第20話 変革
領主の屋敷を出てそのまま宿舎に戻ってきたリュウは、とりあえず鈴鳴に事の次第を伝えた。
『其方もやりおるのう。次期領主じゃぞ。もはやこの国を手中に入れたようなもんじゃのう』
リュウは鈴鳴が嫉妬か何かで怒り出すんじゃないかと思っていたが、それは杞憂だったみたいだ。いつも迫ってくるからそう考えたのだが、どうやらただの体目的か?流石淫魔だ。
『大変なのはこれからだ。どうみてもこの国は廃れているからな。先ずはいろいろ変えて繁栄させないと国が滅びてしまう』
『其方のことじゃ、何か考えがあるのじゃろ?』
『その辺はぬかりない。領主と相談して順次進めていこうと思ってる。その時は鈴鳴の力を借りるかも知れないからよろしくな』
『言っておくが、金はないぞ。貧乏暇なしじゃ』
”どうみても暇そうに見えるけど・・・まあ、金持ちには見えんな”
と思ったが、いらぬ波風は立てないでおいた。
そして二日後、リュウは再度領主の元へ訪れた。
『領主様、この国のことでお話があります』
『おお、例の件だな。婿殿、何なりと申してみよ』
もう婿殿になっているのを突っ込むべきか悩んだがリュウはスルーすることにした。
『この国の財政は厳しいとお聞きしましたが、何か策はございますか?』
『先日も申したが、それが一番の悩みとなっている。何分、特徴のある産業や名産がないからな。それがあればもっと栄えていただろう。農産物にしても、この国は砂漠が多くてなかなか育たない。かろうじて海に面しているから海産物があるだけだ』
『そんなことはありませんよ。この国で採取できるものを上手く活かせば良いのです。先日お話したガラスや他の材料について、街の鍛冶職人達と採掘と精錬の試作にとりかかっています。量産できる様になったら名産品として交易とかも出来ます。労働力も必要なので他からも人が流れてきます。』
『おお!既に動いておったか。流石婿殿、やることが早い。で、その試作とやらはいつ頃出来そうかな』
『おそらく1カ月くらいでお披露目が出来るかと思います。 それと農地についてですが、ここは砂漠が多いですが、砂漠は地下深くまで砂というわけではないのです。地表が砂でも地層は土なので、その地層の部分を表面に出してやればいいのです。地層をひっくり返す様な感じですね。魔法を使えばなんとかなります』
『そんな規模の魔法を使える者がおるのかな?』
『とりあえず俺がやってみます。街の防壁の西側を使ってもよろしいでしょうか?』
『砂地であればどこでも問題ない。許可しよう』
領主は本当にそんなに上手くいくのか半信半疑だった。
領主の思う通り、通常の魔法士に手に負えるレベルではない。全てにおいて規格外のリュウだからこそ出来る力技だ。
実際に試したことはない机上の案なので、どのくらいの深さまで掘り下げる必要があるのかはトライしながら調整するつもりだ。
『とりあえず、ここ1カ月はこの2つの取り組みを重点的に行います。それが上手くいけば次の段階へ移行したいと思います』
『そうだな。まず、1カ月の成果を確認するとしよう。本当に上手くいけば、婿殿を新設の改革大臣として任命しよう。爵位は伯爵での待遇だ。実績があれば誰も文句は言わん。 それと、他の四大臣と共に正式な国策の重鎮として動いてもらって構わん』
四大臣とは、法務大臣、財務大臣、軍務大臣、政務大臣で、この四名が領主と共に国を動かしていると言っても過言ではなかった。
『ありがとうございます。あと、名産品なんですが、この国はヤシの木が沢山生えてますよね。ヤシの実を名産品にしましょう。これも試作品を1カ月後に用意します』
『我が国ではヤシの実は飲み物程度にしか使われておらんのだが、婿殿が使えるというのであればそうなんだろうな。これも楽しみだ』
これから1カ月間はやらねばならない事で目白押しだ。これを成功させて次の段階に事を進めなくては意味がない。 リョウが目指しているのは、現在の5万人と言われているこの都市の人口を3倍に増やすことだ。その人口に相応しい産業や経済を実現させるインフラ作りなのだ。 この国の地形は利用価値がある。人々はそれに気が付いてないだけだった。 とはいえ、リュウの力があってこその発展というのも事実なのだが。
話が終わり、領主の部屋を出たところでクリスと出会った。
『リュウ様、少しお時間よろしいでしょうか?』
リュウはクリスに連れられ部屋へ案内された。
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