【Fragment(α)】

「お前がどれだけ人に嫌われても、オレがお前を好きでいるから!」


「あたしが、あたしを嫌いでも?」「当たり前だろ!」


青春ダークファンタジー『ミッドナイト・ロストサマー』



−−ああ、オレは、今すぐに、お前を殺したい。−−




「ばーか。」

「たとえお前がオレを忘れても、オレがお前のことを覚えてる。――それで充分だろ」




――オレは欲しい。〈失われた夜〉が。

あの愛しくて憎い、夜空のひとかけらが。


……どうか、このオレを愛さないでほしい。


――なぜなら、愛しいお前を、オレは……。




――取り返してやる。

チカを、あの希望を、あの憧れを…あの、〈失われた夏〉を!


一回?十回?百回?いや、“何度でも”だ。

あたしは、何回だって、やり直してやる!!


――“さあ、失われた夏を、取り戻せ”。






絶望の運命よ、どうか、オレを壊してくれ。

この心臓を、止めてくれ。


“もう、お前を離さない。お前を忘れない。――お前を、死なせない!”



   −−さあ、裏切りの運命を、撃ち墜とせ−−






「―好きだったよ、千夜」


〈裏切り〉の物語は、終幕へと繰り返す。


何度でも、ただ、たったひとつを取り戻すために――。

抱いた闇が、すべてを壊す前に。


“――さあ、絶望の運命に、立ち向かえ。”





「好きだ――××」 「ごめん」


「――千夜、お願いだ」 「"いやだ"」



       ――もう、いやだ――



“もう、お前を離さない。忘れない。お前を――死なせない!”



  ……『ミッドナイト・ロストサマー』……



  ――"約束なんて、いらない"――




ここから逃げよう、とチカは言った。

......それは、約束の新月の夜だった。


病室を飛びだし、あたし達は手を繋いで逃げた。

絡みつく運命の糸から、逃れるように。


――チカは、死んだ。


『ミッドナイト・ロストサマー』



――必ず、見つけてみせるから――




理屈でもなく、本能でもなく。

ただひたすらに、あたしは知っていた。


その存在が、いかにあたしの心臓を、魂を、占(し)めていたか。


なぜなら、ふいに零れ落ちた涙の中身は、怒りでも、悲しみでもなく……。


ただ、ひたすらに喉を突き破る、慟哭(どうこく)のような嬉しさ、だったのだから。



「……オレを、殺してくれ」


「ならぬ。そなたの姿を、もっとわらわにみせよ」


雲がとぎれ、満月に照らされた名無しの瞳は赤く、その赤は、まるで、血のようにも、林檎のようにもみえた。


――××は笑った。



「そなた、名はまだないと言ったな。……ならば、わらわがつけてやる。……そなたは――御前(おまえ)は、ちか、じゃ。炎に誓うと書いて、誓炎<ちか>。――わらわの、わらわだけの夏<ほのお>じゃ」



もういい、とあたしは、しゃくりあげた。


もういい。誰も好きになりたくない。

愛したくない。失うのは嫌だ。こわい。


もう、なにもかも、投げ出して、投げ捨ててしまいたい。


――それなのに、心に浮かんだのは――。



(( ――お前がどれだけ人に嫌われても、オレがお前を好きでいるから! ))






あたしたちは、何度でも、繰り返す。

約束された裏切りを、約束された絶望を、約束された死を。


それでもいい。あたしは、手にいれる。

“永遠の夏”を。あたしの愛しい、その夏を。


――そう、近い未来、あたしを殺す、その悪魔を――。





だけど、どうしてだろう、

チカをみていると、なんでもできそうになるのだ。


ママに捨てられ、誰からも見捨てられたあたしが、

誰かを愛して、愛されることだって、できそうな気がするのだ。


不思議だ。とても、不思議で、信じられない。


――そう、あたしはきっとそんなチカに……恋をしたんだ。





ああ。もう一度、もし叶うなら。


お前を、信じてやりたいんだ。

お前だけは、救ってやりたいんだ。


たとえ、お前があたしを、そのあたたかな掌で、殺しても。


あたしは、お前を赦(ゆる)し、抱きしめるために、生まれてきたのだから。


――だから、チカ、もう泣くなよ。


......あたしは、お前のことを......。





“この世のすべては決まっていて、物語の結末なんて決まっていて、ハッピーエンドなんて、永遠に来ない”


「それでもあたしは、チカを…!!」



――“今、ここに、あたしの中で、永遠の夏となる。”――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


    ――to be continued...?――


  ――Are you OK?  Then die.――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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