第30話 ウルフとの戦い?
ポーションを大量に購入したボクは宿に戻って装備の最終確認を行う。まずは作っておいた一番強い装備からだ。
金竜幼姫のマリオネット 評価B
攻撃力1800/1200 防御力1200 耐久力450/450
金竜幼姫の腕、金竜幼姫の吐息、金竜幼姫の竜眼、金竜幼姫の心臓
金竜の幼姫ユーリを模倣した上、本人の素材を使って作られたマリオネット。制作者の力が足りずに素材や能力は劣化しているが、姿は尺図を踏まえて忠実に再現されている。
装備制限:DEX1000以上。人形操作レベル10以上。人形師レベル10以上推奨。
魔法攻撃の威力も上昇する上に金竜幼姫の心臓にMPを1000点分だけ確保できる。ただ、人形師のレベルが足りないのでボク自身に力は加算されない。それ以外は一応、ドラゴンのぬいぐるみ系はまだいけるんだけどね。
あとちびっ子なボクのぬいぐるみはドラゴンタイプには及ばないので効果は適応されない。ぬいぐるみをいっぱい装備して効果が適応されるのは一つだけなのだ。重複こそしないけれど、数を操れるのは非常に便利で有利なので問題ない。
Name:ユーリ
Race:金竜〔幼体★★★★★〕
CLASS:人形師Lv.3
HP:4500+10000
MP:2000+10000
ATK:1800+700+1300
DEF:1200+1200
MATK:1200+200
MDEF:1200+10
STR:400+200
VIT:400+500
AGI:400
DEX:1600
INT:400
MID:400
LUK:400+300
Skill:竜麟・金竜Lv.4、魔竜の心臓Lv.4、人形作製Lv.6、人形操作Lv.8、金属操作Lv.2、苦痛耐性Lv.10、直感Lv.5、幸運Lv.10、金竜の幼姫Lv.2、AI作成Lv.1、竜属性魔法Lv.3、火属性魔法Lv.3、水属性魔法Lv.3、風属性魔法Lv.3、土属性魔法Lv.3、闘竜技・金竜Lv.2、物理軽減Lv.6、連携魔法Lv.3、機人整備Lv.3、竜魂転生Lv.1、死霊魔法Lv.1、即死無効、死体収集Lv.1、腐敗無効Lv.1、デスペナルティ無効、切傷転移Lv.1、自爆Lv.1。
CP:50
装備:ドラゴンのぬいぐるみ(攻撃力1300、防御力1000、耐久力500/500 金竜の腕、金竜の吐息、金竜の竜眼)
うさぎとオオカミのぬいぐるみ(攻撃力200、防御力100、耐久力80)
金竜幼姫のぬいぐるみ(攻撃力800 防御力1200 耐久力450/450)
床闇のワンピース(防御力200 スキル:ドロップ自動収集、身体能力増加Ⅰ(50%)、闇属性魔法Lv.2、自動回復向上Lv.1、闘争心増加Lv.1、自動修復Lv.3、暗視)
疾風のブーツ(移動速度10%上昇)
プルルの指輪(MDEF+10)
飢餓のアクアグローブ(水属性の魔法の効果を10%上昇、空腹度の減り具合上昇・小)
五体の家族人形 ランクC 耐久200/200(人数におおじて様々な効果を得られる)
ウルフのマント(耐久200/200)
称号
プルルキラー:プルル系統に対してダメージ50%増加。ダメージ軽減50%。ドロップ率10%上昇。VIT+500
物理破壊者:STR+200、ATK+500。相手の物理耐性、物理障壁を無効化し、相手の物理防御力を50%削減する。
上位存在討滅者:レベル差が10離れるごとにステータスが1.5倍される。
