霊関係の話⑯ 母の体験談
戦後の人ですんで、まぁ、面白いエピソードがアレコレ聞けます。
母が子供の頃というのは、米軍の戦闘機が本土をばかすか攻めてた頃で、ほぼ無関係に近かった田舎に住んでいた母たちも、一度だけこの戦闘機が飛来した事があって、ぼーっと眺めていた母たち兄妹は機関銃乱射で追いかけられた、みたいな話がそれこそてんこ盛りでした。(どうやら冗談半分で脅かしてったらしい)
機関車はむき出しの線路を走り、今のように危険防止の柵なんてものも充実はしてなかったとかで、汽車轢かれもちょくちょくあったそうで。
先の丘で汽車がなんか停まっている、何かあったかなとそのまま畑道を歩いていると、道の真ん中に生首が転がってて腰が抜けた、なんて話をしてくれます。
で、この母もやっぱり霊体験があって、母がまだうら若きオトメだった頃に話は遡りますが、どこか小さな街工場に勤めてミシンで縫製をしていたそうなんです。
その工場に出入りの業者さんで、若い社員さんがしょっちゅう母の顔を見に通ってきてたそうです。母に気があったようで。
ある日のことです。やっぱりその日もこの社員さんがすーっとやってきて、にこにこしながら母の傍で母を眺めていたらしいのですが、その日に限って、話しかけても一向に喋らなかったとか。ただにこにこ笑ってたそうです。
母もなんだか薄気味悪くなってきて、だけど目を離したちょっとのうちに、その社員さんは居なくなっている。どうも霊というのは見てる時に消えるのは無作法とでも思ってるのか、すーっと消えてくとかは私も経験ないですね、いや、見えること自体が私の場合は少ないですが。
で、社員さんが居なくなってるのに気付いた母が、どうもおかしいな、と思っていると交代要員で出勤してきた女工さんが大ニュースを持ってきたそうです。
なんと、その社員さんが事故で今朝亡くなってしまったとか。
驚いたそうですが、やっぱり最後に会っていきたくなるほど好いていてくれたんやろか、とちょっと切ないお話として聞かせてくれました。
この母の実家というのが、今ではもう建て替えられて新しくなっているのですが、私が幼少期までは本当に古い家屋に住んでまして、ぼんやり覚えている間取りからして、時代が時代ならたぶん名主とか庄屋って感じのお屋敷だったと思います。
で、私はその古い方のお屋敷で、化け猫にあったよーな、微かな記憶が残っています。すごく恐ろしかったのだと思いますが、そこらへんが曖昧です。
母の証言によりますと、奥の座敷へとことこと独りで入っていったと思ったら、すごい声で「ぎゃーー!!」と叫んで飛び出してきた、とか。で、化け猫が出た、と騒いだそうですが、正直、ほとんど覚えていません。なんか黒いのが居たよーな……みたいな曖昧さです。しかし、後年になっても、なんとなーくこの屋敷の奥の方には行きたくなかったのは確かです。なんか居たんでしょうね、会いたくなかったんで。
しょっちゅう聞かされていた割に、すっかり忘れていた話です。
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