37話 突然の黒幕2
「ーーふざけんなよ……」
「………」
アルテミシアは俺から何かを感じ取ったのか少し距離を取る、グラーグはそんな俺を見て目を見開いて驚いている。
「まさか、あの状況から汚染を押し返すなんて……。どんな精神構造してるんだい?」
「汚染? 神様なのに汚染とか随分な事をするな……」
「どうして…」
「……黙って使うのが駄目なら頼んだら平気だと?」
「…なんで?」
「っ!……そもそも死ぬのが嫌で、知り合いを死なせるのが嫌で頑張ったんだ。そんな奴に頼めば生け贄になるとでも本気で思ってるのか?」
「だから少しでも楽になればと催眠を掛けるつもり」
「なっ……、ーー狂ってる」
ーーーおかしい。
どう見てもさっきと違いすぎる、"感情"が無い。さっきまでは言葉は判らなかったが感情はなんとなく伝わった。なのに今のアルテミシアからはそれが無い。
「お前、どうした?」
「ねぇ、お願い……」
「だから、近づいてーー!」
体が段々と動かなくなって来るのが分かる。それと同時に意識に何かが割り込もうとする。
アルテミシアはゆっくりとこちらに歩いて来る、近付けば近付く程に体の自由が効かなくなり意識が持ってかれそうになる。
「ふざ、けんなよ……!」
「アルテミシア様としては有能な人はいくらでも欲しいからね」
「俺が有能ってマジで言ってるのか……?」
「人格も特に問題は無し、戦闘力も充分。何よりもその異常なまでの精神力が欲しいのさ」
「精神力が?なんで?」
「それだけの精神力があれば"邪神"にも……」
「邪神……?」
思えば前に図書館で調べた時にアルテミシアは昔から邪神と小競り合いなんかをしてたとか書いてあった気がする。
ーーーつまり、勇者と魔王はそれぞれの陣営のキング。使徒と他の魔族は単なる駒だと……。
確か勇者の他に聖女、賢者、剣神等の特殊な味方が居た筈だ。それは魔族の幹部も同じような役割を持つ者もいるはず。
「……俺だけじゃ無くてアイツ等も巻き込まれたって事か……」
「ん?あぁ、でも特殊な役割の者には催眠は効かないからねぇ」
「効かないから特殊なんだろ?」
「ははは!確かにそうだ!……それより良いのかい?アルテミシア様がすぐそこまで来ているよ?」
グラーグにそう言われ前に意識を向けると後数歩という所にまで迫って来ていた。
「ぐっ、こぉんの!」
どれだけ力を入れようとしてもピクリとも動かない体にイラつきながら現状の解決法を考える。
どうする?このままじゃ操られて特攻に使われるのがオチだ。自分には老死という目標がある。それでなくても自分で選んでその結果死んだのならまだ納得できる、だけど操られて死んだら悔いしか残らない!。
「ーーーおっ?やっと来れたか」
「まさか本当に開くとは思わなかったわ」
「確かに、呆れるほど図太いね彼」
後ろから若い男女の声が聞こえると共に光の弾が通りすぎアルテミシアに向かう。アルテミシアは下がりながらそれを迎撃している。
「貴方、大丈夫?」
「え?あ、あぁ……」
「体は動く?精神は飲まれて無いか?」
「体は動く、精神は元々そんなに影響は無いけど……」
「あははは!マジかよ、とんでもねぇなお前の後輩」
「はぁ……、この子の記憶を見る限りあんたの後輩も似たような物よ」
「あー……、転移か~俺覚えられなかったんだよなぁ」
「えっと、助けてくれてありがとう。……それであんたらは?」
「あぁ、俺達は……。アルテミシアがそろそろ来そうだからまた次回な」
「え!?ちょっ、せめて姿と名前ーーー」
「ーーーえを!?」
「むぐ!?」
「え?」
目を開けると相変わらず柔らかいベッドに窓からは暖かな日差し、そしてどうやらつい後ろの二人を掴もうとしたのか俺の左手が見覚えのある女の子の顔を鷲掴み。
「ヒ、ヒルダ……?」
「……なぁに?」
「おぉう……」
その後のヒルダは鬼神を彷彿とさせる程の形相で俺に拳を握り、振りかぶった。
腹部に強烈な衝撃が伝わり再び意識が沈むと共に見えた光景は、怒っていながらに何処か安心した様なヒルダとヒルダ一家・ルル・アインさん、それと知らない女性が一人。しかし何故かヒルダとジーク以外は浮かない顔だった。
それよりも……。
「ーー起きた瞬間腹を殴られるなんて……」
そこまで言って意識が途絶えた。
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