七 起業
彩智(さち)は、実家に戻ると、かつて熱望していた起業の夢がわき出してきた。
大学の卒業論文では、女性経営者と彼女達が創業したITベンチャーを研究した。
なぜ、彼女達は成功したのか?
「MBAホルダーだからですか?」
「相原君、MBAだからと結論づけるのは短絡的だよ。
もっと論理的に、多段階的に考えてみよう」
「米国のビジネススクールですよねぇ。
やっぱり頭がいいというか、成績優秀だったのですよねぇ」
「残念だけど、ウチの平均的な学生よりは勉強熱心と認めざるをえないね。
じゃあ、見方を変えよう。
なぜ起業したのだろう?
就職という選択肢もあったはずだ」
「よく聞きますね。
米国では優秀な学生は起業するって」
「どうしてだと思う?」
「儲かるから?」
「動機として大切なことだね。それから?」
「皆が起業するから自分も起業したくなる?」
「起業って、友だちがやるから自分もやるって程、気軽にできることかな?」
「気になりますよね。
周囲に起業する人が沢山いると。
いえ、対抗心かな?
起業がクールで、ライバルより成功すれば、もっと格好いい」
「クラスメートの多くが起業するから自分の起業を考える。
そんなに周囲に影響されるかどうかの検討は後回しにして、初めから起業を考えている人はどういう人かな?」
「起業する目的でビジネススクールに進学したとか」
「では、ビジネススクールって何のための大学院かな?」
「経営を学ぶため?」
「何のために経営を学ぶ?」
「経営者になるため?」
「そう。経営者って何?」
「社長とかCEOのことですよね?」
「それだけかな?」
「……」
「経営陣ということばがあるよね。
経営幹部ともいう。
彼らはどういう役職かな?」
「取締役とか、執行役員とか……」
「そう。そういう立場の人達が経営者だ。
COOやCEOはそのリーダーだ」
今思い出すと、自分の幼稚さに恥ずかしくなる。
MBAホルダーの彼女達でも、会社設立時の事業で成功したとは限らないことを知った。
卒論は百十三ページの大作で、テーマは、日本におけるIT企業の成長戦略と女性経営者のポジショニング。
IT業界を代表する三社の比較と女性経営者がどのような立ち位置でリーダーシップを発揮するか、それは彩智がそうなるための指南書という意味も込めて書き上げた。
選んだ三者は、既に国内トップのショッピングモールを運営会社、楽座、この楽座の後発ショッピングモールで創業し、後にモバイル・ゲームで業界最大手に君臨する会社、モーグ、インターネット・プロモーションで業界最大手、ネットデイ、だ。
後の二社は女性経営者である。
この二人に限らず、女性経営者の講演会があれば、できるだけ聴講した。
三社の研究から、柔軟な経営姿勢と人的ネットワークが成功の鍵であると結論づけた。
彩智の熱意が込められた卒論はオリジナリティに溢れ、指導教官の手直しを受けつつもA評価がついた。
指導教官から受けた助言の中で忘れられないことばがある。
「この人達はITバブルの波に乗ったけど、バブルがはじけてからものすごい勢いで成長している。
君が挙げた経営者は、チャンスを作り出す知恵を備えていたといえる。
その知恵は情報収集力だし、情報咀嚼力だ。
情報収集力はITリテラシーよりも人脈、人間力が大切だ」
懐かしい卒業論文を引っ張り出しながら、創業情報を調べた。
今日日、インターネットに溢れている。
ほとんどは、創業支援する行政書士や司法書士、税理士のウェブサイトだが、公的支援機関のサイトが一番有益だと思った。
図書館や書店で創業関係の本を斜め読みした。
残念ながら彩智が欲しているIT企業の設立ノウハウは見当たらなかった。
創業本の内容は、創業の手順を事細かに書いてあるが、肝心の商売については触れてない。
カフェを開業しよう、居酒屋を始めようとった業種・業態に特化した書籍もあるが、IT企業を開業しようという本はない。
Webデザイナーの独立開業がIT業について書かれた唯一の本だ。
ネットで検索すれば中小企業庁が公開している創業の手引書が見つかる。
彩智にとっては創業の手順はこれで十分だ。
図書館で参考に借りるべき本はあるが、手元にずっと置くような書店で買うほどの創業関係の書籍はない。
問題は、何をするIT企業を作るかだ。
創業相談に行けばヒントがもらえるかしら。
ネットで創業相談先を調べると、そのリストは果てしなく続く。
一番目立つのが、ドリーム・ウェイだ。
会う前にメールで相談できるらしい。
一回目は無料だが、二度目以降は相談員次第らしい。会うことを前提に、近くに事務所のある最も人気の相談員にメールを送ってみた。
IT系、特にSNSのような分野で創業を考えていますが、創業に向けてどのように事業を考えればいいのでしょうか?
