魔力回路と今の俺
押忍!!男の中の漢。名は学。年は三十六歳だ!! 十六歳の女の子を好きになり両想いになったが、元の世界なら完全にアウトだな~と思うこの頃。
ん?あれ?俺いつの間に寝たんだっけ?ここは……サラに連れて来てもらった部屋だ。
どうして俺はここにいるんだっけ?
「……目が覚めた?」
「はい。俺は何で……」
「……体に異常は?」
「少しだけ怠いですね」
「……そう」
「俺に何をしたんですか?」
「……魔力回路を構築した」
「どうして俺は寝てたんですか?」
「……魔力回路の構築は激痛を伴う。君は寝たんじゃなくて気絶した。皆、そうなる」
「え……」
「……魔法使いの通過儀礼」
「何だろう。この言葉に出来ない心のモヤは……」
途中から思い出したけど、目を閉じた時に何かあったような気がするけど痛みもしなかった。けど、全身のこの怠さは疲れた時のそれに似てる。
心の中がモヤモヤするな。こうなるなら一言くれればいいのに。不意打ちにこんな事があると先が怖いな。
「……大丈夫。こんな事はこれが最後」
「え~~。ウソですよね」
「……本当。私も師匠にされたけどこんな事は二度は無かった」
「う~ん」
「……これで君も魔法使いの仲間入り。おめでとう」
「ありがとうございます。俺ってどのぐらい寝てたんですか?」
「……九時間ぐらい?かな」
「随分寝て、じゃなかった。気絶してましたね。俺」
「……体の中に魔力回路を構築するのは、体の中に針金を通すようなものだから」
「どこの拷問?……この体が異様に怠いのは?」
「……回復魔法は心も体も回復出来るけど限界はある」
「つまり、この怠さは魔法でも回復できない程のダメージが俺に残ったって事ですか?」
「……そうなる」
「マジか。……これって失敗する事ってあるんですか?」
「……フイ」
「目をそらさない!!」
「……大丈夫。失敗しないために適性があるが調べる。適性があって魔力回路の構築技術が高い人がやればまず失敗しない」
「目を見て言ってくれれば少しは信じられそう」
「……失敗したら体が爆発するか意識が回復しない。つまり、君は成功。私、頑張った」
「失敗リスク高すぎる!!……スナーチャさんがした事って?」
「……順々に説明する。難しいから」
「はい」
「……まず、適性があっても魔法は使えない」
「え?そうなんですか?」
「……そう。適性があっても適性魔法に対して少し防御力が上がる程度。魔法を使うには魔力回路が必要」
「じゃ魔法使いは皆こんなリスキーな事してるんですか?」
「……違う。ほとんどの人は修行をして魔力回路の構築を行う」
「へ~。その違いはあるんですか?」
「……あるけど結局は同じ。リスクと時間の問題」
「あ~なるほど。長い時間修行して魔力回路を構築して魔法使いになるか、リスク承知で手っ取り早く魔法使いになるかの違いって事ですか」
「……そう。詳しく説明すると混乱するから今は省く。君は知らないかもしれないけど、若い魔法使いが余りいないのはその為」
「なるほど。スナーチャさんは師匠にやってもらったんですよね」
「……そう。私が十歳の頃に酒の余興でやられた」
「酒の余興でやっちゃう師匠って……」
「……この方法は昔から議論や研究はされてたけど初めて実践したのは私の師匠」
「マジすか!!」
「……うん。師匠はかなりスゴイ。国の偉い称号を授与された」
「おぉ!!」
「……師匠はいらないと断った」
「スナーチャさんの師匠、スゴ!」
「……それで私が君にしたのは各適正に合った魔力回路と言うのがあってそれを君に合わせて体の中に構築する。君は三つも適性があるからただでさえ難しいのに更に難しくなった。でも、私は頑張った。……よかった。目が覚めて」
「最後の方にボソッと言った言葉が無ければ素直に感謝の言葉を言えそうなんですけど、そんなに難しかったんですか?」
「……前例がないから。二つ適正を持った人もいないのにいきなり三つは未知」
「俺、よく目を覚ましたな」
「……本当に体に異常はない?」
「何ですか?今になってヤバイ事があってらどうしよう?みたいな聞き方は!でも、安心してください。怠いだけでこれと言って体に違和感はないですよ?」
「……今日は休んだ方が良い」
「分かりました」
正直、この気怠さの状態で何かしようものなら、途中で寝ていたかもしれないな。
自室にダラダラと戻った俺。階段がこんなに強敵だったことはない。
バフっとベッドに倒れ、スマホを操作して【ステータス確認アプリ】を起動。自分のステータスを確認する。
「魔法使いなくね?あれ?」
装備していたスキルにも待機覧にも無い。俺、魔法使いになってないのかな?スナーチャさんがこれで魔法使いになれるって言ってたけど、もしかして失敗したのかな?
