真夏のレイ ~官能の季節~
芳賀 概夢@コミカライズ連載中
プロローグ
第1話:恋に気づく季節
私は最初、彼女のことが嫌いだった。
彼女は派手な見た目で、冷たく、どこか周りから浮いたような存在感だった。
そのわりに彼女が活躍しはじめると、一気にみんながチヤホヤする。
街角では、彼女が訪れたことを知らせるポスターでわきかえった。
そうなれば、彼女の名を見ない日はないぐらいだ。
正直、うざいと感じたことさえあった。
何がいいのかわからなかったのだ。
でも、その時は来た。
烈日が照り、仕事で疲労し、夏バテで食欲もわかず、朦朧となったある日。
もうすべてが嫌になっていた私の心。
それを彼女に癒された。
きっかけらしい、きっかけなどなかった。
本当に、ただ一度の気まぐれで生まれた関係。
それから、だった。
私はいつの間にか、彼女を求めるようになっていた。
そして自然に、まるで溶けこむように、彼女は私の生活に入りこんできたのだ。
一年の内、短い期間しか逢うことができない彼女。
しかし彼女は、私に冷たくあたりながらも強い印象を刻んでいく。
彼女のすべすべとした肌が唇に触れると、甘酸っぱさが私を支配する。
舌を絡めれば、強い刺激を味あわせてくれる。
瑞々しい彼女の雫は、過日の記憶とともに、私の体を若返らせてくれるかのようだ。
そして、その快感を味わううちに、私は気がついてしまったのだ。
彼女にある感情が生まれていることを……。
ああ、この感情をなんて言えばいいのだろう。
……いや。
知っている。
わかっている。
私は、この感情をよく知っているのだ。
気がつかないふりをしていただけ……。
これは――「恋」だ。
彼女は、通り一辺倒だった私を新しい世界に導いてくれた。
疲れた体を全身で癒してくれた。
熱病にうなされたような体のほてりを冷やしてくれる、美しい彼女。
その名は……
その名は……
その名は……
――【冷し中華】!
あぁ……。
愛しき恋しき……冷し中華、始めました。
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