魔法について

 押忍‼︎男の中の漢。名は学。年は三十六歳だ。徐々にこの世界に慣れてきてるような気がします。多分。


「どうだ?ガクは?」

「ボスが言うだけはありやすね!叩けば叩くだけ面白いぐらいに伸びる」

「そうだろう!!面白いように伸びるから鍛えがいがあるだろう。魔法はどうだ?スナーチャ」

「……異常。適性が三つもある」

「「……チラ」」

「俺をそんな目で見ないでください!!」


 スミスさんもマスも『ハァ?またお前やらかしたの?いい加減にしろよな~』みたいな目で見やがって!!

 好きで適性が三つあるんじゃないぞ!!


「ガク。なんで三つも適性があるか分かるか?」

「う~ん。そうですね~。無理やりに仮定するならですが、称号が関係しているんじゃないかと思います」

「称号か」

「はい。俺は親愛の女神の加護と木の神の加護の二つがあります。僕の加護の一つに木の適正があり、もう一つが陽の適正。これは二つの加護を持っているから適性になったのだと思います」

「フム。もう一つの適正は?」

「風の適正ですが、それは俺が元々持ってた適正だと思います」

「……ほど。ボスに聞いたけど称号ってすごい」

「これは俺が無理やり考えた事なので合っているか分からないですよ?」

「……でも、異常には変わりない」


 どのくらい異常かと言うと人間が三人融合して各パーツやら人格やらが分かれててそれが完全に生物として確立してるって感じだからまず無理だな。

 何?そのヘンテコな生き物。手も足も頭も三つあるって事だよな。コワ!!


「明日はどうするんだ?」

「……一日魔法を教える」

「分かった。マスはそれで構わないか?」

「大丈夫です」

「そうか。ガク明日は一日スナーチャに魔法を教えてもらえ」

「分かりました」


 今日はマスに体が動かなくなるまで剣の稽古だったからな。明日ぐらいはのんびりしたいものだ。


 それにしても魔法で陰と陽なんて初めて聞いた。光と闇みたいな物かな?明日聞こうっと。


 それからサラの手料理晩ご飯を食べ、お腹が幸せになり、マスの稽古の疲れが出たのか早めに寝てしまった。もう少しサラとお話ししたかった。


 朝、アラームで目を覚ます。アラーム便利だな。やっぱり文明の利器は良い物だ。

 起きた時間は朝の四時半。なぜこんな時間に起きたかと言うと少しだけ剣の稽古をしておきたかったからだ。この世界は弱いと死ぬ世界だ。弱い俺は少しずつ強くなるしかない。加護のおかげで成長しやすいがそれでも鍛えなければ無意味だ。宝の持ち腐れなのだ。


 俺もいろいろと考えた。この世界は俺が考えていた世界とは違う。イヤ、俺が考えていたのはゲームのような世界だ。この世界はゲームのような現実なのだ。

 ステータスがあり、称号もある。モンスターがいて、ダンジョンや塔なんかもある。でも弱ければ死ぬ。


 弱ければ自分を貫く事も、好きな人を助けることもできない。大切な人が増えればそれだけ強くならないといけない。俺が目指している物はもしかしたらとても険しい道なのでは?と考えてしまうがこの世界に来たのもハーレムの為だし、ハーレムの為ならたとえ火の中、水の中だ!!やってやる!!


 俺は一心不乱に剣を振る。強くなるために。昨日、マスがやったような攻撃、スミスさんのやった避け方をやる。


 あの二人の動きに共通してた事は芯がぶれない事。どんな攻撃をしてもどんな避け方をしても体の中心はぶれない。俺もアレを見習わなくては。


 スミスさんの避け方はどうだったか。あれだけ避けられれば嫌でも避け方のパターンを覚える。まずは避ける時と剣で受け止める時の違いだ。

 避ける時は必ず次の攻撃が来る時に備えて最も距離が開くように避けていた。これに気が付いたのは結構後半だったな。

 必要最低限の動きで避けるのは俺の動きを完全に見切っていたからじゃなくて読まれていたからなんだろうな。

 剣で受け止めるのもパターンがあった。完全に受け止める場合は俺の力が完全に乗る前であった事。力が乗った場合は受け流すようにしてた。


 スミスさんに攻撃を当てる場合はどうするか。回避の仕方を覚える事が大事なような気がする。どんな攻撃をしたらどんな回避をするのか分かれば後は攻撃あるのみだ!!たぶんだがな。


