【オカルト】わたしが書きたい小説ってコレだったかしら?

柿木まめ太

霊能者の先輩が告げた一言は

思えばあの一言から始まっていた

 私は高校時代、漫画研究部に所属していました。その頃の知人とはちょっと今は疎遠で年始の挨拶程度の付き合いとなってしまっていますが、あの頃がやはり人生で一番楽しい時期だったと言えそうです。


 その楽しい学生生活の最中の、ある日の出来事でした。どういう経緯だったかはもう忘れましたが、クラブには強い霊能力を持つ先輩が居たんですが、その先輩が後輩たちの未来予知をしてくれた事があったんです。


 皆が割りと華々しい未来を告げられていく中で、私にだけはどういうわけか、先輩は首を捻ってこう言ったんです。


「あなたは隠されてしまう。」


 え? なんですか、それ? てなもので、その後の言葉は適当にしか覚えていないんですけども、先輩が言うには、どうやら私は日の目を見ることなく人生を終えるのだそうで。ちょっとあまりにショックで、詳しい事はうろ覚えになりました。


 先輩曰く、私は現在の生までに七回か十七回か生まれ変わっていて、その度に同じ守護霊の元で導かれていたそうです。そのうちの何度かに至っては「あなたには地球に住んでいる概念がないから、宇宙人の頃から同じ守護霊だね。」だとか。

 そう言われてみれば、当時は同じ夢を何度も繰り返して見ていたのですよね。それは宇宙船の艦橋部分に佇み、自分の故郷の星が砕け散る様を絶望しながら眺めているという夢でしたが。スペクタクルな夢だなぁ、とはしゃいでいたのが大マヌケって事でした。映画のワンシーンが記憶に残っているのだろう、程度の認識だったんですよねぇ。

 で、先輩は飄々とこうも言いました。


「あなたは今回は、スゴロクで言う『一回休み』に相当する人生を送るみたいね。せっかく貰ったお休みなんだから、ゆっくり過ごせば?」


 いやいやいや、先輩、そんな殺生な。一回休みで人生一回分って長すぎます!


 とてもショックで、けれどその当時にはそうは思っていてもロクに反論も出来ず、もちろん対策を聞くことも出来ずで、そのまま有耶無耶になってしまいました。先輩の予言した通り、その後の私の人生にはさして問題も山場もなく、平々凡々とした人生を送っています。何の苦労もしていません。まさしく、一回休みというに相応しい平凡な一主婦になりました。


 七回だか十七回だかの人生はかなり激しいものだったようでもあり、それについて詳しい事を訊かなかったのがちょっと心残りではあります。他にも、私は左利きなのですが、私のパワーはこの左手を中心に大きな三角を描いているというような話も聞きました。

 大きな力を持つと言っても不世出では宝の持ち腐れですよ、先輩ぃ……。


 本当に、いったい誰が私を隠しているというのでしょう。悔しい……。そういう漠然とした無念を抱えて、そうして私は現在に至るまで半ば諦めの境地でした。

 それがこの歳になって、一念発起です。もよりの神社へ詣で、お休みを返上したいと申し出て、どうやら許諾されたようなのです。

 おみくじにはこう書かれていました。


『願いは叶う。神仏に導きあり。迷うな。』

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