異世界が舞台ですが、現実世界のようなリアルさで描かれている、骨太なストーリーでした。
「風捕り」がひとつのキーワードとなり、読者は主人公とともに世界を知って行きます。
徐々に暴かれていく真実に向かって、事態は大きくうねり始め、状況はより複雑に。
陰謀、王政、軍部、外交、戦禍、遺恨、さまざまな思惑が渦巻き、それらが多角的な視点で描き出されて行きます。
時に忘れてしまいがちな現状を、最後まで繰り返し説明してくれる第三者視点、
抱えるそれぞれの思いが交差する場面での描写力はとても丁寧で、明確です。
作者がとても冷静で、物語の進行と人物たちに等しく力を注いでいるように感じます。
安定感のある描写力の中、
やがて渦中へと、自ら身を投じて行く主人公と協力者たち。
長編で、たくさんの人物をしっかり掘り下げている為、群像劇にやや近くなっているかもしれません。
確かなスケールの世界で、作者が描きたかったものも、思いも全て、登場人物が体現している、そんな歴史の叙事詩を見るような物語でした。
2018.1.4