勾玉

 押忍!! ガクです。『お金を持っている=幸せ』ではないと俺は思います。お金を持っていると面倒事に巻き込まれる可能性がありますしね。『お金を持っている=選択肢が増える』ぐらいに思った方が良いですね。


 結局、俺のスマホの中に入っている荷物を出すには一部屋では足りなく、二部屋を使った。

 もちろん二段に積んだが、ギリギリというかなんというか。


 小型樽爆弾が手元にあって爆発させたらここいら全部が吹き飛ぶな。


「まさか、こんなにあるなんてな……」

「樽で百五十七個です」


 計算しながら出したからかなり時間がかかった。

 もうお昼を過ぎてしまった。


 途中で昼を食べてからまた樽を積む作業だ。

 まぁ樽を二段にするのはサラだけどね。


 あんな軽々と持ち上げるとは……。


「信用できる者を呼んで鑑定しても一週間はかかるな。俺もそいつらも自分の仕事もあるからな」

「では、一週間後にまた来ます」

「分かったぜ」

「では」


 そう言って帰ろうとするサラ。


「あれ? 引き換えないの?」

「はい?」

「いや、これ。シャルルが持って来てくれたヤツだよ」


 そう言って紙をサラに渡した。

 あ、聞いてなかったんだけ?


「そ、そうでしたね?」


 なぜに疑問形。

 やはり聞いていなかったのか。


 まぁいいか。


「多分時間はかからないから馬車に向かてて」

「分かりました。行きましょうか、ルアン」

「うん!」


 あ、急に一人だ。

 寂しい。


 さてと。

 紙を商人の元に持っていく。


「あの、これをここに持ってくれば交換してもらえると言われたんですけど」

「ん? どれ」


 商人に紙を渡した。


「あ~。これか。ちょっと待ってろ」

「あ、はい」


 待つ事数分。

 商人は木の箱を持ってきた。


「待たせたな。これがこの紙に書いてあった荷物だ」

「何ですか? これ」


 木の箱に入っていたのはまん丸な玉だった。

 ソフトボールより一回りぐらいは大きいな。


 即座に鑑定を起動した。


~~鑑定結果~~


名前:願いの勾玉

効果:願いを叶える。


 なんだコレ。

 結構ストレートな効果だな。


「これは願いを叶えてくれるかもしれない球だな」

「……かも?」


 効果では叶えると出ているから叶えてくれるんじゃないのか?


「あぁ。この玉は結構なレア物なんだが、効果の発動のタイミングが掴めねーんだよ」

「どういう事だ?」

「ただ普通にお願いするだけじゃダメなんだとさ。別の何かが必要なのか。それともお願いの仕方が変わっているのか。だな」

「ふ~ん」


 ま、いいか。

 キレイだしもらっておくか。


「ありがとう」

「いや、また来な」


 そう言って商会ギルドを出た。


 すると出てすぐにサラが馬車を止めて待っていてくれた。


「どうかでしたか?」


 馬車に乗り、ルアンを膝の上に乗せて一段落した後にサラに返答する。


「勾玉をもらった。まん丸だけどね」


 そういって箱を開けてサラに見えるように持って行った。


「見たことないですね」

「そうなんだ。何でも願いが叶うらしいよ」

「ガクさんは何を願うんですか?」

「俺? う~ん。平和な日常?」

「フフフ。ガクさんらしいですね」



 そうかな?

 この頃いろいろあるから平和が一番だよ。


「サラは?」

「私はガクさんとルアンが健康ならそれで充分です」

「サラらしいね」


 マジ天使。


「ルアンは?

「ルアンは~。えっとね~。えへへ。おおきくなりたい~」

「大きく?」

「うん」

「なんで?」

「え~と。ないしょ~」

「そっか~」


 また内緒か~。

 可愛いヤツめ。


 俺も内緒の一つでも作ろうかな?

 あ、既に何個かあったわ。


 死因とかパンツゴシゴシ事件とか。

 あれは永久に語られる事はないだろうな。


「ガクさん。この後、どうします?」


 俺がろくでもない事を考えているとサラが声をかけてくれた。


「う~ん」


 どうするか。

 荷物出しで結構時間がかかってしまったからな~。


 お昼に武器と防具は明日にしようとサラと決めはいたけどその後については決めたなかったんだよな。

 サラは俺が決めて良いって言ってたが、さてどうしたモノか。


 昨日の事もあるし、やはり買い物だな。


「買い物に行こうか。サラの服とかルアンに服も買いたいしね」

「はい、分かりました」

「わ~い。おようふく~」


 二人が喜んでいる。

 やはり女の子だね。


 ちゃんと可愛い服を探さないとね。

 サラに任せると、ホラ。

 かなり方向が違う服を買っちゃうから……。


 俺が買わないとね。


 俺はカードを大事にアプリ内にしまってある。

 無くしてもお金には困っていないが、使わないに越したことはない。


 金貨二百枚以上あるから自分のお金を使っても良いんだけど、もしもの時には必要になる可能性もあるからな。


 それと、書類だが商会ギルドに到着する前にルアンが寝てしまったので、各書類は全部読んだ。


 共通事項は再発行はしていない。紛失した時は諦める事。壊れた時も同様らしい。

 このカードは壊れにくい素材らしいけど長年使えば壊れるそうだ。

 つまり、それが期限になっているって事だな。


 壊れやすくなく、絶対に壊れない訳でないのがミソらしい。


 後は、転売に関してだな。

 シャルルのメモが入っていたが、洋服は転売しても稼ぐがメインにならなければ問題ないらしいね。

 儲けに走った場合はカードの没収と最悪は奴隷にされるらしい。

 結構重いな。


 これは決闘を汚す事に繋がるのと相手に失礼だから。

 だ、そうだ。


 相手に失礼とは少しモヤとしたが、決闘で決着は付いた事でそれまでの事は流すのが礼儀であり決闘なのだそうだ。

 だからこそ決闘には何かを賭け、勝った方が相手からもらう。


 だから、自分が相手に要求をするのだ。

 これでチャラって感じだな。


 だからこそ転売は重罪になる可能性があるのだ。

 すべてシャルルのメモに書いてあった。


 なるほどね。

 まぁダルダを許す事は出来ないが、ケジメを付けたと思えば胸の怒りも収まるか。

 目の前にいても顔面にパンチを食らわす程度だ。


 おっと話が逸れた。


 これが共通事項だな。

 紛失と転売について。


 次が期限だな。

 カードについては期限はない。

 と、いってもさっき言ったように壊れたらそこで終わりだがな。


 家の権利書だけは半年の期限があり、過ぎると権利書の効力がなくなる。

 これはシャルルに聞いた通りだな。


 家のカタログを見たが、かなりたくさんある。

 この街の空いてる家が載ってるんじゃないかってぐらいにたくさん。


 だが、全部文字なのだ。

 絵どころか間取りも書いていない。

 どこどこにあります。

 みたいな感じだ。


 これは後で知ってる人に聞いた方が良いな。


 で、家は購入から半年以内で売ったら捕まるってのもシャルルが言っていたが、引っ越しなら問題なく、費用はダルダに行くらしい。

 住んだ家が欠陥住宅だった場合の措置らしい。


 リフォームの費用は自腹なのだそうだ。

 なら引っ越した方が良さそうだな。


 残りは細かいことだな。

 簡単に言えば鎧は服に入るのか。

 便利なカードで買えないもの等々だ。


 服のカードは靴も買えるがアクセサリーは変えない。

 鎧は一部買えるらしい。


 謎だ。


 便利なカードは高額な物は査定が入るらしい。

 高い物の代表例が家や土地や宝石だな。


 この査定は相手が支払えるかどうかを査定するらしい。

 もし、ダルダが支払う事が出来ないのに高価な物を買っても困るのはお店側だ。

 そういうトラブルを無くす為に査定なのだ。


 最後にこのカードはこの帝都と他周辺でしか使えないそうだ。

 だが、この街でお金を使う事が殆どなくなった。


 マジかよ。

 ヒッキー出来るじゃん!


 って思ったのもつかの間、そう簡単に世界は出来ていないらしい。

 家は一年に一度、税を取られる。

 この税は便利カードを使う事は出来ないのだ。


 税は家の大きさで決まるそうだ。

 あ、だから転売するヤツらが多いのか?


 税を払えないと家を没収されるからな。


 家を無くした場合は宿屋に泊まる。

 あれ? お金使わなくね?


 だが、人間というものは一度楽な暮らしをしてしまうとそれ以下には中々出来ないモノで広々とした一戸建てから狭い一部屋に変わるのが嫌なんだろうな。


 だからか。


 俺も気を付けよう。


 お金は魔物と言うしな。

 散財して借金して地下労働は嫌だよな。


 地下で汗水垂らして、ビールとホカホカの焼き鳥を買って、犯罪的な上手さだ! ってのをやってみたいけど、普通に運動してからやろう。

 この世界のビール美味くないんだよな~。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る