23話 脛は痛い

ぼこぼこにされた、腹を蹴られ足の小指を踏まれた。しかも剣術も俺より数段上ときた。


「だぁ~、やっぱり勇者は強いなぁ……一年近くの差があるのにまるで歯が立たない、てか使う手がえげつないんだけど」

「勇者様なんだから当たり前でしょ?、はい飲み物」

「勇者だからえげつない事も大丈夫って全然納得出来ないんだが……。 まぁいいや、あんがとミミル」

「それじゃあヘリックさん自分達はもう休みますね」

「うん、じゃあ三日後の訓練の時はお願いね」

「わかりました、ほら優実、行くよ」

「あー、もうちょっとだけもふらせーーー」

………タクトがユミを転移して無理矢理連れていった。

「あはは……、それでは皆様私達も失礼致しました」

「ええ」

「あ、はい…また三日後」

「?なぁ、三日後ってなんかあんの?」

「コウタ、あなた学園で先生の話を聞いてた?」

「お~………」

「聞いてなかったのね………はぁ、三日後に実地

訓練があるのよ、それで勇者様達が特別に呼ばれる事になったの」

「実地訓練?何処で」

「近くの森よ、いつもコウタが行ってる」

「そこかぁー、フェイ達も連れていっていい?久しぶりに森で遊ばせたいんだけど」

「ん~……ヘリック様どうですかね」

「大丈夫だと思うよ、むしろみんな見たがるんじゃないかな」

「確かに」

「それは良かった………うし!じゃあ俺も帰るかな、疲れた」

「そうだね、今日はこれでお開きにしようか」

「う~い、二人共おつかれぇ~……」

「お疲れ」

「まったくだらしない……またね」


タクト達は明日なにすんのかな、次に会ったらボコボコにされた怨みに愚痴ってやろ。






「ちょ!もうちょっと触りたかったのに」

「また今度コウタさんに会ったら頼めばいいだろ」

「コウタさんかぁ~、あの人変わってるよね」

「優実も大概……何でもない」

「だってこっちに来て一年で王族、神狼とか何かよくわかんない人達と知り合ってるんだよ? 勇者でも無いのに」

「まぁ、確かに……でもそういうのって異世界物だとよくある光景だし」

「そうなの?よくわかんないけど」

「だと思うよ」

「ふーん……まぁいいや、明日コウタさんを探して話ついでにフェイちゃん達を触りに行こう」

「え、明日?」

「うん、明日」

「ーーーただいま戻りました~!」


あ、ミスティ達が帰って来たみたいだ。

結局明日はコウタさんを探しに行く事になった、まぁ俺もあの人と色々話したいとは思ってたから良いかな。


次の日、コウタさんを探す為に街に出て大通りで店を開いてる人やらに聞いてみたら。


「へ?コウタなら多分あそこにいると思いますよ」


他の人に聞いても同じような答えだった、てかなんで皆コウタさんの事を知ってるんだ?


「なんでって……そりぁ、デッカイ狼を連れて散歩してる奴なんてコウタかその妹さん位ですからねぇ」


との事らしい。……まぁそっかこっちの世界でも珍しいよな………。

お店の人の言った場所に行ってみると広場に出た、そこには子供達に囲まれているコウタさんとフェイ達がいた。

フェイ達は子供達に撫でられたり追いかけっこをしたりしてほのぼのとした光景、コウタは脛を蹴られていた………。


「くらえー!魔王め!」

「イタッ!……ヌハハハ!効かんぞ!」


涙目で言われても反応に困るが子供達は気付いていない様子。すると一人が攻撃が効かないと聞いて言った。


「むぅ……こうなったらみんなの力を合わせて蹴ろう!」

「え?」

「おぉ!」

「えぇ!?」

『くらぇーーーー!』

「ハァァァァァ!ッハァ!………イッタイ」

『やったー倒したぞー!』


うわぁ……子供達に一斉に脛の同じ所を蹴られ脛を抱えながらピクリともしない。耳を澄ませると「すぅー……はぁー……いってぇ………」とか聞こえる、それを見て心配になったのかフェイ達が傍に寄って労るように顔を舐めたり脛を押さえている手を舐めたりしてコウタさんが涙を流しながら「……ありがとう」とか言っていた。

ーーーなんだこれ………。



「いやー、フェイ達と散歩してたら子供達が群がって来てねそのまま遊んであげたわけさ」

「勇者ごっこですか」

「うん、あいつら脛の方が痛いからってそこばっか蹴ってきやがる……」

「それは………」


観ててすっごい痛そうだったのはわかる。すると横で話を聞いていたミスティがコウタさんの脛に回復魔法を掛ける。


「あははは……魔法掛けときますね?」

「あぁ、ありがとう……聖女に脛を回復されるって……」

「ーーーしかも子供に蹴られて」

「うっせーぞユミ!」

「あーコウタさんがコワイコワイ、フェイぃ~傷ついた心を癒してぇー」

「………はぁ、で何の話?」


あっ、忘れてた………。

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