夢幻の人 - 1 -

 毎週月曜日、必ずと云っていいほど彼は遅刻をしていた。

 それは故意的に行っていることで、全体朝礼というだらだらと長ったらしい話を聞かせられるだけの時間を、彼が好んでいなかったからだ。それ以外の日はぎりぎりではあっても遅刻はしていない。

 全生徒が体育館に集められているために静まり返った校内を歩いて、彼は一年三組と書かれた教室に入って行く。

 彼の席だと思われる窓際の後ろの席にがたっと大きな音を立てて座り、机の上に突っ伏した。

 彼がこんな行動をとっているのは五月の大型連休明けの月曜日だからという訳ではなく、体調が良好とは云えないからだ。

 吐き出す二酸化炭素は熱を持っていて、主な症状として発熱していることがわかる。

 黒板の上に掛けられた時計が八時三十分になると朝礼の終わりを告げる気の抜けた音楽が鳴り響き、彼は一際大きなため息を吐いた。

 憂鬱を孕んだそれは、誰の耳に届くことなく静まり返った室内に消えていく。

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