第2話 幼馴染み♂は俺の嫁 その3
クラッシュとルミナのペア狩りは、それから十日ほどの間、毎日続けられた。ペア狩りと言うと、たんにゲームを楽しんでいるだけのようにも聞こえるけれど、要するにデートだ。
ルミナはわざわざ、ファミリーの溜まり場に寄って、
『じゃあ、クラッシュさんと約束しているので行ってきます。これって、なんだかデートみたいですよね♥』
だとか言ってから、俺のところに来ているらしい。同性の幼馴染みから楽しげにそんなことを語られても、俺はどう反応していいのだか。
それはともかくとして、連日のペア狩りはなんだかんだと楽しかった。
色んなフィールドに行った。松明から離れるとまっくらになるような洞窟では、弱いけれどいくらでも沸いてくる蝙蝠やゾンビをひたすら倒しまくった。色とりどりの花が咲き乱れる風光明媚な高原地帯では、見た目の可愛さとは裏腹に手強い子供ドラゴンを追いかけたり、逆に追いかけられたりした。週末の夜には、続き物のクエストを終わらせないと入場できない無人島フィールドにも行った。島に入ってすぐ、わりと醜悪な見た目の敵から袋叩きにされて早々に追い返されたけれど、長いクエストを終えて高難度のフィールドに辿り着けたという達成感はあった。
また、十日間かけて巡った狩り場で掻き集めた
俺と光のペア狩りは、この頭装備を作るためのものでもあった。
完成した“乙女の花冠”を装備したルミナが、ファミリーの溜まり場に顔を出す。
『ねえ、見て。どうですか、似合ってます? ずっと欲しかったんだけど、一人じゃ必要な素材が集められないし、市場で買うのもお金が足りないから諦めていたんですけど、クラッシュさんが素材集めを手伝ってくれたんですよー』
嬉しげな様子で音符やハートマークを飛ばしてくるくるまわったりするルミナを、みんなは口々に褒めたり、一緒に喜んでくれたりしたそうだ。
……その同時刻、俺への暴言ウィスは超加速していたわけだが。
あのとき本当はログアウトしていたかったのだけど、
「急いで駆けつけてほしいときがあるかもしれないから、こっちがログインしているときは、要もできるだけログインしておいてほしいんだ」
光にそう言われていたから、俺は仕方なしに、チャット窓を滝の如く流れる伏せ字だらけのチャットを眺めていたのだった。もっとも、滔々と淀みなく流れる暴言チャットを見ているうちに怖がるのが馬鹿らしくなって、もういっそ笑えてきた。暴言に対する耐性がついたと思えば、悪くない経験だったのかもな。
……とでも思っておかないと、やってられない経験だった。
光が“乙女の花冠”をファミリーの仲間にたっぷり見せびらかしてきた夜。ゲームを終わらせて布団に入ろうとしたところで、携帯に光からのメッセージが来た。
『明日、結婚を発表しようと思うんだけど、先に婚約発表をして煽ってから結婚したほうが効果的かな?』
『知らん』
俺は即座に返信すると、携帯を放り投げて布団を引っ被った。
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