う~ん。
「あ、そういう事か」
俺は【取得可能スキル一覧アプリ】を起動して疑問が解けた。そのスキル一覧に<魔法スキル>があった。他にも俺が知らないスキルが増えていた。
増えたスキルは魔法系のスキルが多かった。大体効果が分かるのは<魔法効果上昇>とか<魔法攻撃力上昇>などなど。
攻撃系上昇スキル。防除系上昇スキル。魔力上昇系スキル。大まかに分けるとこんな感じかな?完全魔法使い構成にすれば大火力にするか、硬い魔法使いにするか迷いますな。
とうとう俺も魔法が使えるようになるのか。考え深いな。異世界に来てもう少しで一か月。いろんな事があったよ。うん。
日本じゃ魔法使いになれなかったけど、この世界でやっと魔法が使える。
フム。冷静になるともうこの世界に来て一か月か。あ、そういえばゆかり、この世界だとジュウソウか、彼女はこの世界に来て一か月経つとスマホの中身が増えるのを知っていた。
つまり、彼女は俺よりもこの世界に長くいるって事になる。
そこは当然と言えば当然か。同じ日に死んだのなら分かるが、この世界に来て転生者同士のゲームに参加するって奴が多いとも思えないし、主催者は神様。どんな人を転生させるかってのも各自厳しい目で見てるんだろう。
う~ん。一か月が経てばスマホの中身が増える。条件制の解禁型だからどんな条件でどんな物が増えるのか分からんが、俺がここにいるのも、もう少しかな?
嫁を探さないと。おっと間違えた。
強くなるために旅に出なくては。皆になんて言おうかな~。ま、大丈夫だろう。
他にスマホで変わった所は無いか確認すると、おかしな点に気が付いた。
称号・久久能智神の能力に五つのスキルがあるが全く成長していない。全部一レベ。何でだ?
壊れ称号・久久能智神は<植木スキル><成長スキル><木属性付与スキル><木属性耐性スキル><木属性攻撃スキル>の五つのスキルと木の神の加護が付く。加護は木の親和性が高まり、木に慕われやすくなる。これはイマイチ理解できない。放置で。
<植木のスキル>は今度、木でも植えてみますか。他は俺の武器でずっと稽古してたが上がらずか。木の棒だからな。
魔法が使える事で他のスキルが成長することを期待しよう。
それから、今まで成長しているスキルを確認っと。
<連撃スキルLV十><剣スキルLV十二><先読みスキルLV十二><速度上昇スキル(少)LV二十一><鑑定スキル(少)LV二十四><地図スキル(少)二十六><防御力上昇スキルLV八><ガードスキルLV十五><素早さ上昇スキルLV二十三>
こんな感じか、もっと成長しているように思うかもしれないが、一か月でこれならまずまずだろう。スキルはLVを二十以上超えると(少)が付いて効果がかなり上昇する。大体のスキルは二十まで育てないとな。
ガードスキルの上りが異常なのはマスの所為だな。後から所得してここまで上がるとは。あのイジメも無駄ではなかったって事か。
素早さ上昇の上りは物凄いの一言に尽きる。このスキルは(基本ステータス+このスキルで上昇した数値)×一.五が今の俺の速度となる。いきなり速くなってコケてビックリしたものだ。
<素早さ上昇スキル>を外すと基本ステータス×一.五になってしまうが(少)の凄さが分かってもらえればそれでいいだろう。
スキルのレベルは(少)からは一レベルで大きな差が出る。これがもっと大きなレベル差になったらとんでもないだろうな。
俺はスミスさんに一撃入れられるのだろうか……。
今日はもう寝よう。体が怠い。おやすみ~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます