機械人間レオ
兎鬼
第1話 小さな機械 レオ
人と機械が密接な関係になり何年経っただろう、人の手伝いをする人型のロボットが開発され人々の生活は豊かになった。お使いするロボットが小さな街中をせっせと歩く脇を少年が走る。
彼は『レオ』この街の生まれで目の前の兄である『リオン』を追いかけている。競争をしていたリオンは一つの建物に手を付くと立ち止まった。
「ハッハッハ! まだまだ体力不足だな!」
リオンは息を切らすレオを見て笑う。汗一つかかない彼は非常に美形で女性たちが振り返るほどだった。
「やっぱ兄ちゃんには敵わないや」
息を整えて、へへへ、と笑う少年レオは半身が機械に包まれている。というのも生まれつき心臓の弱かった彼はその補強のため左半身を機械化し『半人機』となって生きていている。
「おら、どけぇ!!」
突然の怒声、声のした方を見てみるとホバーバイクに乗ったロボットが街を荒らしているではないか。
「全く、休暇だっていうのに・・・・・・」
リオンが頭を振る。人の形を成し、人のように動く『ヒューマノイド』 ヒューマノイドは設計者の命令通りに働くプログラムを組まれているのだが、それを悪用しない人はいなかった。こうして度々街を襲わせる設計者がいる。
「レオ、下がってろよ」
リオンは腰から超電磁ブレードを取り出す、電磁の力で高熱を発するこの剣はヒューマノイドにナイフで立ち向かうよりかは遥かに有効だ。
一閃。リオンがヒューマノイドに近づいたかと思えばリーダー格のヒューマノイドの半身は漏電しつつ切断されていた。
「お、お前は白い閃光!」
リーダー格がやられたことにより部下たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。白い閃光、そうだ、リオンはこうした犯罪者ヒューマノイドに立ち向かう軍『ウイルスバスター』に所属しておりその剣技から呼び名が付いている。
「兄ちゃん! 大丈夫?」
レオが駆け寄り心配そうに見つめる。リオンはニッと笑いくしゃくしゃと頭を撫でた。
「ああ、大丈夫だ」
そんな時だ、街中のモニターが砂嵐となり、人々とヒューマノイドがそれに釘付けとなる。レオとリオンもそれに気づきモニターを眺めていると一人の老人が映しだされた。
『あー、映っているか? そう? オホン』
咳払いをした老人をここにいる人々とヒューマノイドは知っている。かつてその思考の危険さからヒューマノイド学会を追放された『ダーティ博士』だ。
『ワシが誰かは知っているだろう、そうダーティ博士じゃ。今回はなぜ電波ジャックをしたかというとな、ワシの作った優秀なヒューマノイドたちでこの世界を征服させていただく』
淡々と説明された征服宣言。ざわざわとざわめきだす人々、そこに軍服を着た男がリオンの前に現れた。
「イーグル軍曹!」
ビシッと敬礼するリオン。
「いや敬礼はいい、それよりお前も見ただろう」
リオンは頷く。
「ダーティ博士が動き出した、我々の予想より遥かに早い」
「で、では出撃ですか!?」
イーグル軍曹は頷く。出撃、リオンがあの博士と戦うというのはレオにも分かった。
「に、兄ちゃん行っちゃうの?」
イーグル軍曹と共に去ろうとするリオンを呼び止める。
「ああ、仕事だからな、でも大丈夫だ、きっと戻る、その時はまたかけっこしような!」
ニッコリ笑い、また頭を撫でた。レオは泣きそうになるも堪えリオンの背中を見送った。
――――
「ハッ!」
レオは目覚める。ベッドの上にいる、周りには色んな機械が並んでいて、自分は確か・・・・・・。
「おや、目が覚めたかレオ」
父のシシが微笑みかける、そうだ僕は―――。両腕の機械のアーマー、足には巨大な機械の靴が付いている。自身に装着された機械を戦闘用に改造してもらったのだった。
リオンがダーティ博士討伐に向かってから数ヶ月、雪が降り寒くなってきた頃、郵便ドローンが一通の手紙を渡した。それはリオンの事実上の戦死を報せるものだった。レオは信じられなかった、あの強い兄が戦死などと。レオは父に無理をいい自らを戦闘用に改造してもらってリオンを探しに行くのだ。
「レオ、私はお前まで失ってしまうんじゃないかと考えると不安でしかたないんだ」
父は言う、だけど決めたことだ、レオはベッドから降りると玄関へ向かう。超電磁ブレードを腰に差しドアを開け一歩踏み出す。機械化された足取りは非常に軽くいかなる悪路や衝撃も耐える。
「行ってきます!」
勢い良く走りだす、装着された靴のおかげでぐんぐんスピードを出していく。レオは目の前にある巨大な城を見た、あれから数ヶ月、ダーティ博士の作ったヒューマノイドが人々を脅かし巨大な城を建設し着実に世界を征服していっている。
「待ってろよ・・・・・・!」
衛生から城までの道のりを受け取り腕に付いたモニターで確認する。道は合っている、このまま行けば・・・・・・。
「ひゃっはー!!」
いつも買い物に来る街に来た時だ、声がする。見てみればヒューマノイドが民家に火を放ち隠れていた人間を襲っているではないか。
「やめろお前たち!」
レオはホバーバイクの前に立ち塞がる。ヒューマノイドたちは停止し怪訝そうにレオを見る。
「なんだ? 人間のガキが何のつもりだ!」
フレイルを振り回すもそれを超電磁ブレードで焼き切る。地に落ちる鉄球を見た途端、ヒューマノイドたちは一斉に攻撃を仕掛けるもレオは華麗に避け胴を切断していく。
「な、なんだお前・・・・・・」
リーダー格のヒューマノイドは怖気づいて後ずさりする。
「ダーティ博士に言っておけ、僕はお前を倒す!」
「何言ってやがる! 馬鹿かお前!」
ヒューマノイドは笑う。レオは表情を変えず言った。
「白い閃光、リオンを知っているか?」
「ハッ、ダーティ様に楯突いたなら死んでるだろ、だったらお前もすぐ会えるだろうな、今俺がお前の言ったことを仲間に知らせたからな!」
レオは超電磁ブレードでヒューマノイドの首を切る、吹き飛んだ頭は空中で爆発し破片が散らばった。
レオは真っ直ぐ城に向かい街を出る、確かこの奥は暫く何もない道が続くだろう。レーダーに小さい反応がある、どうやらあのヒューマノイドの言ったことは嘘ではなかったようだ。小型ロボットが銃口をこちらに向け飛んでくる。
銃弾が発射され装甲に当たる、だが少し焦げただけで傷は付いていない。レオは飛び上がり小型ロボットを叩き切る。
「監視されているのか」
カメラが搭載されていたロボットだ、まだ周りに飛んでいる。どうやら監視の対象となったようだ。
「ふん、勝手にしなよ」
目の前に丸い影が数体飛び出す。無人戦車『クーゲルパンツァー』だ。丸く小さい車体は高い隠蔽率と速度を誇り格納された主砲で敵を撃つ。
「貴様かー! ダーティ博士に楯突くやつは!」
クーゲルパンツァーの間からヒューマノイドが一人現れる。大きな拳を打ち鳴らし威嚇している。
「この『クラッシュ』様が貴様のその頭蓋を打ち砕いてやる!」
クーゲルパンツァーを吹き飛ばしながらこちらに向かってくるクラッシュ。
レオは避けると足を引っ掛ける、クラッシュは派手に転び顔を地面にぶつける。
「じゃあな!」
レオは走り去る、クーゲルパンツァーが慌てて主砲を撃つも当たらず、反動でコロコロと転がっていく。
「ちくしょう! 覚えてやがれ!」
クラッシュは地団駄を踏む、そのたびに地響きが起こり、地面にクレーターを作る。
「全く、こっちは急いでるんだよ」
もう追ってこないことを確認したレオは歩き、休憩する。すると目の前に黒いヒューマノイドが現れる、レオは身構えるが黒いヒューマノイドはただ黙ってこちらを見ていた。
「な、なんだよお前」
レオが口を開くも黒いヒューマノイドはじっとこちらを見ている、いや見ていないかもしれない。ヒューマノイドの顔はマスクをしており、赤いレンズが只々妖しく光っている。
「く、くそっ!」
敵意があるか分からないが、その威圧的な空気に耐えられなくなったレオは斬りかかる。
―――刹那。黒いヒューマノイドの姿が消えたかと思うとレオの脚部がバチバチと火花を散らし切断されていた。
「うっ!?」
足が動かなくなり転ぶ、死んだ。レオは確信した。しかし次の攻撃が来ない、急いで起き上がり背後を見る。
「な、何やってるんだお前・・・・・・」
黒いヒューマノイドは超電磁ブレードを木にひたすら叩きつけているではないか。その光景は異様で不気味でもあった。
(どうする・・・・・・逃げるか!?)
今がチャンスだろう、ここであれを仕留めなければ後々立ちはだかるだろう。
「うぐっ!」
接近しようと足に力を込めるも激痛が走る、レオは早々に退散し、足を修理する場所を探しに向かった。
『止まれ! ええいポンコツめ!』
小型ドローンが黒いヒューマノイドに呼びかける。その声はダーティ博士だ、声を聞いた黒いヒューマノイドは動きを止め、頭上を飛ぶドローンを見る。
『全く、ワシの想定外の行動をしてくれるな
「申し訳ありませんダーティ博士」
黒いヒューマノイドは抑制のない声で応える。
『まあいい『ヌル』! 再びあのガキを追跡し、殺せ!』
ヌルと呼ばれたヒューマノイドは少し黙った後。
「了解しました」
そういい小型ドローンを吹き飛ばす速度で走りだした。
―――
小さな街に着いた、レオはここをよく知っていた、父と一緒に機械の部品を買いに来たことがあったからだ。しかし今は人の気配はなく、ボロボロの民家が立ち並ぶ廃墟と化していた。
「ひでえ・・・・・・くっそダーティ博士め」
足を引きずりラボを探す――あった、ラボは元々ボロボロで被害にあっているのか判断も出来ないがレオはそこに足を運んだ。
「誰だ!!」
ドアを開けると突然ショットガンを構えた男に怒鳴られる。
「僕です! レオですよ!」
その言葉を聞くと男はショットガンを降ろし、笑った。
「レオか! あのちびがこんな・・・・・・メカに?」
武装したレオに困惑の表情を浮かべる男。
「ええ僕ですよ! 『ネジ』おじさん!」
「おおなんでまたそんな武装を・・・・・・ってまさか!」
ネジは古いラジオの音量を上げ、テーブルに置く。ノイズを含みながらもラジオは言葉を発していた。
『・・・・・・若い・・・・・・人機・・・・・・反逆・・・・・・殺・・・・・・繰り返・・・・・・』
ノイズ混じりだがレオのことだろう。ネジはラジオを切ると棚に置いた。
「奴らの信号を傍受してたんだがまさかお前のこととは、正気か!?」
「ええ! 僕は兄を探しに行くんです!」
「ああレオンのことか! あいつは強いけどな、もう死んだんだよ! いい加減受け入れろって!」
その顔は怒りではなく悲しみの表情だった、よく遊びに来る友人を失いたくない思いでいっぱいなのはレオにも伝わった。
「僕は認められません! それに、死んでいたとしても僕は復讐するでしょう」
ネジはやれやれと俯いたがすぐに向き直る。
「全く、頑固なのは父親譲りか、その足だろ?」
大きい亀裂の入った足を指差す、レオは頷き、作業台に乗ると寝転がった。ネジはコードを足に繋ぎ、溶接を始めた。
バチバチとした音と眩い光が数十分続き、静かになった。
「終わったぞ、しかしその脚部装甲に傷をつけるなんてどんな武器なんだ」
「見たところただの超電磁ブレードでした、でも、あのヒューマノイドは何か違った・・・・・・」
「ただの超電磁ブレードであの被害か!? 相当な腕力か腕の持ち主か・・・・・・」
「とにかく、ありがとうございました、僕は行ってきます」
作業台から降り、立ち去ろうとするレオに何かを投げるネジ。それを受け取り見てみると銃だった。
「小型レールガンってやつだ、充電が必要だが使い物にはなると思うぞ!」
「ありがとう!!」
レオはホルスターに小型レールガンを入れ、走りだす。遠いのに大きく見えるダーティ博士の居城へ。
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