こんな内容のメール本文を考えては打ち、削除してはまた打ち直し、その繰り返しで、これなら分かってもらえると自信ある質問文を作るのに一時間かかった。
翌々日、丁寧な回答が返ってきた。
でも、相談する相手を間違えた。
行政書士の彼は、雇うなり外注するなり技術者の費用を初めとする資金調達を意識して事業計画を考えること、法人で事業を始めた方がいいので会社設立をすること、事業計画や会社設立は前面的に手伝います、というのが要旨だ。
残念ながら彩智が欲している事業分野のアドバイスはない。
次に、県の外郭団体が運営している創業相談に出かけた。
ここは創業支援の専門家が毎日相談に乗ってくれるとの触れ込みである。
どんなところか様子を見るだけのつもりだった。
名古屋駅前という好立地に建てられた県の施設の中にある。
エレベータを下りるとロビーのようなエリアがあり、様々な掲示物とともに各種リーフレットが置いてあった。
リーフレットを手にしている彩智を見つけた職員が、創業のご予定ですかと尋ねてきたので、いずれはと答えた。
せっかくなので専門家に相談してみてくださいと誘ってくる。
今日は見学に来ただけなのでと辞退しても、誘ってくる。
そんな押し問答に彩智が折れて相談室に案内された。
しばらくすると、四十路くらいの女性相談員が現れた。
高そうなスーツを着ていてプラチナの指輪を幾つもはめている。
その一つはかすかな透明感がある緑色の石がはめられている。
ヘアーエクステンションと思うが、ボリューム感のあるヘアスタイルと相まって、一見、良家の専業主婦か、講演会で登壇する成功した女性経営者の印象を与えるが、それを意識している、いや意識しすぎている人と感じた。
お互いの自己紹介が済んだところで、笑みを絶やさず相づちを打ちながら、彩智の話を一通り聞いて相談員が口を開いた。
「私は商業系が専門の中小企業診断士だけど、私の事務所にはいろんな業種の女性経営者が集まってくるの。
そして、その人達と提携しながら、どんな仕事も受け入れる体制ができているの。
ホームページということだったら、私の事務所にいらっしゃい。
Webデザイナーの経営者もいるから」
「私が目指しているところは、『楽座』のようなベンチャーなんです」
「なるほど。で、あなた自身はIT技術者ではないのよね。
だったら、技術者をはじめとする人的ネットワークが必要ね。
人の繫がりよ。
これが最初にやるべきことよ」
「はい?」
「『楽座』がやっているショッピングモールは、日本で最初ではありません。
確か、大手が先に手がけていました。
結局、失敗して、撤退したのですけど。
で、『楽座』が伸びているのは、店子をうまく獲得できたからなの。
それは人的ネットワークが優れていたからよ」
卒論で『楽座』を調べ上げた彩智だから明言できる。
彼女の話は幾つかの雑誌の記事をつなぎ合わせたものだ。憶測もある。
「ところで私、地元で起業のチャンスを摑もうと思うのですが、この考え間違っているでしょうか?」
「東京の方がチャンスが摑みやすいと思うわ。
石を投げれば必要な人に当たるくらい、人材がいるから。
でもね、私のような女性の経営者グループって県内に幾つもあります。
そういうところに加わって、その人脈の中で仕事を融通し合うという働き方、結構広まっているわ」
何か違う。この人に相談しても埒(らち)があかない。
「ところで、ここの相談員にはITの専門家はいるのですか」
「多分、Webデザインまでカバーしているのは私だけね。
ここの相談員は許認可の手続きなら行政書士の先生、税務なら税理士の先生、中小企業診断士の先生方に情報系の専門はいらっしゃらないわ。
IT系に近いのは私かもしれない。
もっとも、IT技術者が創業しようとすると、ここでなくITインキュベーションセンターの方へ行かれるようですけど」
お礼を言って退席した彩智は相談室を出るなり、人がいない廊下の壁を優しく蹴った。
「相談になってないじゃないの!」
他の相談員も当てにならないなら、ここに来る理由はない。
普通電車が停まる駅で下車して少し歩く、ITインキュベーションセンターに寄った。
インキュベーション、会社が誕生して安定的に成長できるまでの孵化施設だ。
施設内には貸事務所があり、商業ビルよりも家賃が安い。
会社の枠を超えた交流ができるサロンがあり、交流を図れるようなイベントも開催されてるらしい。
新しい技術や業界動向などの知識・技術を学ぶ講習会用のセミナー室もある。
ITに関する相談事業も行われており、入居企業とのビジネス・マッチングを試みているそうだ。
そんな説明を聞きながら、自分には場違いだと彩智は感じた。
「私はITの技術に疎くて、それでもITで起業したという願望は無謀でしょうか?」
「そんなことはないですよ。
あの『楽座』はトップがIT技術者ではないでしょう」
「でもあの会社は別格でしょ?」
「僕らが、今更やっても追いつかないね。
でもね、ここに入居している会社のほとんどは技術者ばかりの会社なんですよ。
もともとそういう施設ですから当然ですが。営業が苦手で、忙しくて営業ができない。そんな悪循環でなかなか思うように業績を伸ばせない会社が多いんです。
だから貴女のように、営業主導型の会社の存在って貴重なのですよ」
会社という器の中にそれぞれの得意を持ち寄ってチームワークが発揮される。
会社にこだわらなければそれは人的なネットワークだ。
当たり前のことだけど、何度もこの話が出ると起業で最も大切な要素は人的ネットワークのような気がしてくる。
学生時代に名刺をいただいた社長達と繫がりを保っていたいというニーズから人的なネットワークを提供するサービスを起業ネタとして考えていたが、既に浸透しているSNS以上のアイデアが思い浮かばない。
教えてもらう、というのはどうかしら。
ある日、彩智は閃いた。
繫がり合う、の次は助け合う。
いいじゃん!
この閃きに心が躍った。
いてもたってもいられない衝動に身震いした。
誰かに聞いてもらいたい、そして私の話をもっと具体的にして欲しい。
そう思いながらネットを調べると、隣の市の商工会議所が地域で最も熱心に創業支援しているとの記述を見つけた。
今は午後二時。三時前には着く。
アポせずに飛び出した。
創業相談している場所を聞いて、その部屋へ行った。
県の施設と大違いの、事務の大部屋だった。
受付から連絡が入っているらしく、彩智を見つけると腰の低そうな男性職員が声をかけてきて、相談室と書かれた部屋へ通された。
その職員は四十代の男性相談員を伴って部屋に入ってきた。
彩智が相談票に書いた内容を確認しながら職員が言った。
「相原さん、IT系の創業相談ということで。
今日はラッキーですよ。
ITが専門の先生ですから」
その相談員は彩智の話を、確認の相づちをしながらも、最後まで黙って聞いてくれた。彩智の話が終わると、相談員は口を開いた。
「Webデザインのようなすぐ始められるビジネスでなく、もっと大きなビジネスを始めたいという意欲はすばらしいですね。
まだ具体性はないけど、発想の方向もいいですね。
相原さんは女性なので、IT業界で私が注目している女性経営者に触れたいと思います」
二人の名前を挙げて話を始めたが、その二人は彩智が卒論で取り上げた二人だ。
話の内容のほとんどは彩智が卒論で調べた範囲だが、その後の最新の情報が入っている分、この相談員の話は有益だった。
「大切なことは、人を動かすだけの事業計画です。
今風に格好良く言えばビジネス・プランですが、これがしっかりしていれば、隣に座っている会議所(職員)さんが手厚く支援してくれます」
創業相談の印象がいい方に変わった。
確かめるように彩智は、以前と同じ質問をした。
「私、地元で起業しようと思っているのですが」
「いい覚悟ですね。
IT業界では、日本中の仕事の七割は関東圏、二割は関西、一割は東海とかの説があります。
関東、特に東京都と神奈川県、はチャンスに溢れています。
東京のビジネスパートナーを探すことをお薦めします。
それにしても、きちんとした事業計画がないと流されてしまって、いつまで経っても起業できないということになりかねません。
まずは、どんな事業をするのか、貴女の構想だったら、どんなサービスを、どのような人に提供するのか、書いてみてください。
そこから肉付けしていけばいいのです」
「東京のビジネスパートナーですか?」
彩智の頭には青葉市場の勧誘で出会った会社の社長の顔が浮かんだ。
「ビジネスコンテストとかビジネスフェアとか、があります。
これらに参加すればいいのです」
「それって、お金がかかりますよね?」
「公的支援策を活用すれば参加費が優遇されたりします」
いい話を聞けたと思った。
「先生、また来てもいいですか?」
相談できる相手を見つけた。
「先生は毎週火曜日しか来られません。火曜日でしたら、多分大丈夫だと思います」
隣の職員が説明した。
この相談員との出会いは嬉しかった。
ただ、身震いするほどの事業アイデアを相談するのを忘れてしまった。
来週が待ち遠しかった。折角一週間あるなら、もう少しアイデアを具体化しよう。
翌週、手書きのままだが、アイデアを相談員に見せた。
「一見すると、よくある質問を投げかけて、誰かが答えるというサービスですね」
心外だ。
彩智は少し感情的に反論した。
「あれは、いい答えと間違った答えの玉石混淆で、その井戸端会議的なやり取りを楽しむサービスですよね」
「井戸端会議ですか。手厳しいですね」
「私が考えているのは、もっと真剣なコミュニティーなんです。
参加する人は責任を持って発言する、みたいな。
それでいて異業種交流、みたいな。
そこからサークルとかビジネスが生まれるといいなって、考えています」
「異業種交流会のネット版みたいなサービスですか?」
違う、と彩智は心の中で叫んだ。
何と表現すればいいのだろう。
……そうだ!
「私がイメージしているのは、ビジネススクールのキャンパスなのです」
「ビジネススクールのキャンパス?」
「MBAを取って起業するような人達が学ぶ大学院ですよね、ビジネススクールって。
そのキャンパスでの会話を想像してみて下さい。
きっと起業のアイデアを交換しているんだと思うんですよ。
そして足りない人材を人の繫がりの中から探し出す、みたいな」
「なるほど。でも、それって今あるSNSそのものですよねぇ」
「そうなんですか?」
「だって、フレンドブックって、もともと大学内の人的ネットワーク構築のためのサービスでしょ。
その目的は自分のアピール。
これこれ、こういうこと始めるからスキルのある人連絡くれとか、こういうスキルがあるから連絡くれ、とか、そんな使い方もしていたんでしょ」
「でも日本では、そんな使い方をする人、少数派ですよね。
大抵はリア充のアピールとか、承認欲求を満たすツールですよね。
日本で使い方をリセットするのは難しいので、日本オリジナルのSNSがあってもいいのかなと思うんです」
彩智は思考が磨かれ、頭が冴えてくる感覚に興奮した。
知性を刺激する会話は久しぶりだ。
あの、神取との会話以来だ。
「なるほど。では、そのアイデアをまとめてみては如何でしょう」
「どうまとめるのですか?」
「まず、どんなニーズ、というか必要性や需要があるのか?
