傘華 -黒き糸-

時谷 創

プロローグ

『誰か……』


真っ暗で何も見えず、何も聞こえない閉ざされた空間で、俺は誰かのSOSを感じとっていた。


その悲痛な想いは、幾度となく反射するが誰にも届かず、彷徨い続けている。


『この願いが届く事があったら……』


俺にできる事なら力になってやりたい。


でも今の俺にはその資格がないため、手を伸ばしても虚空を捉えるばかりだ。


『この悲劇を……』


訴え続ける想いの波動も、だんだん弱くなってくる。


このまま途切れさせては駄目だ。


もう少し手がかりがないと、そこに辿り着けなくなってしまう。


『……止めて欲しいの……』


助けたい気持ちを強く持ち、今ある気力を振り絞って、目一杯手を伸す--。


すると俺の脳裏にある建物の外観が映り込む。


これは……別荘か?


そこで諦める事なく再度手を伸ばすが、想いの波動がノイズに飲み込まれ、そこで意識が途絶えてしまう。


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