結婚

秘密

 恋愛の次にくるのは、結婚。

 しかし、前回のお相手は旦那ではなく不倫相手という、なぜか段階をすっ飛ばすという大失態。

 ということで、旦那との恋愛について少々触れてみようと思う。


 旦那は私の専門学校時代の教師だ。

 入学してすぐの面談で疑似恋愛を勧められ、いつの間にか疑似をどこかに置き忘れてしまった。

 当時、親が厳しくて携帯電話を買い与えられなかった私は、毎日FAXでやり取りしていた。その日にあったことや思ったことを綴っていく交換日記みたいなもので、文章の勉強のためにも毎日送ることを義務付けられていたのだ。

 今考えると、旦那はFAXで相方はチャットと、基本的に何も成長してないのではと勘ぐってしまうが、そこは置いておいて。

 そもそもなぜFAXでなのかというと、当然ながら付き合っていることは秘密だったからである。

 教室内ではあくまで生徒と教師。特別扱いどころか、ろくに目も合わせてくれない。

 逃げられると追いかけたくなるB型の性格からして、この対応は非常に効果的だった。

 寝ても覚めても教師のことで頭がいっぱいになる日々。いつの間にか疑似のワードはすっかり消え失せてしまい、私は本気で教師が好きになってしまった。


 そして、我に返る。

 面談で疑似恋愛をすると決めた時に、出された条件を思い出した。

『本気で好きな人が出来たら、疑似恋愛は終了』

 ということはだ。

 私は教師のことが本当に好きになったのだが、そのせいでこの期間限定なお付き合いを自分で終わらせなければいけなくなったということだ。

 ボロボロと泣きながら、私は別れのFAXを送信した。

『先生のことが本気で好きになってしまったので、疑似恋愛はもう続けられません』

 と送った。

 するとしばらくして教師から電話があった。私が条件のことを告げると、教師は優しく笑って訂正した。

 もし他の人を好きになってしまったら、その人を恋愛をしてほしいから終了と言ったんだと。自分がその相手ならば、辞める必要はないのだと。


 非常に迷惑な話だが、この教師は私の入学願書に添付されていた写真を見て付き合いたいと思い、どうにかして方法はないかと考えた結果、この疑似恋愛を持ちかけたのだと言う。

 つまり、私は教師の策略にまんまとハマり、疑似どころか本気になって、こうして今も一緒に暮らしているのだ。


 それにしても、私はどうにも『秘密』に弱いようだ。

 教師と生徒の秘密。ネットで不倫の秘密。

 しちゃいけないことって、どうしてこんなに心が躍るのだろう。

 B型は基本時に隠し事が下手だ。なのに、秘密を抱えたがる。

 一人で喉から出るほどの気持ちを秘め続けることで、勝手に盛り上がり、興奮し、燃え上がるのだ。

 B型の熱意を持続させるには、適度な秘密を与えることを推奨する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る