かまってちゃんジュニア

 このエッセイは、B型のイメージを肯定するだけのものではない。

 反対意見もちゃんとあるのだ。


 私には子供がいる。姉が一人に弟が一人。一姫二太郎の理想的な家庭だ。

 旦那はO型で、娘はB型、息子はO型に生まれた。

 娘は顔は私にそっくりだが、性格は旦那似。息子は旦那にそっくりだが、性格は私に似ていた。

 これは、性格が血液型で決まるものではないという重要な証言になり得るのではないか。

 

 O型の息子は学校から帰るなり、壊れたおもちゃのように喋りだす。

 どうやら学校であったことを報告したいようなんだが、喋り出しが必ず決まっている。

「ママー! ひどいんだよー!」

 これからひどい話が始まるようだ。

「ぼくさー! 思うんだけどさー!」

 何かを思っているらしい。

 話し出すときは、必ず主語のあとに述語がくる。英語の文法のようだ。

 通常私たちは、会話をする時は順を追って話す。小説なら時系列の入れ替えもするが、会話では混乱するだけだ。

 息子は起承転結の結を最初に言ってしまう。オチから始まり、内容を説明しだすのだ。

 よくバラエテェなんかで、「今から面白いこと言いますよ」なんて無茶ぶりを仕掛けられることはあるが、自らハードルを上げて話し出すのだ。

 さぞかしひどい話や深い話なんだろうと耳を傾けるのだが、まー内容がスッカスカのどうでもいい話ばかりしかしない。

「え? そんだけ?」

 心の中で思いっきり突っ込みながら、テキトーに相槌を打つ。

 くそつまらん話をする息子だが、その目はすごく輝いている。必死に聞いてもらおうと呼吸も忘れて喋っている。

 その姿を見て、自覚するのだ。


 当時の私って、相当恥ずかしいことしてたんだな、と。


 注目を浴びたいがゆえに必死に話すが、親にとってはつまらない話だっただろう。

 そんな時はなるべく、生温かい目でぎゅっと抱きしめてやり、「わかったわかった」と言ってやる。

 息子には優しく話を聞いてくれる母親に映るだろうか。

 将来こんな気持ちだったのかと、気づく日がくるだろうか。


 B型である自分を恥じることは多い。

 いや、自分では特に感じてはいないが、第三者から恥を受けることが多いと言うべきか。

 そんな時はB型という血を恨むのだが、息子を見てふと思う。

 私にそっくりの息子。

 こんな性格なのは、B型だからだと思っていた。

 しかし息子はO型だ。

 じゃあどうする。性格が悪いのは、ただ単純に私の性格が悪いだけだからなんじゃないだろうか。

 いや、そんなことはないはずだ。

 B型という呪われた血が、O型の息子にまで呪いをかけているに違いない。


 今日も私はB型を検証し続ける。

 私自身が納得できるその日まで。

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