死を愛する者:不死系に対する攻撃力100%上昇、防御力50%軽減、クリティカル50%上昇。不死系からの好感度50%上昇、天使系からの好感度50%低下。不死系に好かれる。死霊魔法、即死無効、死体収集、腐敗無効、切傷転移、自爆を習得。
人形作成など少しレベルが上がっている。こちらはいっぱい作ったからだね。装備の方はドラゴンのぬいぐるみを適応中。後はポーションをHPとMP両方を買い込んでおいた。毒とかのBSTは闘竜技と魔竜の心臓を利用して大概に強制排出すればいいので大丈夫。
ウルフのマントは頭に被るフードも合わせてウルフの毛皮で作りあげた逸品。装備としてのデータがないのは剥ぎ取ってから裏側をなめしただけだから。臭いもそのままで臭い上に耐久力もない、生産者としては素材としかいいようのない品物。それでも先に進むためには我慢するしかない。
さて、装備を確認したので身嗜みを確かめる。鏡に映るのは身長145㎝から150㎝の可愛らしい金髪碧眼の幼い少女。髪の毛は伸びて腰辺りまである。左右の髪も伸びて肩辺りまではあり、前髪にいたっては鼻の上ぐらいまである真ん中まである。左右の場所は瞳の少し上まで切ってあるけどね。正直、髪の毛は邪魔だけれど素材としても使えるので伸ばすことにする。今は動きやすいように髪形を人気なツインテールにする。
「よし、いきますか」
ウルフのマントはベルトポーチに仕舞って移動する。宿屋から外に出る。NPCである人達と少しのプレイヤーが確認できるけど、プレイヤーの人は急いでいるみたい。
ボクは気にせずに東門に移動してクエストボードを確認し、ウルフとアントの討伐依頼を受けてから迷いの森へと向かう。やっぱり、少しでもお金を稼ぎたいからね。
※※※
「はっはっ……はぁっ……はぁっ、はぁっ……はぁーっ、はぁーっ……」
自分の口から洩れるのは荒い呼吸のみ。一人で馬鹿みたいな数を討伐し、逃げながら進んでようやく地下に入れた。
「なにあれ……」
予想外の消耗に地下の入口にあるセーフティーエリアで思わず座り込んでしまう。けれど許して欲しい。なぜならフィールド中のモンスターと鬼ごっこをしていたのだから。
そう、外に出たらプルルの大群に襲われるのは何時ものことだけど、今回は桁が違った。最初は倒しながら進んでいたけれど、しまいにトレインして逃げたよ。それでも問題はない。なぜかというと、奥にはプレイヤーがいないからだ。
うん、街の近くにはいるけれど、奥に進むとプレイヤーがボクしかいないから、フィールド中のモンスターが襲い掛かってきたの。原因は単純。皆、イベントのダンジョンを目指してさっさと次のフィールドに行ってるからだろう。チュートリアルを終わらせたり、スキップしてさっさと向こうのアクアリードからスタートしていると思われる。
そもそも今回のイベントは第二陣のレベル上げとか資金稼ぎのイベントみたいだしね。だからこそ、ディーナ達も急いでいったんだから。
以上のことから、ここから先はオンラインゲームにあらず。ただのアクションゲームだ。
「よし、休憩終わり」
野菜スティックを食べてから声に出して意識を切り替える。ちなみにこの野菜スティックはアイテムストレージにメイシアが入れてくれている。料理スキルの練習としていっぱい作られているので、勝手に食べていいということになっている。
地図を取り出して経路を確認する。地図には罠の位置は書かれていないけれど、デンジャーゾーンやセーフティーエリアの位置は書かれている。
地上と地下を合わせて確認し最適な経路を導きだす。地上にデンジャーゾーンが二つあるので、そこの一つがひょっとしたらボスかもしれない。まずはその近くを目指してみることにする。もう一つ?
たぶん、アイツの住処だろうと思われる。ボクの直感がそう告げている。どちらにせよ、これからやるのは次のセーフティーエリアまで全力疾走で走って逃げることだけ。
ストレッチを入念にしてから龍脈の力を溜め込み、全身に竜麟を纏わせる。
「レディ……ゴッ!」
クラウチングスタートで一気に地下を駆け抜ける。足場はできるかぎり地面を走らず、溢れてでてくるアントを足場にして粉砕しながら突き進む。直感をフル活用して危ない場所は絶対に踏まない。それもアントの攻撃は一切無視して最速で最適なコースを走る。
セーフティーエリアの前に到着したら振り向きざまに貯めておいたドラゴンのぬいぐるみの腕を前に突き出し、もう片方の手で支えながらドラコンブレスを放ってアント達を文字通り一掃する。
トレインで大量に集まって波のように押し寄せてきたアント達はドラゴンブレスの一撃で消し飛んでいく。生き残りがいたとしてもセーフティーエリアを後ろにして戦うことですぐにバックステップでセーフティーエリアに逃げ込めるようにする。ここでの戦いの場合、壁なんて信じてはいけない。突き破って奇襲なんて当たり前にしてくるからね。
アントをある程度滅ぼしたら、セーフティーエリアで休憩しながら次のセーフティーエリアを目指す経路を選択する。ただし、今度は地上なので要注意。
ドラゴンのぬいぐるみにMPをチャージして、自分のも全回復してから地上に出て逃げる。
外に出ると昼間で太陽の光が降り注ぐ。8分ほど走ると頭上に影が現れる。ボクはなにも考えずに腕をあげてドラコンブレスを放つ。影は少し離れる。でもすぐに風の刃がとんでくるので、それをジグザクに交わす。
嫌な予感がして飛び上がると、すぐ下を大鎌が通る。ボクは空中で振り向きざまにもう片方のドラゴンのぬいぐるみからドラコンブレスを放つ。それは密林の死神、キリング・マンティスを捕らえて空中にいたボクごと吹き飛ばす。
奴との距離が離れ、ボクは地面に手をついてバク転の要領で回転して着地。そのまま勢いを殺さずに見えてきた木の洞に走る。
「ひゃっ!?」
相手は全力で突撃してくる。避けきれずに竜麟と激突する。その前に自分から飛ぶことで竜麟が破壊される前に吹き飛ばされて距離を取る。ごろごろと転がって、竜の力を足に回して全力で地面を蹴ってスライディングで洞に飛び込む。
その瞬間。木が倒れる音がする。止めていた息を再開し、荒い息をしながら振り返る。そこにはキリング・マンティスが顔を突っ込んでこちらに来ようよしていた。だけど、身体のせいでこちらには入ってこれない。ボクは思わずニヤリとしてしまう。
「くらえっ、ドラコンブレスッ!!」
ボクの口から全力のドラゴンブレスを放ち、顔に直撃させて吹き飛ばす。アイツのヒットポイントゲージが10本から9本と半分に下がった。顔を出して確認すると、すぐに大鎌の攻撃が飛んでくる。なのでボクも戻る。また顔を突っ込んでくると思ったけれど、学習したのかそれはやってこない。
しばらく様子をみたけれど、アイツはそのまま外を飛びながら滞在している。ボクが出てくるのを待っているのだ。一応、死にかけたけれど、想定通りの場所にはきたから次の場所を地図をみながら探す。
魔竜の心臓の効果で回復を待ちながら経路を選択。次のセーフティーエリアへの道を突き進む。油断したら死ぬデスマーチを繰り返していく。時にはボクの血をデコイとしたりしてどうにか逃げに逃げた。そのおかげか、キリング・マンティスの習性で一つわかったことがある。それは奴が夜に行動していないことだ。
キリング・マンティスはその名の通り、マンティス……カマキリだ。カマキリを調べたら昼に活動して夜は動かないことがわかった。キリング・マンティスも同じ特性を持っているのだろう。
