第2話 幼馴染み♂は俺の嫁 その1
何を隠そう、俺はネトゲ経験者である。
中学二年までは部活をやっていたし、パソコンも
もちろん、受験生だったわけだからして、平日は授業の他に一日七時間は勉強していたと思う。毎日それだけ勉強する分、土日は完全に遊び倒していた。しかも父親は単身赴任中で、母親も土日は実家のほうに行っていたりで家には俺一人だったから、何の気兼ねもなしに居間のパソコンでネットゲームを遊べていたというわけだった。
そのときに遊んだネットゲームは【ルインズエイジ】ではなかったけれど、【ルインズエイジ】と同じ大規模多人数同時接続型のRPG、いわゆるMMORPGというジャンルに属するものだった。一週間のうち一日二日しかログインできない状況だったし、いつ遊んでいられなくなるかも分からなかったから、【ルインズエイジ】におけるファミリーに相当するものに加入したことはなかった。せいぜいが、いわゆる臨時パーティとか野良パーティとか呼ばれる、その場限りのパーティを組んで遊んだことがあるくらいだった。
――あの後、仕方なく頼みを引き受けた俺に、光は意気揚々と言った。
「詳しい手筈だとかはまた明日にでも電話するから、とりあえず今夜のうちにクライアントをインストールしてキャラを作っておいてくれ。できればチュートリアルも終わらせて、一通りの操作方法を覚えておいてくれれば、なおよしだ。あっ、それともちろん、キャラは男キャラで頼むぞ。間違えないでくれよ」
「分かったよ。じゃあ、いまからやっておくから、また明日な」
「ああ。じゃあな」
という感じで電話を終えて、俺は自分のパソコンを起ち上げたというわけだった。
ちなみに、去年までは居間に置いてあるパソコンしか使えなかったが、今年の春からは自室でノートパソコンが使えるようになっている。父親が今春、新しいのに買い換えたので、お古のを入学祝いということで譲り受けたのだ。お古といっても、二、三年前の最新鋭機だから、いまでも現役クラスの性能だ。公式ページに記載されていた【ルインズエイジ】の要求PC性能も、余裕を持ってクリアしていた。
携帯で現在時刻を確認すると、いまは午後四時半。電話している間に、とっくに家まで着いて、制服から私服への着替えも終わっている。
(夕飯までに時間もあるし、キャラ作成くらいしておくか)
俺はさっそくインストールしたクライアントを起ち上げて、操作キャラクターの作成を始めた。
じつは、ゲームプログラムのダウンロードとインストールは、この時点でまだ半分も済んでいない。ネットゲームというのは定期的にアップデートが行われて追加データが配信されるという仕様のため、基本のクライアント・プログラムをインストールし終えても、初回起動時のアップデート作業は数十分から数時間かかるというのも珍しくない。
じつは、高校入学して自分用のノートパソコンを手に入れ、何だかんだとあって部活にも入りそびれたことで、改めてネットゲームをしてみようかな、と思い立ったことはあるのだ。でもそのときは、初回の長い長いアップデート作業が終わらないうちに、うっかりパソコンを再起動させてしまうという不幸に見舞われてしまったのだった。それですっかりやる気を削がれてしまい、そのネトゲはそれっきり起動させてもいない。
その点で【ルインズエイジ】が素晴らしいのは、なんとアップデート作業中でもキャラクター作成をすることができるのだ。新規プレイヤーを獲得し続けることが重要なネットゲームにおいて、これは最高に素晴らしく行き届いた配慮ではなかろうか!?
