第23話/今度は頭を八つ裂きにする仕事


 オレは一体何の仕事をしているのだろうか。


 死体から寄生虫を抜く仕事は冬が近付き、虫は減った。


 この仕事も終わると思ったら次は、


 頭を八等分する仕事だ。


 おいおい、おいおいおいおい。


 マジで八等分だぞ……。


 脳天から首まで、包丁を叩きこむ。割れて、二つ。


 アゴから下を切り捨てる。四つ。


 目玉を避けて、上部、中部、下部に分ける。全八つ。


 ご覧の通り八つ裂きだ。


 自分の靴よりデカい包丁で、辞書と同じくらいの重さだ。


 そんなもんを叩きつける。


 頭が千切れるまで叩きつける。まな板が割れるんじゃないかって思うくらいに。


 一発で叩き割らなければならない。二回も三回も叩きつければ切れ味が悪くなる。


 ゆえに、この八つ裂きをできる限り少ない回数でしろと。


 一撃で脳天カチ割れと。


 そして、


 ――自分の指は切り落とすなよ。


 と。


 死を迎えた頭は、どこも見てない。


 オレも、包丁も、自らの死も。


 そこにオレは包丁を叩きこまなければならない。


 これが粘土の塊か何かだと思って、ひたすら無心で叩き込めたら楽だったろう。


 残念なことに、頭は固い部分と柔らかい部分があって、よく観察して緩いとこをを見極めなければならない。


 見れば見るほど、これは頭だ。


 俺は頭を解体しなければならない。


 オレはこの冬を頭を叩き割って越すことになるだろう。


「指、切らないでね」


 オレの後ろで、彼女が言う。振り向いても誰もいない。


 もしかしたら、この頭が喋ったのかもしれない。


 いや、頭だけなんだから声帯は無いか。


 どごん


――Fin――

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