24話 異世界の入り方
「コウタさんってどうやってこの世界に来たんですか?」
「お?そんな事を聞くために来たのか」
「優実がフェイ達に会いに来たついでにですよ」
「だろうな」
コウタさんは優実を見ながら笑いながら言った。
「トイレ」
「あ、トイレですか、じゃあここで待ってますね」
「いや、そうじゃなくてトイレから出たら来てた」
「……は?」
「忘れもしないあの出来事……お前らはどんな風に?」
「え、えっと……学校の帰りの途中で」
「うわぁ~いいなー」
なんだこの会話……、チートな能力を羨ましがられるならまだしも転移の仕方で羨ましがられても困る………。
「はぁ…そんなもんですかね?」
「イヤイヤ玄関のドアとトイレのドア、来るのらどっちがいい?」
「……玄関」
「つまりそういう事だよ」
「う…う~ん?」
あれ?なんか納得しかけちゃった、危ない危ない……。
「それにしても実地訓練って何すんだろうな」
「確かヘリックさんとミミルさんを同じチームにしてそこに俺達が護衛をするって形になるらしいです」
「すげぇーVIP待遇……、ヘリックが嫌がりそうな対応だ」
「確かに嫌そうな顔で説明を受けてましたよ」
「そうよねぇ~、私だって嫌だもの王族だってだけでそこまでの対応をされるの」
「うわっユミが喋った!」
「私だって喋りますから」
「そりゃそうか……、あ~そろそろ止めてやれフェイが鬱陶しそうだ」
コウタさんが言って気付いたが、かれこれ30分位ずっと撫でたり肉球を触ったりしている。そのせいかフェイ達もどうにでもなれと言わんばかりに身体を投げ出している。
「うーん触りすぎたかな?」
「触りすぎだよ」
「ごめんねぇ~フェイぃー」
謝りながら撫で続ける優実に呆れながらコウタさんがふと思い出したかの様に言う。
「こういうクラスで森に入るとかフラグっぽいよな」
「なんのですか?」
「そりゃお前、あれだよ魔族襲撃フラグだよ」
「あー……一応緊急用の道具は用意しときますよ」
「へーどんなの?」
「ふふふコウタさん」
「?なんだよユミ」
優実は片方の目を閉じ人差し指を唇に当て少し前屈みで言った。
「ひ・み・つ」
「……チッ」
「ちょっ……舌打ちはいくらなんでも無いでしょ!」
「いくら美少女でもリアルでやられたらムカつくわ」
「えーじゃあどうしたらいいんですかぁー」
「普通にヒミツって言った方が好感度上がった」
「コウタさんの好感度上げてもなぁ~、なんかくれるんですか?」
「ユミに渡す位だったらタクトに渡す」
「あっ……そっち系……」
「ちげーよ!」
コウタさんが優実に振り回され最終的には『もう帰る!』と涙目になりながら走っていった。それを見て優実は笑いミスティは優実の事をちょっと引いていた。
「あー楽しかった」
「あまりコウタさんを苛めるなよ」
「大丈夫、大丈夫あの人は」
「その自信はなんなんだ」
「なん……となく?」
「なんじゃそりぁ」
「なんとなく落ち着くんだよね、この人は絶対に味方だって感じがする」
「………確かにそれは俺も感じる」
「へ~お二人は勇者だからそう感じるんでしょうか?」
「んーどうなんだろう?ねぇタク?」
「俺に聞かれてもなぁ、多分同じ世界の出身だからとかじゃないか?」
「ま、そんなもんか」
「そういう物なんですねぇ」
「これが答えって訳じゃ…もういいか」
「あれが今回の勇者か」
「ええ、しかもーーー」
「二人か……」
「初めての事らしいわよ」
「だろうな、そんな勇者が何人も同時に来てたまるか」
「ふふ……そうね」
「一人でさえ厄介なのに二人か………。準備はいいか?」
「出来てるわ、いつ仕掛ける?」
「奴等は学園の訓練関連やらで森に入るらしい、仕掛けるならそこだ」
「簡単じゃないわよ、相手は勇者なんだから」
「わかっている、だがまだ私達でも対処できる範囲だ」
「使徒は来るかしら」
「来るだろう、来なかった事が無い」
「……そうね」
前回の勇者が死に数年、新たな勇者が召喚され争いが起きる。こんな事を何十年も続けている、でも今回は二人も勇者がいる……。何かが変わるかもしれない、それがいい方なのか悪い方なのか……。しかし確実に今回の争いで何かが変わる、それは間違いないだろう。そんな事を考えながら二人の魔族はその場を後にする。
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