 そうなると攻撃も大事になってくる。マスは俺にどんな攻撃をしていた?あんなボロ雑巾にされたんだ見える攻撃は覚えてる。


 マスの動きは一見、一心不乱に振り回しているような感じだが、あれだけ長時間攻撃にさらされていれば分かる事もある。

 一撃を繰り出した後、必ず決まった型になる。そこからまた攻撃に移る。決まった動きがマスにはあった。連続に見える攻撃に必ず戻る箇所があった。

 そこから次の攻撃に行くときは全く違う動きをするからビックリだ。本当に人の動きかね。あれは。

 読まれない工夫や見切られないテクニックがあるんだろうな。その一つがあれなんだろう。


 こうして二人の動きを理解すると……。フザケンナ!!どんな難易度だよ!!何だよあの動きは。人に出来るか!!バカ野郎~!!

 俺にあの動きの半分もできやしないぞ!!


 う~む。二人の動きは全く参考にならないな。分かってても体が動かない。ま、少しずつで良いか。

 そうだよ。あの動きは今の俺には無理なんだ。人外の動きを僕が出来るはずがない。


「こんな朝早くに何やってるんだ?」

「スミスさん!!」

「見るからに朝の稽古だと思うがあってるか?」

「はい」

「よし。俺が相手になろう」

「え?」

「相手がいた方が稽古にあるだろう?」

「でも、こんな朝早く。さすがに悪いですよ」

「気にするな。最近は剣をまた持つようになってな、そのついでだ」

「なんでですか?」

「いやなに、俺は剣を極めたつもりでいたからな。極めていないなら極めようと思っただけだ」

「なるほど」

「さぁ来い。攻撃を当ててみろ」

「今日こそは当てて見せます!!」


 気合いそこそこで臨んだが案の定まったく当たらなかった。だから何だよあの動きは!!チートだ!!


 サラが俺たちのことに気が付いて声をかけるまでスミスさんと稽古していた。なんで汗の一つも掻かないんだ?不思議だな。


 お風呂に入り、汗を流してサラの料理を手伝う。サラのエプロン姿はマジ天使。ヤベ、目が溶けそう。


 朝食をとった後はスナーチャさんと魔法の勉強か。以外にもこれは得意かもしれな。フッフッフ。


「……まず、魔法について教える。質問は随時受け付ける」

「わかりました」

「……魔法は全部で七種類」

「えっと火、水、木、風、土、陰、陽ですよね?」

「……そう」

「陰と陽がよくわからないんですけど」

「……陰と陽は他の五種類とは違う魔法の事を指す。その使い方で陰と陽に分けられる」

「使い方?」

「……陰は五種類とは違う魔法で相手に作用のある魔法」

「??」

「……陽は五種類とは違う魔法で自分に作用のある魔法」

「????」

「……わからない?」

「コクコク」

「……そう。陰の代表魔法は相手を束縛したり呪いや祝福、など」

「え?呪いと祝福って一緒の部類何ですか?」

「……魔法は表裏一体。魔法で傷つけるも守るもその人しだい」

「魔法って深いですね」

「……その年で理解できるなんて、君は本当に十五歳?」

「精神年齢はもっと上かもしれないですね」

「……そう。陽の代表魔法は自己強化や味方の強化、相手の足止めや減少系魔法」

「相手の足止めの魔法が陰なのは何でですか?」

「……呪いや祝福と同じように魔法は表裏一体。強化も減少も一緒」

「なるほど。なんとなく理解できました」

「……まず、守ることがある」

「はい」

「……魔法を誰かに教えないこと」

「なぜですか?」

「……未熟な者が教えると良いことにならない」

「分かりました」

「……極力自分が魔法を使えると言いふらさないこと」

「これは他人が自分を求めるからですか?」

「……そう。魔法は万能からほど遠い物。それを理解してない人はたくさんいる」

「トラブル防止ですね。わかりました」

「……魔法は己で考えて使うこと」

「悪いことには使うなってことですよね?」

「……違う。悪いことだと分かってても後悔しない信念と責任があれば悪いことに使っても構わない。ダメなのは何も考えず、他人に言われるがままに使うこと」

「分かりました」

「……これは私のお願い。魔法を使えることで慢心することがある。その時は私に会いに来ること」

「分かりました」

「………それじゃ魔法を教える前に魔力の通路をこじ開ける」

「痛くないですか?それ」


 聞くからに全身に痛みが伴う感じなんだが、大丈夫だろうか?


「……大丈夫。そこに横になって体の力を抜いて」

「……はい」

「……目をつぶって」

「?? わかりました」

「……やるよ?」

「はい」


 それから俺は意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る