確かめにデンジャーゾーンのやばい場所に進んでみる。そこは木々で囲まれた花畑で、中央に奴が眠っていた。少し近付くと起き上がって周りを警戒してくる。
とりあえず、離れてからウルフのぬいぐるみなどでドラゴンブレスをチャージしてから、連携魔法を使って放つ。両腕のドラゴンのぬいぐるみも合わせて11発のドラゴンブレス。木々を消し飛ばして直撃したアイツはのた打ち回った。ヒットポイントゲージも合計で3本減ってくれた。もちろん、すぐに洞に逃げ込んだ。
少しして、頭だけだして様子を確認するとアイツはいなくなっていた。直感から移動したのがわかる。つまり、夜ならこちらから奇襲できることがわかった。これは美味しい。
こんな感じで夜は襲撃し、昼は逃げてを繰り返しながら目的地に進んでいく。
目指すは洞窟だ。キリング・マンティスは後回し。来たらダメージを与えて追い返す感じでいかせてもらおうかな。
※※※
数日の時間をかけて目的の洞窟近くに到着することができた。地下から顔を出して空を見上げると木々の隙間から太陽光が降り注いでくる。
「お昼……」
頭だけをだした状態で確認すると、問題なさそうなので外にでて手早く木に爪を立てて登る。腕力にものをいわせて登り、遠くの方を確認する。
遠くの方に木々が生い茂るの山があった。そこの麓に大きな洞窟があり、その前の広場にはウルフ達がたむろしている。中には灰色の狼、グレイウルフもいる。
狩りをしている様子ではなく、日向ぼっこやお昼寝みたいな感じだ。夜にはいないことから、狩りにでているのかもしれない。狩りか……一つ思ったのだけれどキリング・マンティスは昼間だと乱入してくるんだよね。それを考えると、一つの策略が思い浮かぶ。
肩に粘着性がある水が振れ、嫌な予感がして後ろを振り向く。目の前にドアップのキリング・マンティスの顔面が映り込んでいた。
「ひゃわっ!?」
大きく口を開けて今にも噛み付こうとしていた。ボクは驚いたことで体勢が崩れてそのまま木から落ちる。同時にボクが留まっていた枝が丸ごと噛み切られた。相手はそのまま枝を食べていく。
「むりむりっ!」
急いで地下に逃げようとするけれど、その前に大鎌が振られて木々が切断された。切断された木々は地下への入口を偶然塞ぐ。偶然? いや、これはわざとだ。ボクのが逃げるパターンを相手が学習したのだと思う。
「ど、どうしよっ! いっ、いやっ、考えてる暇もないよねっ!」
急いで駆ける。当然、キリング・マンティスが追いかけてくる。ボクは生き残るために必死に走りながらさっき考えていたことを実行する。そのためにグレイウルフ達に向かって走る。
グレイウルフもこちらに気付いたようで駆け抜けてくる。ボクはそのまま走って、彼等と接敵すると同時に飛び上がってキリング・マンティスの攻撃を回避しながらそのまま洞窟を目指す。
後ろでキリング・マンティスとグレイウルフ達は互いに戦いだすけれど、ハッキリ言ってキリング・マンティスの圧勝だ。それでもボクが洞窟に入る瞬間、グレイウルフ達は全滅してしまった。けれど――
「ボクの勝ちだよ」
――無事に洞窟に到着してその中に入る。キリング・マンティスの大きさではこちらも入ってこれない。いや、入口は大きいから入ってこれるかもしれないけれど、きっとつっかえて入ってこれないと思う。
そんな希望的観測を抱きながら進み、しばらくするとそれなりに広い空洞にでた。そこは天井が空いていて、そこから光が先込んでいる。
どうやら、ここはウルフの住処みたい。ボス戦が始まらないことから、しばらく時間がかかるみたい。まだお昼だしね。少しゆっくりとしよう。それにウルフやアントにいっぱいかみかみされたせいで装備がボロボロになっている。
※※※
黒のワンピースに皮を使って継ぎ接ぎだらけになったけれど、補修は終わった。食事も終えて空を見ると暗くなり、月の光が入ってくる。そんな中、上から一匹の狼が飛び降りてくる。そいつは地面に着地すると、こちらをみながら唸り声をあげてくる。そいつは満月の光を浴びて、姿が狼から人狼の姿へと変化していく。
狼の頭に毛皮に覆われた人の身体。爪は伸びて凶器となっている。身体の筋肉は膨れ上がり、狼の口からは涎が滴り落ちている。
「っ!?」
開始の合図があるかと思ったら、そんなものはなくていきなり突撃してきた。油断していたボクは反応できない――はずだった。けれども、おじいちゃんに散々鍛えられた身体は勝手に動いて相手の拳とボクの拳がぶつかりあう。互いに近距離で殴り合って傷を増やしていく。
相手は蹴ってくるので、後ろに飛びながら足を肘と肘で挟み込んで圧し折りにかかる。相手はそれに気にせずに蹴りぬいてボクを弾き飛ばす。
「かはっ!?」
壁に激突し、肺から空気がでる。そのまま飛び蹴りをしてくる。ボクは腕をクロスさせて防ごうとする。けれど、足の爪を出しながら空中で高速回転しだしたので慌てて転がって逃げる。
相手は足がすでに治ったのか、そのまま回転しながら地面が陥没するほどの蹴りを繰り返し放ってくる。ボクも両手を地面について両手を揃えてカウンターがてら腕で飛び上がって蹴り上げる。
ワーウルフも両手を交差させて防ぐ。そのまま力を入れて吹き飛ばす。吹き飛ばされた相手は壁を蹴って戻ってくる。ボクも殴り返してやる。互いに格闘タイプなので空洞内部を駆け抜け、拳を交える。ボクは自分で戦う方法から人形操作で操る方法に切り替える。
本当はぬいぐるみをだして戦いたいけれど、いきなり襲われたことで準備ができなかった。正直言ってボクが油断していたせいだ。
「ワォオオオオオオオオオオオォオォォォンッ!!」
「Laaaaaaaaaaaaaaaaaっ!」
相手の咆哮にこちらも咆哮をあげて打ち消す。闘竜技を使いながら自分の身体が傷つくのも構わずにダメージを与えていく。腕や足が切られて血が噴き出して血飛沫が舞う。それでも大量に増えたヒットポイントと魔竜の心臓などの効果もあるので気にせずに戦う。
長時間の戦いでは龍脈から力を得られるボクの方が有利で、次第に相手の攻撃がぬるくなってきた。なので、しゃがんで足を蹴ってこかして倒れさせる。相手は両手を地面について立ち上がろうとするけれど、その前に飛び乗って後ろから抱き着く。首に腕を回して締め上げてしっかりと両手で組んで呼吸を止めさせ、身体を仰け反らせて首をへし折るように頑張る。ボクも背中が折れそうになるけど気にしない。普通ならできないけれど人形操作なら可能だ。
無理矢理首の骨を圧し折り、離れる。相手は首を切り離してそれだけで動いて満月の光の中、ボクに手に噛みついてきた。
「いっ、いやぁあああああああああああああぁぁぁぁぁっ!?」
怖くなって無我夢中でドラゴンのぬいぐるみのドラゴンブレスを放って頭を吹き飛ばす。それでも相手は身体だけで動きだすので、心臓を殴りつけながらもう片方の腕に装着したぬいぐるみからドラコンブレスを放つ。
胸に大きな穴が空いた身体は流石に動きを止めて倒れた。あまりの怖さに自分の身体を抱きしめる。確かに自分の死体を解体とかしたけれど、これは怖すぎる。満月の光しかない洞窟で首だけになった大きな狼の頭部が涎をたらしながら襲ってくるのだから、恐怖でしかない。
【満月にのみ現れるワーウルフ特殊個体、ルナティックムーンバージョンの討伐を確認しました。おめでとうございます。
初回討伐報酬としてアイテムストレージ拡張チケットを習得しました。