そもそも、発想のきっかけは何なのですか?」
「私、東京で青葉市場のエージェント、つまり営業の仕事をしていまして、いろんな経営者に会ったんです」
「青葉市場、聞き覚えがあるのですが、何でしょう?」
「中小企業のための証券市場です」
「株式公開というけど、上場とは言わないんでしたよね」
「ご存知なのですか?」
「名前だけです。
昔、業務提携しませんかって、名前は忘れましたけど、会って話を聞いたことがあります。
結局、断ってしまいましたけど」
「先生と一緒に仕事していたかも知れませんね」
「はい?」
相談員には意味が分からないだろうが、彩智にはその場の光景が想像できた。
多分、彼にコンタクトしたのは、当時、名古屋で青葉市場の開拓に取り組んでいた浅倉、彩智が勤めていた会社の社長だ。
この先生の雰囲気と浅倉では相性が悪い。
浅倉の早口で説得する姿が目に浮かぶ。
「で、いろんな会社を訪問して、……どの社長も、提携先を探すのに苦労されているんですよ。
販売先に限らず、技術開発の提携先とか、生産の委託先とか、仕入れ先とか、です」
「それを支援するSNSを作りたいんだ」
「はい」
「なるほど。いわゆるビジネスマッチングサイトってことだ」
「どうでしょう」
「で、収益はどう考えています?」
「仲介料です。あと広告収入です。企業広告のバナーとかアフィリエイトです」
「では、ざっくりと、ですが一緒に売上高を考えましょう」
「それって、取らぬ狸の皮算用、ですよね?」
「確かに皮算用ですが、少しの根拠でいいんです。
最初の売上高を計算するには」
紹介料はいくら?
バナーの料金設定は?
アフィリエイト収入はどれくらい?
まだ考えてないことを、この場で決めた。
「えっ、年収百万円、いかないのですか?」
彩智にとって予想もしていない収入額に驚いた。
「成約率をどう見るか、初年度の参加企業数をいかほどに考えるか、数字遊びみたいですけど、それ次第ですね。
私は、個人的にはビジネスマッチングそのものは収益事業にするのは難しいと思っています。
事業はとても有意義ですけど」
「どうしてですか?」
「ビジネスパートナーを探すことは、手の内を明かすことになります。
信用できる仲介業者でなければサービスを受けようと思いません。
それと業歴の長い企業ほど、人づてでいい提携先と出会った経験があります。
それができる人脈を持っている」
「つまりは経験値ってことですよね?
私のターゲットはそういう人脈のない企業なのです」
「いい着眼点ですね」
褒められて、彩智は素直に嬉しかった。
「そうですか?」
「いい会社が揃っているマッチングサイトなら、ですけど」
この相談員の含みのある言い方は、不愉快だ。
「いい会社が集まればいいのでしょう」
「それが難しいのですよ」
難しい理由を並べ立てるのだが、相談員が言わんとしているのは、自分が望んでも相手にされないことが多いというものだ。
相手にされないことが多い……彩智の経験上、すごく違和感がある。
ネットで質問すれば必ず答えが返ってくるし、会いに行けば、大抵、話を聞いてくれた。たまに門前払いもあったけど。
相談員のアドバイスに納得できないまま、来週までに売上計画を見直すという宿題が出された。
翌日、彩智は飯島の指定した時刻に狩宿(かりやど)商工会議所へ行った。
場所はよく知る県道沿いにある、モスグリーンのガラス張りの建物だが、初めて入る。
駐車場の狭い入口を恐る恐る進むと、ほとんど満車状態だ。辛うじて二台分の空きを見つけて駐めた。
飯島のいる事務局は、エントランスの奥にある通路に左向きの矢印で案内がなされていた。
「既に入居者第一号が決まっていましてね」
事務局の相談室2と掲示された小さな部屋に通された彩智は、飯島からこう告げられた。
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