第22話 変態ってどこから変態なんだろう?

「お嬢ちゃんたち!コレを見てくれ!」

長めのコートを着た男が前を開いて俺達に見せてきた。

コートの下は他の衣類はなく、すっぽんぽん。ただし荒縄で亀甲縛り

されてる状態だ。

息子さんは怒髪天を突いてらっしゃる。


「「……」」

「あ、あれ?ほら!ほ~ら!」

変態は反応を示さない俺達に何度も何度も息子さんを突き出してくる。

葵を見ると、さすがに下は見ないように手で隠しているが、もう慣れて

しまったようで、冷静そのものだ。


「普通の変態だな。」

「普通の変態だね。」

「ふ、普通!?」

今までがちょっとおかしかったからね。


「まあいいや。とりあえずアンタも敵だな?じゃあいくぞ!」

「敵?何言ってるの?い、いやそんな事より、おじちゃんの息子を見て

何も思わないの!?」

「汚い……としか。」

「そんな……そんなバカな……」

ぐったりとうなだれる変態。


「今まではキャー!とか、うわっ!とか悲鳴を上げてくれたのに……」

「どうでもいいからさっさと戦うぞ。時空間を止めろよ。」

さっきから風が吹いたり、動物の鳴き声が聞こえてるから戦闘用の

フィールドが広げられてないらしい。


「時空間を止める?戦う?さっきから何言ってるの君?」

「え?……だって変態じゃん。変態は敵じゃないの?」

「何が?」

……え?もしかして普通の変態?本当に?


「ないわ~、ないってコレ。普通の変態が普通に変態的行動を

取っただけじゃん。」

「あの?」

「変態のおっさんも変態度が低いんだよ。その程度のレベルじゃ、

そこら辺にいる変態と変わらないじゃん。」

「くーくん、通常は変態はそこら辺にいないよ?あとそろそろ変態って

言う言葉がゲシュタルト崩壊しそうだよ。」

変態のおっさんは目をキョロキョロさせながら俺達を見回す。


「そうだなぁ……例えば、あそこにいる明らかに小学生用の

Tシャツを着て、上半身がピチピチの状態でオムツはいてランドセルを

背負って、学校指定の帽子を被って、泣いてる幼女の手を引きながら

こっちに歩いて来る、見た感じ四十過ぎのおっさんくらいじゃないと

変態とは……」

そこまで言って気が付いた。


「あれは……」

「あの格好してる人は……」

「なるほど、確かに格が違う。あれこそが……」


「「「変態だーーー!!」」」


俺と葵と変態その1が同時に声を上げた。



「おや?戦闘相手ですか?」

相手も俺達に会うことを想定していた訳ではないらしいが、先に声を

かけられた。そして変態その1がいつの間にかいなくなっている。

戦闘フィールドが広がったか。


「では、先手必勝で。」

おっさんはランドセルからリコーダーを引き抜くと、

「ではコレに唾液をまぶしてください。」

変態的要求をした。


幼女がヒックとしゃくり上げながら、

「なんで……私がこんな目に……」

と呟いたのが聞こえた。


「くぉらぁ!ガチ犯罪じゃねぇのか!?その子を離しやがれ!」

「違うわ!交渉の結果じゃ!」

交渉?そう思っていると、変態が一枚のチケットを幼女が見えるように

ランドセルから取り出した。


「いいのですか?何のイタズラか自分が手に入れてしまった、この……

ジャネーズの人気グループ、荒々しいのコンサートチケットが

貰えなくても。破いてもいいんですよ?」

「ちくしょう……」


荒々しいのチケットは発売数分で完売し、その倍率が五十倍を

越える事もあるプラチナチケット。

そうか、あの幼女はジャネヲタだったか……

良い子のみんな、転売はやめようね。絶対!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る