科学的実験検証①

 私は時々、自身の探究心に従い、周囲からは突飛と称される行動を起こす事があります。あれはそう、マンモスのミイラが南極かどこかの氷の下から出てきたとかいうニュースを見た時のことだったと思います。


 調査員が、この肉を食べてみたとかいう衝撃的記述を読み、私の中に『冷凍庫不敗神話』が誕生したのです。そう、冷凍庫で凍らせてさえおけば、永遠に食物は保存できる……!


 それから何かの折、姉が東京土産としてチョコレートを買ってきてくれた事がありました。サンシャインビルって、出来た当時はフィーバーしたのですね。サンシャインビル来場記念のお土産なんかが売られていたのです。

 私はこの時にもらったチョコレートを、冷凍庫の奥深くに保管しました。



 それから何年経ったでしょう……5年、6年、7年……小学生時分にもらったチョコレートは、私が小学六年間を過ごし、中学に上がりこれを卒業し、高校入学して三年間を過ごす間も、依然として変色もせずに冷凍保存され続けました。


 そう、たまに引っ張り出しては味や色素に変質はないかと確認の為にひとカケラずつ削っては食べておりましたが、ゆうに11年間、チョコレートは健在だったのです。


 私はその都度に感動したものです。チョコレートは偉大なり。おお、人類よ、よくぞこの二大発明を成し遂げていたものか。冷凍庫とチョコレートのタッグは不滅、そう、氷河期が来ようともチョコレートさえ大量に保存しておけば人類は滅亡を免れるに違いない。いや、来たる宇宙時代の万能食はチョコレート!コールドスリープから目覚めた人類は宇宙船の中でまず一杯のホットチョコレートを啜るに違いないのです。


 残念ながらその後、冷凍庫が故障するという不測の事態が起きてしまい、チョコレート保管記録は12年目にストップしてしまいました……返すがえすも残念です。



 ちなみに肉の冷凍保存には限界が生じる事が発覚しまして、二年を超えた肉類は変質してしまい、解凍時に激しい腐敗臭を生じさせるようでした。保存するならやはりチョコレートに尽きるでしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る