がついてるから。そうそう『田中咲』って、咲ちゃんの名前があったから、お母さんとお父さんが家に連れて帰って、ね? こういう感じで咲ちゃんは生まれて……。
え? コウノトリ? ……も、もちろん、知ってるわよ? 言い忘れてただけ。えっと、コウノトリはねえ……咲ちゃんの名札をつけてくれる係の人。人、じゃないけど。 ね? これでわかったかな? わかったらもうちょっとご飯食べようね――」
子供ってどうやってつくるの? ――幼い娘の質問を乗り切った私は、額の汗を拭って息をついた。
最近の娘は、何でどうして、という質問が止まらない。しかもちゃんと答えてあげないとものすごく怒るのだ。しかし……だからといって、こんな小さな娘に「子供の作り方」をちゃんと説明する勇気が私にはない。
畑に生えてるキャベツが煮えてるって、何の話だよ――そう突っ込みながらも、私は難局を乗り越えた自分を褒めてあげたい気持ちでいっぱいだった。
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