霊関係あれこれ② 琵琶湖の話
死神も怖かったけれど、あれは害意がはっきりしている怖さで、崖っぷちの錆付いた遊具に感じた正しい恐怖感の恐怖でした。それとはまた違った怖さを感じたのが、琵琶湖に泳ぎに行った時の話です。
溺れて死に掛けたくせにまた泳ぎに行ったわけですが、だって死神は怖いけど、水が怖いわけじゃないから別に水泳は怖く感じるものじゃないと思ったんですよ。
で、親戚が海辺に住んでいる関係で、毎年夏はどこかで水泳をしていた我が家の夏休み、その年は琵琶湖湖畔の保養所が使えることになったんです。父の働いていた会社の所有する宿舎です。かんぽの宿とか、あんな感じ。
琵琶湖で泳ぐのはそれが初めての経験で、海とは違い、淡水は思うように身体が浮かばないなぁ、なんて具合にそれでも適当に泳いでは遊んでいました。
夜はバーベキューが楽しみだ、なんて事を考えていました。
私は海水浴に行った時は必ず、力の続く限りと沖へ泳いでいくトライアルをやらかすのですが、琵琶湖でもこれをやろうと思っていました。
海で、沖へ向かって延々と泳いでいくのです。私はそんなに泳ぎが得意ではない、と書きましたが、無鉄砲ではありました。命知らずでもありました。
正直、子供らしい馬鹿ガキで、沖に出て力尽きたらどうなるかをあまり真剣に考えていなかったんです。根拠の無い自信に満ち溢れたお子様でした。
いよいよトライアルを開始しました。琵琶湖の沖へ向かって延々と泳ぎ始めたのです。巧くいけば反対の岸へたどり着けるな、なんて甘い考えをしていました。
どのくらい泳いだでしょう。離れた岸はかなり遠方に小さく、それでもまだ見える距離にはあります。
ふと、違和感を覚えました。
何か、居る。
泳ぐ私の真下に、何かが居るんです。それも、巨大なのが。
水面は真っ黒です。琵琶湖ほども大きくなれば、底など見えるわけもない。これが海ならば、沖の海面は緑系の色ですが、その時の琵琶湖の水面は真っ黒でした。
何かの影が映っているから黒いのか、海水ではないから黒いのか、ただの私の記憶違いか、何かは解かりません。
気配がありまして、水中の何かはずーっと私と平行で私の真下を泳いでいました。
その時はえもいわれぬ恐怖感で、慌ててUターンし、元来た岸へ向けて全力で泳ぎましたが、生きた心地がしませんでした。へとへとになり、岸へ戻った時にはもう水面も緑系の色に、得体の知れない気配もなくなっていました。そう言えば、というかで、落ち着いてみると彼に害意は無かった事にも気付きました。物珍しくて近寄っただけかも知れません。
あれも結局は何だったのかは解からず仕舞いですが、そういえばネッシーならぬ、琵琶湖の怪物の話があったなぁ、と思ったりはします。
ネス湖のネッシーだから、琵琶湖だとビッシー?
琵琶湖を望む比叡山の山中には、竜王を祭る社があるんですよ。琵琶湖に竜が住んでいるなどという話は聞いたこともなかったんですけどね。やっぱりビッシーでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます