第23話 怪異を乗り越えて

「太陽がまぶしいほどの快晴だな!」


廊下から見る景色も良かったが、実際に外に出た時の気持ちはまた格別のようだ。


「まだ地面がぬかるんでいる所もあると思うので、足元には注意してくださいね」


「分かった。もう大丈夫だと思うが、また怪異が出たらすぐに連絡してくれ」


ここを離れるのは名残り惜しいが、今は大学の単位を優先しなければ。


「珈琲ごちそうさまでした。

 琴音、風邪引いたりしないように、気をつけるんだぞ」


「分かってる。誠も自分を大事にして」


「ああ、人を守るにはまず自分を守れないと説得力がないしな。

 それじゃあ3人とも元気でな!」


3人に笑顔で手を振ると、柊家の別荘を後にした。


スマホで時間を確認すると、午後4時を過ぎた辺りだが、まだ日が長いので何とか間に合うはずだ。


「うむ、この辺りならまだ電波が届くみたいだな。

 今日中にデータを回収して、起きたらすぐに降りてこなければ」


まだ地面がぬかるんでいる場所が結構あるので、少し遠回りしつつ、山道を登っていく。


進めど進めど同じような山道が続くので、道を間違えているのではと心配になるが、


辛抱強く歩いていると、少し広め道に出た。


看板に友人が住んでいる地区が表示されているが、まだまだ1時間くらいはかかるようだ。


今日何度めかの「高崎が携帯を持っていれば」を愚痴を溢しつつ、1歩1歩山道を登る。



そんな感じで、あまり代わり映えのしない山道を歩いていると、茅葺きの家が見えてきた。


まさかここではないだろうと思いながらも、歩いていくと「高崎」と言う看板があった。


「10階建てのマンションから、茅葺きの家に引っ越しって極端過ぎないか……」


まあ、高崎の変わり者ぶりは今に始まったものではないのだが、やっとの思いで友人宅に到着する事ができた。

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