猫と過ごした愛しき日々

圭琴子

第1話 動物遍歴

 私は元々動物が好きで、割と色々な動物を飼ってきた。

 犬、インコ、亀、金魚、鶏。

 

 最後の鶏とは、昔よくあった、お祭りの出店で売っていたカラーひよこが大人になったものである。

 大きくなると捨てる家が後を絶たず、一時期問題になったアレだ。

 お陰で、今はもう売っている所は見られない。

 しかし私は根っから動物が好きだったので、鶏になっても、父の手製の鶏小屋から毎日庭に鶏を放して、運動をさせていた。

 そんな情報がどう伝わったのか、飼いきれなくなった何処かの人が、ご丁寧に車庫内に鶏を二羽捨てていって、鶏は計三羽になった。

 世話の大変さは何倍にもなったが(出す時は良いのだが、小屋に入れる時、追いかけている内に先に入れた鶏がまた出てしまう)、それでも私は鶏が愛しかった。


 犬は、雑種の中型犬だった。

 祖母が俳優・渡哲也さんのファンだった為、テツヤと命名された。

 春には河原にふきのとう取りに行き、見よう見まねで「これを取るのか!」と気付いたテツヤが、かじって形を崩してしまわないように、のどかな筈のふきのとう取りが早い者勝ちの争奪戦になったのを覚えている。

 本当に嫌ならふきのとう取りにテツヤを連れていかなければいいのだが、その競争が満更でもなく楽しかった。

 

 インコは、当時の親友とお揃いで同じ黄色のインコを飼った。

 小学生の考えるインコの名前としては妥当に、私は『ピーちゃん』、親友は『ピコちゃん』に決まった。

 思い出深いのは、放鳥中にいなくなってしまい逃げたものと諦めていたら、二時間後くらいに鳴き声がして、天井の洗濯物かけの針金に逆さにぶら下がっていた事である。

 頭に血が上っただろうに、一体下界の人間たちをどんな思いで見下ろしていたのだろう。

 もう一つの思い出は、家に帰るとヤカンがコンロにかかっているのに火が消えていて、ガスが充満しており、当時石炭ストーブだった為、慌てて扉を開け放してピーちゃんを連れ出し、寒空の下一人と一羽で不安な時間を過ごした事である。

 冷静に考えればカゴごと持ち出せば良かったのに、慌てていてピーちゃんを握って外に出た。

 その手の中でもそもそ、、、、と動く暖かさが、幾らか心細さを打ち消してくれたものだった。


 亀は、これまたお祭りの出店で買ったミドリガメだ。

 水槽で、その小さな甲羅が十センチほどになるまで、育てたのを覚えている。

 名前は……忘れてしまったが、亀太郎とか亀男とかだろうというのは、想像に難くない。

 何しろ、成人して一人暮らしを始めた際、寂しさを紛らわす為に飼った、、、サボテンに、『さぼじ』と名前を付けていたのだから。


 金魚も、安定の出店産だ。

 二軒隣の祖父の家に大きな庭と池があったので、毎年、金魚すくいをしては戦果を放していた。

 保育園の頃から毎年放していて、大きなものは体長十五センチほどまで育っていた。

 すっかり私に慣れて、餌の時間に手を叩くと、集まってきたものだ。

 その後、水槽に分けて貰って、上から見ていた細長い棒状の金魚が、実は魚らしいフォルムをしているのだと気付いて、驚いた記憶がある。

 この金魚はすこぶる元気がよく、たびたび水槽から飛び出るので、目を光らせていて逐一水槽に戻すのが私の役目になった。


 話はいきなり逸れたが、私はそんな動物大好き一家に育った。

 犬は飼っていたのに、猫を飼った事がなかったのが、不思議なような家だった。

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