猪突猛進
ハイリスクノーリターン
次に、B型の性格として着目するのは、『直観的・熱しやすく冷めやすい・行動力がある』という部分である。
ちなみにこの性格だが、資料としていくつかの書籍やサイトを参考にして使用させていただいている。
そもそも血液型性格診断に根拠はなく、書いてあることも真逆だったりする。他の血液型で言われていることと重複していたりするが、本作では都合のいいところだけを集めて書いていくので、ご了承いただきたい。
あなたは行動する際に、何を思うだろうか。
これを行ったことでどうなるか、ある程度予想しているのではないだろうか。
人は経験値を積むことで、物事の流れや常識を学んでいく。
そのはずだ。
小学生の時、私は兄の部屋へ忍び込んだ。
特に禁止されていたわけでもないので、忍び込んだという表現は違うのかもしれない。けれど私は誰も見ていないなとキョロキョロ確認しつつ部屋に入った。
目的は、兄の部屋の漫画だ。当時の私は少年漫画というものに感動し、少しずつオタクへの片鱗が垣間見えていた。もしかしたらその背徳感から、こっそりと一人で楽しまなければいけないという使命感が生まれたのかもしれない。
本を借りようにも、チビの私に棚は高すぎて届かなかった。
踏み台になるようなものを探してみる。
すると、水槽が目に入った。
祭りでもらってきた金魚のために購入した水槽だが、あっという間に水槽を住みかとする生き物はいなくなり、空っぽのまま放置されていた。
よし。
私は水槽を踏み台に、本へ手を伸ばした。
小さな水槽はたいして高さもなく、容易く本に手が届くわけではなかった。つま先立ちになり、必死に手を伸ばす。
その時。
みしみしっという不吉な感覚の後、水槽は割れた。
ガラスが割れる独特の破砕音で、居間にいた母? だったか祖母だったかが駆け付けた。
私はぎゃん泣きしており、足の親指にはガラスが突き刺さり、今にもちぎれそうだったと言う。
いきなり第三者の描写になったのは、この先の記憶がないからだ。この後病院へ行ったのか、指を縫ったのか、怒られたのか、何も思い出せない。
ガラスは割れるということを、当時の私は知らなかったのだろうか。
いや、そんなことはない。
確かにあの時、水槽を踏むことを一瞬躊躇していた。
けれど、「ちょっとなら大丈夫」という根拠のない自信が、私の背中を押したのだ。
食べ物を落とした時の、三秒ルールみたいなものだろうか。すぐに拾ったところで汚れていないわけはないのに、「三秒以内なら大丈夫」と自分に言い聞かせ食べちゃうのだ。
そもそも、部屋に踏み台となるようなものは他になかったのだろうか。兄の部屋には勉強机があった。となると当然椅子もあったのではないだろうか。
残念ながら水槽を選んだ明確な記憶がないのだが、当時の私の思考を振り返り仮説をたててみる。
椅子にはランドセルなり、なんらかの荷物が置いてあったのではないだろか。棚と水槽と椅子との位置関係でいうと、水槽は目の前にあり、椅子は遠かったはずだ。
私の中で最も避けたいのは『部屋に忍び込んだことがバレること』であり、椅子の荷物を動かすことは非常に危険な行為である。
つまり、水槽に乗ることよりも椅子へ乗るほうがリスクが高いと位置づけていたのだ。
そんなバカな話はない。
しかし当時の私は本気でそう思い、実行した。
結果、水槽は割れ、部屋に入っていることもバレ、漫画も手に入らなかった。何一つ利益は得られず、それどころか怪我という大きな代償を背負ってしまったのである。
私は今、水槽には乗らない。
それは痛みを学んだからなのか、大人になったからなのだろうか。
ではなぜあの頃の私には乗れたのか。
痛みを知らなかったからなのか、子供だったからなのだろうか。
そこの、水槽に乗って痛い目を見たおバカなあなた。あなたですよ。
もしかして、B型の血がそうさせたのではありませんか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます