第37話 最後の証人カモーン!
もはや筆舌に尽くし難し。この世の終わりだ。
「変態だぁああ!」「気持ち悪ッ!」「変態にも限度があるだろう!」「櫻井、狂ってる!」「キモグルイ!」「もう変態過ぎてこえぇええよ!」「デスゲームだけの異世界で特殊性癖に目覚めてるとか、こわッ!」
男子まで含めたクラスメイトの誹謗中傷が酷い。俺が味わった地獄の王様人狼デスゲームすらネタ扱い。俺とてもう何もいうまい。言葉のあやはあれども筋肉の発言に嘘がない以上、それが真実だ。
おまけに好青年ガチムチマッチョの照れくさそうな仕草。
ここまで俺を貶める幸運。俺に無いその反属性ステータスに勝てるわけもない。ホモキャラ扱いを通り越した。ただでさえホモキャラには抵抗があったのに。俺はふと男子たちに目向けた。
「おい、お前の方見てるぞッ!」「ちげぇよ! お前だろ!!」「押すなよ!」「俺じゃないよな、俺じゃないよなッ!」
「ふんっ……」
鼻で笑った。ここまで来ると笑けてくる。悲しみというよりも諦めが勝った。ここで俺が弁解する手立ても無い。俺の発言など噓八百として捉えられるだろう。何を言っても無駄。犬に論語、牛に経文、暖簾に腕押し、焼け石に水。
こんな証人喚問……あり得るのか?
「さっちゃん……」
俺の諦めた顔を動揺しながら伺う鈴木さん。アンタの勝ちだと俺は鼻でふんと笑って返す。これ以上俺に失うものはない。これ以上俺の評価を下げることも出来るはずもない。俺の負けだ。俺はこれ以上ないくらい傷ついた。
「これで満足……だろ」
「なにが?」
「えっ!?」
飄々と返す女に俺は動揺した。ここまで一人の人間を貶めたのに何も感じていない。まるで何か私したのと疑問を抱えている。これだけ人間の尊厳を踏みにじってなお悪気の一つもない。
この女……この女……この女……
「何がまんぞく?」
こんな小動物みたいな顔して一番コワイ生き物!?
子供のような純粋な眼は何一つ理解をしていない。俺が鬼畜リョナホモ野郎とクラスから人間扱いを止められている原因を作っているのに、それすら状況を捉えられていない。
ゾッとするわ!? さすがデットエンドのヒロインだよ!!
涼宮強という男のヒロインも死亡遊戯に近いものを持っていた!?
恐怖だ。俺は脅えた。何を考えているか分からないキラキラ輝く眼がこちらを覗き込んでくる。まだまだ全然何もしてないのにと無邪気な顔で覗いてくる。殺意ではない、悪意でもない、死亡遊戯でもない、とてつもなく末恐ろしい化け物!?
【ちょっと櫻井についてお伺いしたいのですがいいですか?】
『櫻井くんについて?』
えっ――この声は。
俺はまだ彼女が終わらせていないことに気づけていなかった。スマホが動いたままだった。ここまで俺を没落させた上に終わりがない。運だけでどこまで何が出来るのか知らな過ぎた。俺は持っていないから。その幸運というステータスを。
【櫻井についてどう思いますか?】
『櫻井くんのことを私に聞くとはお目が高い。何でも聞いてくれたまえ!』
なんで……お前が。
悪魔的人選。どうしてそこまで俺を熟知してもいないのにピンポイントで痛い所をつけるのか。これがランダムだとでもいうのか。仕組まれていない上に作戦のひとつもないのか。絶望で俺の表情は歪む。
【では、率直に。櫻井が秘密を盾に色んな人を脅しているのですが、心当たりはありますか?】
『どうして、それを!?』
何を言ってやがる……テメェは。証人の驚く演技が神がかっている。
【まさか、貴方も脅されているのですか!?】
『それは……』
やめろ……テメェは喋るな……ソイツに喋らせるなッ!
思わせぶりに演技する証人。自分の体を包むようにエロティックに胸をさする。これは完全なる誤解を生むパターン。負の連鎖の温床。
「ヤメロォオオオオオオオオオ!」
「
慌ててスマホを止めようとした俺の体を白い輪っかが締め上げる。ミキフォリオが素早く魔法を使った結果だ。それの反動で俺は前のめりに床へと倒れ込んだ。無様にも捉えられながらも携帯を目指して動こうとした瞬間だった。
「
鮮やかな僧侶の連携。鈴木さんの手から白く半透明な四角い箱が俺を包み込んだ。それは結界による牢獄。俺の行く手を阻んで携帯との間で隔壁となる。スマホの画面に腹をすかした犬のように鼻息を荒げて見つめることしかできない。
『櫻井くんの……』
恥ずかしそうに口元に真っ白な白い指を手に当て頬を赤らめる。切ない瞳を浮かべるソイツは女というよりメスの顔をしている。俺は呼吸が激しくなっていく。コイツだけはダメだと。
『おにく便器である私の口からはいえない……いつものようにお口を卑猥なものでふさがれてしまう』
【え、なんと……?】
この証人は最悪ダァアアアアアアアアアアアア!
《つづく》
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