……なんて一人で興奮しながら、俺はキャラクターを作り始めた。
「とりあえず、男キャラであれば何でもいいのか……いや、あんま子供やおっさんキャラじゃ、おかしいか」
嫌味すぎない程度にイケメン爽やか好青年、って感じのキャラが無難か。そういうキャラなら、初期表示されるプリセットそのままでいいくらいだけど、それだと芸がないので、目鼻立ちをもう少しくっきりさせてみたりした。
「よし……」
こんなものかなと思って、画面に顔しか映らない距離まで接近させていたカメラを全身が映るまで遠ざけてみる。ポーズ変更ボタンをクリックして、静止状態から跳んだり跳ねたりダンスしたりさせてみると……
「……あれ?」
何かがおかしい。何がなのか咄嗟に分からなかったけれど、確実に違和感を感じた。
目をぎゅっと瞑ってから改めて見つめてみると、顔に配置されたパーツのバランスがおかしいのだと気がついた。人間の目はたぶん、もう少し上のほうに……いや、鼻の大きさがおかしいのか? それとも唇が下すぎる? いや、唇の位置を上げると、顎が長すぎることになってしまう……。
「……なんだ、これは?」
声に出して呟かずにはいられなかった。
それからしばらく格闘してみたけれど、やればやるほど違和感が増していくばかりだ。目を開けているのに、福笑いをしている気分だ。
最終手段としてネットで「顔 デッサン 比率」などの単語で検索をかけ、出てきたサイトの説明通りの比率で目鼻唇を配置したら、なんともあっさり違和感のない人間の顔にできあがったのだった。
検索してからの所要時間は、およそ十五分。それまで独力でどうにかしようと格闘した時間は五十分。
「これが集合知というものか……!」
一介の高校生ごときでは太刀打ちできないネットの凄さに打ち拉がれつつも、ネットの力でイケメンにできあがったキャラに名前をつけて最終決定ボタンをクリックしたところで、母親から夕飯に呼ばれた。
夕飯や風呂などに呼ばれたら速やかに参じて、
「パソコンばっかりしてるなら取り上げますからね!」
と言わせる隙を与えないのが、親の金でネットしている身の処世術というものだ。
食事と風呂と歯磨きとその他諸々を速やかに済ませた後、部屋に戻ってきてパソコンを再び起ち上げる。【ルインズエイジ】にログインすると、キャラクター選択画面にはさっき作ったキャラクターがしっかりと表示されていた。それを選択すると、短いローディング画面を挟んだ後、ゲーム画面に長閑な風景が映し出された。
木漏れ日の降り注ぐ明るい森の中を、石畳の道が画面奥へと伸びている。
(この道を進んでいけばいいのかな?)
そう思ったところで、画面上方に、
『道に沿って前進してください。キーボードのWASDで移動できます』
と表示された。
公式サイトで事前にざっくりとだけ確認していたけれど、【ルインズエイジ】の移動はマウスの
俺が以前にやっていたネトゲの移動方式は、クリック式だった。WASD方式のゲームに触れるのは、これが初めてになる。
道はまっすぐだから、Wを押しっぱなしにしていれば良いだけのようだったけれど、とりあえず四つのキーを押してみて、木立の隙間をぐちゃぐちゃに走りまわりながら移動方法を覚えた。
そんな感じで続きのチュートリアルも最後まで終わらせ、操作方法をしっかり身に付けた。チュートリアルの過程で経験値と初期装備に回復薬も貰えたし、スキルについての大まかな説明もしてもらえた。
俺が選択した職業は
光が立てた計画では、俺のキャラと光のキャラ(あくまでもキャラ同士!)は余人が付け入る隙のないラブラブ夫婦になるわけだから、男である俺のキャラは、光のキャラの前に立ちはだかって敵の攻撃から彼女を守れる前衛職になるというのが、見た目的に一番しっくりくると考えたのだった。
そうそう、俺の分身であるキャラクターの名前を言い忘れていた。
クラッシュだ。
本当はもっと色々あれやこれやと格好いいのを考えていたのだけど、そのどれもが、
『その名前はすでに使われています』
の一言で切り捨てられた。
考えても考えても却下され続け、ようやく通ったのが「クラッシュ」だったというわけだ。正直、どうしてその名前にしたのかも分からない。最後のほうは思いついた単語を脳内で反芻することなく、ひたすら機械的に入力していただけだった。
でもまあ、けして悪くない響きの名前なんじゃないかなぁ、と納得している。
