第2話 別荘らしき建物

「ふぅー、これでやっと雨がしのげる」


傘を閉じて建物の軒下に隠れると、建物の様子をぐるりと見回してみる。


脳裏に映り込んだ窓と形が同じだし、玄関も一致している。


駐車場に車が1台止まっているが、この地面の状況では山道は走るのは不可能だろう。


「ん?」


車から視線を戻すと、何か違和感を感じたため、再び車に目を移す。


「車のタイヤに泥が付いていないな」


こんな雨の中でわざわざ洗い流すはずもないし、雨がまだ降っていなかった昨日のうちに車を止めたのだろうか。


「さて、この別荘で間違いなさそうだけど……どうしようか」


先程からわずかに感じる視線には気づかない振りをしつつ、次のアクションを考える。


雨に濡れ、体力も消耗してきているので、中で休ませてもらいたい所だが、中の人物が助けを求めていると考えると、それは難しいのが現状だろう。


まあ雨宿りをするために、ここへ逃げ込んで来たには違いないので、普通に訪ねてみる事にしますか。


次の方針を決定すると、ゆっくり立ち上がって、正面玄関へと向かう。


髪についた水分を吹き飛ばすため、頭を軽く振りながら玄関に近づいていると、「ガチャッ」と言う開錠音が聞こえてきた。


もしかして俺を家に入れてくれるのか?と、チャンスの到来を期待しつつ、様子を伺っていると、ギギギと言う耳障りな音と共に、扉が開き始めた。


半分ほど扉が開いているが、今立っている場所からは中が見えないので、扉を開けた人物を伺い知る事はできない。

ただ中で何か変化が起きた可能性は高いので、やはりこのチャンスは生かすべきだ。


危険が待ち受けているとしても、今までも乗り越えて来たから大丈夫。


自分にそう言い聞かせて、扉の向こう側の人物に声をかける。


「無断で軒先を借りてしまって申し訳ございません。雨が弱まったらすぐに立ち退きますので、それまでお借りしてもよろしいですか?」


「……」


しかし扉の向こう側の人物から返事はなかった。


「あれ、聞こえてなかったかな。仕方ないもう一度……」


「中に入って」


再度声をかけようとした所で、まだ少女と思われる女性の声が聞こえて来た。


「気持ちはありがたいですが、濡れたまま中に入るのは申し訳ないので、

 軒先を借りられれば大丈夫ですよ」


俺は女性にそう言葉を投げかけるが、返事はなく、どうすれば良いか考えていると、扉が全開となった。


「中に入れって事……か?」


見ず知らずの人物を、よく確かめずに家に上げるのは無用心な気がするが、開いた扉から中を覗いてみても、姿が見えないため確認する事もできない。


いくら考えても仕方がないので、今は女性の好意を受けて入れて、中に入る事にした。


「それではお言葉に甘えて、入らせて頂きます」


感謝の言葉を述べつつ、別荘の中へと入る。


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