第37話
37話
「白崎さん……ここって……」
「はいっ!カラオケですっ!」
そう、僕らは今なぜかカラオケボックスの前にいた。
「……二人で?」
「はいっ!」
やべえ。どうしようっ!歌なんてあんまり歌わないし聞かないから、歌うどころか歌う歌すらもないんだけど……
「……あの、士郎……ダメですか?」
んなっ!そんな目をうるうるさせて上目遣いなんて…
「歌いましょうっ!今日はなにを歌おうかなー!!」
そんなの断れるわけないだろっ!!
そして誘導されるかのように僕の足はカラオケボックスへと歩みだした。
店にはいって右側に受付カウンター。左側にはなぜか卓球台があるのだが、人がいない。そして裏にも人がいる気配すらしない。
「………あれ?やってないのか?」
「じゃ、卓球でもしましょー!」
「まあ、卓球台と玉とラケットはあるしできるけど……やっていいものなのかな?」
「いいんですよー!やりましょー!」
まあ、いいとは全くもってなにも書いていないのだが、白崎さんが言うんだ。それで合っている。きっとそうなんだ。
「じゃ、行くよ」
そんなこんなで卓球開始。カラオケをしなくて済んだのはいいが、こういう時って手加減したほうがいいのか迷うんだよな……
なんて思いながらサーブを上げる。
スパーンッ!!
………え?
一瞬なにが起きたかわからなかったが、僕の真後ろでピンポンがリズミカルに跳ねているのでまあ、白崎さんが得点したんだろう。
って、えええ!!!
「マジ……かよ…」
「士郎……本気で来てください?じゃないと……怪我。しますよ?」
と、いつも通り笑顔でそんなことを言ってきた。
「ははは。面白いこと言うね。返り討ちにしてやるっ!!」
これでもう、プッツンだ。本気でやってやるっ!!
もう寒くなってきたというのに汗が……滴る。白崎さんの汗が……胸元にダイブしていくぅ。
ふぁ……なんとありがたい……
バチーンッ!!
白崎さんのスマッシュボールが僕の顔面に直撃。
「……いっててて」
「だ、大丈夫ですか!?ごめんなさいっ!」
僕の眉間をぶち抜いてくれた白崎さんに介抱される僕。なんと情けない。
「ああ。僕が現を抜かしたばっかりに……」
やべえ。頭が暑さとさっきの痛みでクラクラする。
「…え?なんですか?って、キャ!」
ん?白崎さんの悲鳴が聞こえた気がするんだが、この柔らかい感触……
「ちょ、いや、そこは……はんっ!!」
「………え?し、しかりん…」
僕の上に被さるように白崎さんがいた。そして、なぜか僕の手が白崎さんの大きく実ったあれをモミモミしていた。
「あ、え、えっと……ごめん」
とりあえず謝る。
「……え、ええっと……変態?」
「それは………訊いてるの?」
「い、いえっ!怒っているのです……か?でも、これは私がバランスを崩してしまったせいでもあるから謝らないといけないですよね?でも、急に触られて嫌だったわけだし、怒らないといけないんだと思うんですが。あ、でも士郎に触られたのが嫌というわけではなくてでも、嫌だった。から、嫌なこともなくて………ん?なに?」
「わ、わかったから……ね?だから、とりあえず落ち着いて。深呼吸」
「すぅーはぁ……」
うわぁ。凄い!深呼吸で胸ってこんなに動くんだぁ。
「落ち着いた?」
「はいっ!でも、士郎。鼻血出てますよ?」
「………なん……だと?」
鼻の下に人差し指をつけてみる。
「うわっ!本当だ」
「はいっ!ティッシュ」
と、ポケットティッシュを渡してくれる白崎さん。
「ありがとう……そして、ごめん……」
こんなに優しくて可愛い彼女に僕はなんてことを……リア充になったからって変態的なことをしていいってわけではないんだ。
「もういいよー!私もごめんなさい。これでこの話はおしまいっ!」
「あ、ありがとう」
「どういたしましてっ!」
「しかりん。ここで卓球をやってたのはいいんだけど、カラオケは人いないっぽいし今度ってことでいい?」
「あー。それもそうですねっ!」
「じゃ、今日は遅いですし帰りましょうか。しかりん」
「そうですねっ!じゃ、帰りましょうか」
そんなこともあり、僕はカラオケで歌を歌わずに済んだわけだが、カラオケボックスに入ったのに、卓球をやって帰る。というよくわからない状況であった。
「おい!イモムシ」
家に帰るとイモムシとか言って誰かを呼んでいる人がいた。
「おいおい!イモムシ」
井上先輩。なにが楽しいんだろうね。幼虫を呼びまくるなんていかれちゃったのかな?
「おい!イモムシって言ったらお前しかいないだろっ!!」
と、僕に目線を向けている。
まさかね?
「しかりん。今日は楽しかった?」
「はいっ!すっごく楽しかったですっ!」
「そっか。それはよかったっ!」
「………それに、士郎のかっこいいところ見れたし……」
「え?なんて?」
「い、いや、なんでもないっ!」
「おいおいおいおいおーい!!!帰ってきて早々なにキャッキャウフフしてるの?私の目の前でそんなに見せつけるようにっ!」
いつもよりなぜか不機嫌だ。
「はぁ。全くなんですか?先輩。井上先輩だって島崎先輩と付き合ってるじゃないですか」
「だ、だって。あいつ。ウッシーがぁ……遊んでって言ってるのにい……全然遊んでくれなくてぇぇ…」
め、めんどくせえ。というか、こんな人だっけか?顔が赤いし……ま、まさか!?
先輩の近くに寄り、まさかだとは思うが………
「酒くさっ!!」
「お酒?お酒なんて飲んでないって……ヒック」
「完全に酔ってるじゃないですか。まだ未成年なのに僕らがいない間に、なにしてたんですか?」
「え?お姉ちゃんが置いて帰って行ったから、お土産かなぁって思って飲んでみたのっ!」
「そんな目を輝かせながら言われても……」
「えへっ!いいでしょー」
「えへっ!じゃねえよっ!何にもいいことなんてねえよっ!未成年なのに呑むんじゃないっ!犯罪ですからねっ!!」
で、この人はなにを呑んだんだ?
と、気になり分別箱を確認する。缶がひとつ捨てられていた。こういう時でもしっかり分別はするんだよなあ。
梅酒か……で、これの度数は…10程度……ってこれで酔うとか弱いなおいっ!!
「あ、士郎!私はちょっとお風呂に入ってきますねっ!」
「あ、うん」
唐突だったが、白崎さんはお風呂に行ってしまった。
「あ、おかえりイモムシ」
「全くもって嬉しくねえ」
「ねぇ、島崎は私のこと好きなのかな?」
「え?なんでですか?」
「だって、デートは全然してくれないし、きききキス……だってまだなんだよ?おかしいよね。私もう18になるのにキスしたことないの……同級生のみんなは「9歳でキスしたよっ!」とか言ってるのにい……なんでなんでなんで!?」
と、地面をゴロゴロと転がりバタバタと子供のように暴れまわる。
「じゃ、先輩。その勢いで島崎先輩にアタックしてみてください」
「………え?」
「ちょうどいいじゃないですか。酔っ払ってるんですもん。ちょっとくらい酒の力を借りるのも悪くないんじゃないですか?おまわりさんも許してくれますよ」
「そ、そっか。じゃ、ウッシーに突撃じゃぁぁ!!!」
と、決心したのかそう叫んで井上先輩は家からすごい勢いで出て行った。
休みだというのにすげえ疲れた……
……でも退屈はしないよな。
お茶をすすりながら僕はあの居間の自分の場所に座りなんとも平凡な時を過ごしていた。
そういえば、白崎さんお風呂遅いなぁ。あの壁の向こうで白崎さんがお風呂に入っている……
「士郎!大変っ!!」
白崎さんはビジャビジャでそして、なにも着ていないのに僕のいる居間に来た。
「こっちも大変っ!!」
目をどこにむけてればいいかわかんねえっ!!とりあえず見えないように手で隠す。
「げ、ゲジゲジ!!無理っ!」
「ゲジゲジ?」
「と、とにかく来てっ!」
「うん。わかったから、とりあえずなにか羽織って貰える?」
「……え?」
と、自分の姿を確認する白崎さん。
「みみ、見ました?」
「………え?あ、見てない見てないっ!誓います!絶対に見てないですっ!はい。これタオルです」
と、近くにあったタオルを差し出す。
「あ、ありがとう」
なんか、井上先輩いないとなんか、纏まらないな……
「あ、しかりんは脱衣室で待ってて。しっかり服着て。濡れてる状態でいないでね?風邪ひいちゃうから」
「あ、うん。わかった」
こんなにもこの壁は薄いのか……ゲジゲジ一匹で入れるとは…なんか負けた感が……
……一通り見てみたがそれらしいものはいなかった。
「……ゲジゲジなんて居ませんよ?」
「ギャァァァァァ!!」
呼びかけると同時くらいのタイミングで白崎さんの悲鳴がドア越しに聞こえた。
「白崎さんっ!大丈夫!?」
「………い、いや……あっち行ってっ!無理無理っ!」
と、何故か洗濯カゴを見て無理無理言ってる。
「どうしたんですか?」
「い、いや……嫌だ……」
ダメだ。話が通じないや。
白崎さんは部屋の隅に行って完全に耳を塞ぎ閉鎖してしまった。
多分、奴がいるんだろう。恐る恐る洗濯カゴの中を見ると……
ゲッジーだぞっ!てへっ!