さて――チュートリアルが終わったクラッシュは、どこかの建物内に転送された。立派だけど飾り気のない広間に、重たげな鎧を身に着けた戦士たちが闊歩している。どこだろうかと悩むまでもなく、画面片隅に表示されている地図に『騎士団本部』と書いてあった。
なるほど。俺のキャラ・クラッシュは職業に騎士を選択したから、騎士団本部からスタートするというわけか。
騎士団長なる
大きな通りを歩いている人影のほとんどは、他のプレイヤーが操作しているキャラクターのようだ。さっきの騎士団長やチュートリアル中に登場したNPCとは見た目の雰囲気が違っていた。
ただ単に装飾の派手な鎧や、肌色の露出が多すぎやしないかという布切れ的な衣装、どこかで見たことのあるマスコットをあしらった服など――操作キャラクターたちは多種多様の服装に身を包んで、往来を闊歩していた。
とても街並みに合っているとは言い難いのだけど、それが不思議としっくり感じる。
(ああ……ネトゲだなぁ)
懐かしさで胸がいっぱいになった。
去年の春から週末限定でやっていたネトゲは、さすがに年明けには休止していた。それから四ヶ月と少ししか経っていないし、去年やっていたネトゲと【ルインズエイジ】とでは見た目もシステムも全然違う。だけどそれでも、帰ってきたんだな。という思いがするのだった。
「……っと、そうだった」
俺はゲーム画面をそのままに、携帯を取って光に電話をかける。通話がつながるや、光の声が耳に飛び込んできた。
「キャラを作ってくれたんだな!?」
「第一声がそれかよ……」
「えっ、違うのか?」
「作ったよ。いまチュートリアルが全て終わって、ええ……騎士団自治領・首都ロートホルン、に出たところ」
「ああ、騎士にしたんだ」
さすがは既プレイヤー。初期の転送された場所の地名だけで、俺がどの職を選んだか、ばっちり分かったようだ。
「うん……よし、こうしよう」
光が電話の向こうで頷いたのが気配で伝わってくる。
「いまから俺もログインしてそっちに行くから、そこで待っててくれ」
「えっ、大丈夫なのか?」
一門の仲間からいわば監視されている状況の光が、俺のキャラにいきなり会いにきても問題ないのだろうか――その疑問に、光は笑って答えた。
「大丈夫だ」
「いや、答えになってないよな!?」
光は答えないで通話を切りやがった。
それから五分後、光のほうから電話をかけてきた。
「おまえのキャラの名前を聞いてなかった。いま騎士団本部の前まで来てるんだけど……名前はクラッシュで合っているか?」
「うん、それ。よく分かったな」
「騎士団本部の前に立っている初期装備の騎士、他にいないから」
「なるほど」
と返事をしている間にも、ゲーム画面の中ではクラッシュに向かって近づいてくるキャラクターがいる。でもそれは、さっきの電話で聞いていたのとは違うキャラだった。
「あれ……これ、おまえのキャラか?」
さっきの電話では、ルミナという名前の女性神官だいうことだったけれど、いま俺のキャラに寄ってきたのは男性キャラだ。名前も『リヒト』だ。弓と矢筒を携えていることから、
謎の弓師を眺めていると、ピコンと電子音がしてゲーム画面内に新しいチャット窓が開かれる。ここらへんは去年やっていたネトゲと大差ないから、すぐに
『これは別キャラ。ルミナでログインすると自由に動けないから、こっそり作っていたんだ』
『なるほど、大変なんだな』
俺もゲーム内のチャットでそう返事した。
「じゃあ、操作に集中したいんで、こっちは切るな」
光は、今度は電話でそう言うと、それを最後に通話を切った。そして次はゲーム内のチャットで言ってくる。
『じゃあ、今夜はスパルタでレベル上げしてもらうから』
『レベル上げ?』
俺もチャットで返す。
『新規作成したばかりのキャラそのままじゃ、周りに納得させる恋愛対象として弱すぎるから、ちょっとはレベルを上げてもらわないと』
『……なるほど』
確かにそのとおりだ。
いまのクラッシュではいかにも、男避けの指輪欲しさに結婚するために即席で用意した新規キャラです、と言わんばかりだ。
『こっちとしては、おまえのキャラ……クラッシュ君と自然に出会って、あっという間に意気投合して結婚しちゃいました、というシナリオにしたいんだ。そのためにも、クラッシュ君にはルミナがソロ狩りでよく行く狩り場に入ってこれるくらいのレベルになってもらいたいんだ』