ソロ討伐報酬としてスキルチケットを習得しました。】
どうやら、無事に倒せたみたいだ。ワーウルフの死体はボクのアイテムストレージに自動的に収集されたようで、消えてしまった。ただ、満月の光が中央に降り注いで光の柱となった。その柱が消えると、後にはさっきまでなかった宝箱が……なかった。
「普通、ゲームならあるよね?」
がっかりしながらも周りを探してみると、骨に隠された中に宝箱がみつかった。嬉しく思って開けてみると……中から硫酸が吹きつけられて目に直撃。
「ひぎゅうぅううううううううううううぅぅっ!?」
痛覚耐性があるのでましだけど、あくまでも耐性なのでそれを超えた激痛で地面にのたうち回る。
「痛い痛い痛いぃぃぃぃっ!?」
1時間ぐらい転げ回っていると、ようやく痛みが引いて回復してきた。ログを確認すると、合計でヒットポイントゲージが10割も削れていた。途中で回復していないと死んでたようだ。勝って宝箱をみつけ、開けた瞬間に罠で殺しにくるという運営の狡猾な手段だ。
「た、宝箱の中身は……」
硫酸で溶けた解読不能な本と、同じく溶けた瓶に入ったポーションであろうと思われる液体。それらは当然、箱の中に漏れている。つまり、なにも使えない。
「うがぁあああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」
宝箱を思いっきり蹴り飛ばし、ボクはそのまま進んでいく。反対側の出口から出て、進むと川があった。そこからすぐに滝があり、その下に滝壺がある。どうやら、飛び込まないといけないみたいだ。
「男は度胸だよね……」
アイキャンフライってな感じで滝壺に飛び込む。そうしないといけないような場所だからだ。
そのまま水の中に入り、底に到着すると同時に岩を掴んで泡が消えるまで耐える。ある程度消えて視界がクリーンになると祭壇があった。そこには竜と龍の石像が左右に置かれており、真ん中に魔法陣が描かれている。
ボクはそこまで泳ぎ、魔法陣の中に立つ。すると二体の石像の目から光が放たれ、ボクの身体を覆いつくす。
『『金竜の幼き姫よ、我等は汝の実力を認める。完全なる竜化か部分竜化、どちらかを選ぶがいい』』
目の前に二つの姿が現れる。一つは完全な竜の姿で、もう一つは人型で腕や翼が生えている。完全な竜化は短時間だけどかなりの戦闘力を発揮する。部分竜化は選択した一部を竜化させる。こちらは長時間使える。
ボクが選ぶのは部分竜化だ。キリング・マンティスと戦うなら完全な竜化がいいのかもしれないけれど、こっちは嫌な予感がしてくる。なので部分竜化にしておく。一番の理由は空が飛べるようになるからだ。
『『部分竜化の部位を選択せよ』』
迷わず翼を選択する。すると背中が少し痛くなって熱くなってきた。そこから金色の骨組みに黒い皮膜の翼が二つでてきた。
『『これにて完了である。人の姿に戻りたければ人化を習得するように』』
とんでもない注意がされる。部分竜化とはつまり、永続のようだ。上の説明の短時間はあくまでも竜としての戦闘時間で、人の姿には人化がないかぎりは戻れないようだ。ドラゴンの状態だと生産は無理だし、活動するにもすぐに力が尽きそうだ。これらを総合すると、運営の嫌らしい罠だと思われる。
まあ、スキルチケットを置いておけば問題ないんだろうけどね。さて、川から出ようとするとそのまま押し流された。
押し流された先はアクアリードの東側でプルルの生息地域にある泉に繋がっていた。そこの砂浜にでられたのでクエストの報告に向かう。へくちっ。
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