午前3時の仕事

 誰もが寝静まった午前3時。


 半袖ワイシャツに黄色いガウチョパンツ、洒落たカウボーイ・ブーツに、頭にはしましまの三角帽子をかぶった男は家を出る。行き先は、近所の公園。そこに古くから設置されている、地球儀型の回転遊具。


 彼は深呼吸すると、その遊具を東に三回、西に二回、そしてさらに東に一回ゆっくりと回す。


 なぜなら、毎日午前3時、地球は一旦、自転をやめる。夜の場所は夜のまま、朝の場所は朝のまま、時間はそのまま止まってしまう。再び、地球を自転させるには、この公園の遊具を決まった回数だけ回してやらないといけない。


 そして、それこそが自分の大切な仕事である。


 男はそう信じているからである。

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