第23話
当然のように真専用のコテージは施錠されている。だがジョーのピッキング技術をもってすればこの時代の鍵など一瞬で解錠できる。服の間に挟んでいたピンを起用に折り曲げてガジャガジャと数秒弄るともうフリーパスだ。簡単に忍び込んだジョーはこっそりと寝息を立てる真に近寄ってバケツの中にたっぷり蓄えられた水を、頭からぶっかけた!
突然の事態にバチンと切れた輪ゴムのように飛び上がった真はまだしょぼくれた目を必死に開けようとするが水が後から後から額を垂れて落ちて来るので目を開けられない。
「うえ何だこりゃ?くせぇ、とんでもない、汚水だな???誰だこらああぁ!ぶっ殺すからまっとけや!」
立ち上がって大暴れる真を大笑いしながらジョーは胸を衝いてベッドに突き倒した。
「ほらこれやるよ、タオル。けけけ、いい面だ。随分イケメンだな」
「ぐおらぁこのクソ野郎!もう勘弁できない!殺してやる。ほら抜けよ。ナイフでも何でも抜いてみろ!」
両手でドウドウと何とか怒りを抑えてジョーは真顔に戻って悪びれもせずこう言った。
「大体お前が起きようとするのを待っていたらどれだけの労力を俺が支払わなきゃならないんだよ。これなら1発、寝起きもぐずらない。どんだけ効率的だよ?!」
その自分勝手とんでも理論に真は閉口するしかなかった。そんな彼に悪びれも無く
「大丈夫だ。クソはないように持ってきたから」
とぬけぬけとぬかした。真は臭いがこびり付いた髪ごと引き抜かんばかりの勢いでゴシゴシと力強くふき取るときれ気味で用事を尋ねる。
「ん、そのことなんだけどなこいつを見てくれや」
ゴソゴソとポケットをまさぐってツルツルした黒い掌大の板を取り出す。しげしげと眺める真にジョーは投げ渡す。手に取ってみてもやはり今まで出会ったことが無い物体だった。真は顔を上げるとこれが何だ?と尋ねる。
「魔法の板だよ。俺はよ、実は今まで隠してたんだが魔法を使えるんだよ。貸してみろ」
ジョーの手に触れた瞬間その板は急にまばゆい光を放つ。だが、反対側の手をかざした途端、シュッと一瞬で消えた。この目の前で起きているあり得ない光景に真は動揺を隠せない。何が何を起こしているのか全く理解の範疇を超えた。
「そ、それ、一体どうやってるんだ??」
ジョーはその板を爪先で一回転させてから再び手をかざす。退けたときにはもう光が再び灯っている。知らない人間が見たらこれを魔法以外に説明する方法を思いつかないはずだ。
「もう1回やってくれ。・・・・・・魔法のはずがない、だろ?」
それには答えず三度今度は指を左右に3回振って光を消した。だが、そこでようやく真は気が付く。反対側の手は完全にただのフェイクだ。板本体を押さえているように見えるその手が僅かだが微動している。恐らくそこに種がある。
「へへへ、分かったぜ!そっち側の手だろ?そこで何かを捜査しているから光が点いたり消えたりするんだな?」
「お見事、その通りだ。その反応からするとやっぱりこれを見たことねーみたいだな」
そう言って再び真に手渡す。受け取った真が確認すると側面に押し込める突起が付いている。なるほどここを押せばこうやって光が点くのか。
「俺が向うの世界から持ってきた数少ない道具の1つだ。便利だろ?タブレットっていうんだけどよ」
「タブレット?」
「あぁ、例えばこうするとな、ほら」
指をスライドするとお馴染みのパスコード画面が現れる。数字を4つ打ち込むと今度は大きく画面がホーム画面へと変わった。ホーム画面はその人間の個性をそのまま反映するが、まさにこの画面はジョーそのものだ。無駄なアイコンが一切ない。その上総てのアイコンはカテゴリーで分類されている。その1つをタップするとカメラが起動される。それで真の顔をパシャっと一1枚。そしてそのまま写真を真に見せる。
「これは、俺?はぁ?!嘘だろ・・・・・・お前、ホントに魔法使いだったのか??」
ズコっとジョーはずっこける。これだけ目の前で見せておいてその結論はねーだろ?
「違う。目の前で見ただろ。凄いのは俺じゃなくて、この機械。こんなのすぐに使えるようになる。今からこれの使い方を教えてやるから見てろ」
「ここがスイッチ、つまり使うときはここを押せばいい。次に出てくるのは暗号画面だ。さっきの数字を打ち込め。で次、ここがカメラだ。さっきみたいに写真が撮れる。見ただろ。ようは凄い絵だ。ここからが重要なんだけど、よく聞け。ここの95っていう数字があるだろ?今94になった。これが0になればタブレットは使えなくなる。だから、暫くこいつを預けるけど、使うときをよく考えろ。そして最後にこれ。さっきのとは違って動画ってやつを撮れる。だけど使うな。早くこの数字が無くなる。ただ、俺がもう撮っておいた動画が残ってる。これをいざという時に使え。多分必要になると思う」
自分の理解を超えた物を渡されていささか困惑しているが、それでも凄いものが手に入ったと目を輝かせる辺りが男の子だ。真は何度も頷くとジョーは出ていこうとする。他の話も聞きたくて引き留めようとするが頑として聞き入れずとっとと出て行った。はーっと完全に眠気を覚まされて寝れなくなった真が枕の上に頭を置いた。そして同時真がいなくなった理由に気が付く
「くせーなおい・・・・・・・・」
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