………奴は白崎さんの着ていたと思われるしましまパンティーの上にいた。
……どうやって対処すればいいんだ?
でも、白崎さんの使用済みパン……これ以上は考えるな。士郎っ!これじゃただの変態じゃねえかっ!!!!
冷静になるんだ。ふぅ。
とりあえず、対処法だ。そうだな………害虫の代表でもあるG先輩でも殺れる秘技。新聞紙丸めてぶっ叩けは死ぬ。これでいこう。
ならば、新聞紙準備オッケー!
だけど…どうするか。
これじゃ白崎さんの使用済みのパンツが犠牲になってしまうぅぅ!!
それはどうしても避けたい。が、白崎さんは相変わらず部屋の隅っこで固まっている。
ダメだダメだ。天下の秘技だとしてもダメだ。
じゃ、どうするか……殺虫剤を使うにしても同じようなことだし……とりあえず場所を変えさせるか。じゃ、ピンセットでこのうじゃうじゃした足を……うぇ…考えただけでも吐き気がするが白崎さんの為だ。やるしかないっ!
というか、僕もピンセットを取りに行ったりしたりしているのになんでその場所から動かないの?どんだけ好きなんだよっ!!白崎さんの使用済みがぁぁ!!!
これは彼氏としても許せねえ……
殺ってやるっ!!
持ってきたピンセットでやつのうじゃうじゃしている足を一本掴む。
「うわぁ!!!」
こ、こいつ。自分の足を切り離して逃げやがったっ!!こいつ……なかなかやるぞ
だが、なぜかまだパンツの上にいる。畜生……おまえ白崎さんのパンツの上にいやがって……羨ましいじゃねえかっ!!
今度は胴体をピンセットで持ち上げ、速攻だ。袋にいれてそのままポイだ。よし、決めたら実行っ!!
………よし、ふぅ……やるっ!!
ピンセットでやつの胴体を掴むもうととすると、やつはスルリとピンセットを交わし白崎さんのいる隅っこに一目散に行ってしまった。
というか、どんだけ白崎さんが好きなんだ。やめてくれよ…
「しかりんっ!まずいっ!」
慌てて声を出してみたが、目が虚ろになっている白崎さんに僕の声は届いていないようだ。
「…………ギャァァァァァ!!」
パンッ!!!!
少しの間があったが、やつに焦点が合うと、白崎さんは絶叫しながら、白崎さんの横にあった先ほど使おうかと考えていた新聞紙を丸めたものを使って、ゲジゲジを一発で仕留めた。
「おお!しかりんすげえ……」
「……いやぁぁぁ!!!!」
そしてその潰れてしまった可哀想なゲッジーを見て白崎さんは絶句して……
ドンッ!!!!
「いってて……しかりん大丈夫?」
「あ、あぁ。うん。ごめん……」
僕に覆いかぶさるように白崎さんがいる。
柔らかい感触が心臓で感じれる。
というか、いいのか?僕がこんなに幸せで……白崎さんのお風呂上がりでバスタオル一枚の白崎さんに乗られてるなんて……
そして、白崎さんは僕の上からそっと退くと、扉を開けて何事もなかったかのようにこの部屋から出て行ってしまった。
それから僕は先ほどの胸の感触が忘れられずにひたすら寝そべっていた。
…僕の上には白崎さんが……
あの白崎さんのお風呂上がりで火照った体…顔赤くて息遣いも荒くて……なんか、すごくよかった。
ダメだ。堪えろ僕っ!そうだ。今回はゲジゲジの退治に来たんだろう?なら、さっさと片付けようではないか。
そして、先ほどの現場である。これは……モザイクかけてもらえないと……直視というか視界にすら入れたくないやつだ。
即、ピンセットでつまみ上げて袋に入れる。さっき切り落とした足も忘れずに袋に入れる。
「ふう。片付け完了だ」
居間に戻ると白崎さんがまだバスタオル姿で横になっていた。
「……え?しかりん」
「……はぁはぁ」
「だ、大丈夫!?」
赤い顔に高い体温に息遣いが荒い。ん?これって……
「ちょっとしかりんごめん」
と、手を伸ばし自分のおでこと白崎さんのおでこを触り熱を測ると……
これは………
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