『たぶん了解した。とにかく、レベル上げをすればいいんだな?』
『そういうこと。このキャラもそんなにレベル高くないけど、多少の手伝いはできるから』
『頼りにしてるよ』
――というわけで、光による
【ルインズエイジ】では、どんなにレベル差のあるキャラ同士でもパーティを組むことができるが、レベル差がありすぎると経験値の共有化ができなくなる。つまり、光ことリヒトが倒した敵の分の経験値は、リヒトにしか入らない。同じパーティを組んでいても、俺ことクラッシュには分配されない――というわけだ。
レベル差がもう少し埋まれば、この問題は解消されるのだけど、それまでは俺が自分で敵を倒さないことにはどうにもならない。
そして、光の別キャラであるリヒトは弓師だ。弓矢での遠距離攻撃が売りの、殲滅力に特化した職だ。神官だったら補助魔術で支援してもらえたのに……。
……という思い込みは、特訓が始まって五分で拭い払われた。
リヒトは弓を使わないスキル構成だった。
風の精霊を使役して弓を使わずに矢を飛ばしたり、自分や味方の敏捷性を上げる、敵の行動速度を鈍らせる……といった補助スキルのほうに多くを割り振った、風使いだった。
『リヒトはあくまでも気分転換用のサブキャラだからね。スキル構成は、強さよりも面白さ優先だよ。でも、初心者キャラの手伝いには悪くないだろ』
本人が言ったとおり、リヒトの使う風の魔術は思った以上に便利だった。移動速度を上げてもらって高速でフィールドを駆けまわり、獲物を見つけては攻撃を仕掛ける。攻撃速度を上げてもらっているから、とくに攻撃スキルを覚えていなくとも、基本の攻撃を連打するだけで、獲物は溶けていく。回避率も上がってもらっていて、敵からの反撃もそこそこ避けられるから、回復アイテムの使用が間に合わないということもない。
光に用意してもらった大量の回復アイテムを湯水のごとく使いながら、俺は独力でなら一体を相手にすることも難しいだろう敵を、ごりごり倒していった。敵性レベルを上回るレベル帯の敵を倒すと、一体ごとに大量の経験値が入ってくる。レベルはとんとん拍子で上がっていき、一時間もすると
【ルインズエイジ】は、
キャラクターの基礎的な
風の精霊術を魔術師で修得する場合は、弓師で修得する場合と大差ないけれど、神官で覚えようとすると前提条件が厳しくなる。また、騎士が魔術系の技能を覚えようとすると、必要技能点が大きく増えてしまう――と、このように、職業毎に大まかな傾向が決められていた。
でも、遊んでいるうちに、きっとこんな欲求が出てくる。
「騎士で始めたけれど、魔術もたくさん覚えたい! 魔法剣士がやりたい!」
それに応えるシステムが複合職なのだ。これは最初の決めた職に追加して、二番目の職を選べるというシステムだ。
例えば、騎士で始めたキャラが二番目の職に魔術師を選べば、魔術系の技能を低コストで修得できるようになる。このシステムを使えば、魔法剣士も楽に作れるようになるというわけだ。
二番目の職には、最初に決めたのと同じ職を選ぶこともできる。一番目と二番目をどちらも騎士にすると、騎士が元からコストが安い武具関連の技能が、さらに低コストで修得できるようになる。つまりは、特化キャラを作りやすくなるというわけだ。
『複合職というのがあるのは知っていたんだけど、こんなに早く可能レベルに到達すると思っていなかったから、詳しく調べてはいないんだよな……なあ、光。騎士のサブ職って何がいいんだ?』
『神官以外だったら、なんでもいいよ』
『それは逆に、どうして神官じゃ駄目なのかが気になるが……』
『きみは神官のルミナと結婚するんだから、神官系のスキルは要らないでしょ』
『あ……理解した』
そりゃそうだ。言われるまで気づかなかったことに、むしろ自分でびっくりだった。
個人的には、
(聖騎士、パラディンというのもなかなか)
と思っていたのだけど……まあ、今回は諦めよう。
『あ、もうひとつ質問』
『なに?』
『光のメインの神官は、サブを何にしているんだ?』
『ルミナは神官ダブル付けの、パーティ支援特化型だよ』
『なるほど』
ということは、その
(って、それだと俺までパーティ特化になる。支援特化と防御特化じゃ、ペア狩りの効率が悪いだろ――とか言われて、夫婦二人でファミリーのパーティ狩りに呼ばれる流れになってしまうじゃないか……!)
クラッシュがルミナと結婚する理由は、ルミナをファミリーの男どもから遠ざけさせるためだ。夫婦ともパーティ特化のスキル構成にして、他の男どもが狩りに混ざってくる口実を与えるのは得策ではない。
(とすると、攻撃力をもっと上げられるサブクラスがいいよな……)
しばらく考えた後、俺は魔術師を副職に選択した。
物理属性と魔法属性のどちらでも攻撃できるようにして、ルミナとのペアで完結できるようにさせるためだった。まあ……魔法剣士も格好いいよな、と思ったことは否定しないが。
『じゃあ、サブクラスも設定し終わったし……もう少しスパルタしようか』
光のキャラ・リヒトはチャットでそう言うと、自分の胸をどんと叩いて「任せろ」と言うような仕草をしてみせた。
クラッシュはリヒトと経験値を分配できるレベルになっていたから、その後のレベル上げでは、リヒトも攻撃に参加するようになった。前衛の俺が敵を受け止めて、後衛のリヒトが風の精霊術で飛ばした矢を射込む。回復は、所持重量の限界まで補充した消費アイテムで賄った。
俺の金ではなかったけれど、ひたすらに消耗する狩りだった。だけどその分、少なくとも俺にとっては実入りのいい狩りになった。そろそろレベルも上がりづらくなるだろうかと思っていたのに、複合職を解禁させる前と同じペースでレベルを上げられた。
『今夜はそろそろ上がりかな』
狩りが一段落したところで、リヒトが動きを止めてチャット発言する。
時計を確認すると、普段なら勉強を切り上げて漫画を読んだりし始める時間だった……というか、遊びすぎた……。
『やばい、宿題やってねえ……』
俺はクラッシュにそう発言させて、両手で頭を抱える
『同じ学校だったら、写させてやれたんだけど……こういうとき、学校が違うのは不便だね』
『学校が同じだったとしても、写させてくれなかっただろ』
『そんなことない……わけでもないか』
小学生の頃から、光が俺に宿題のノートを写させてくれたことはなかった。でもその代わり、ノートを提出しなくてはいけない授業が始まるまでにどうにか宿題を仕上げようとする俺に付き合って、問題を解くヒントをくれるようなやつだった。
『明日もあるから、今夜はこれで終わりにしようか』
『だな』
俺はそう答えてから、ふと気になって続けた。
『というか、明日やるのか?』
『だよ。そっちのレベルも十分だし、早いほうがいいしね』
『ふむ』
『詳しい話はチャットじゃさすがに間怠っこしいし、いま電話するよ』
『頼む』
と返事をしてすぐに携帯が震える。光からの着信だった。
「んじゃ、ゲームは落とすぞ」
俺は携帯の向こうに話しかけながら、【ルインズエイジ】を終了させた。
携帯での話し合いは、それほど長くはかからなかった。俺の宿題を考慮して、光が早めに切り上げたのだった。
「詳しい手筈はこっちで今夜のうちに考えて、明日の午前中にはメールで送っておくよ。要はそれを夜までに覚えてくれればいいから」
「はいよ、了解」
「じゃあ……また明日な」
「おう、また明日」
実際に会うわけではないが、俺たちはそう言って通話を終わらせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます