慣れない。

 押忍!!男の中の漢。名は学。三十六歳です!! ゲームでも選択報酬は迷ってしまうタイプです。結局、攻略サイトなどを見て決めてしまう事が多かったな~と現実逃避しています。


「どれにするんだ?」

「…………どれも捨てがたい」

「どれも魅力的ですよね」

「【ガチャガチャアプリ】は多分ほとんど外れの物が景品として排出されるけど当たりはデカいような気がするし、<魔法スキル>は覚えてもうまく扱えるかが微妙だけど出来たら強い。・ランダム称号はよく分からないけど、前の二つがあってこれが外れって事は無いと思うし、迷うな~」

「そうですね。どれも一長一短はありますけど」

「俺ならガチャガチャだな」

「その心は?」

「酒が手に入る可能性がある」

「「なるほど」」


 スミスさんの場合、強さはもう人外だし、レベル九十一だし好きな物に走るのも分かる。


「私は<魔法スキル>は持ってますし、称号を選びますかね?」

「そうか!!サラは<魔法スキル>持ってるのか。…………どうやって覚えたの?」

「スナーチャさんに教えてもらいました」

「スナーチャさんが?なぜに?」

「サラクの師匠はスナーチャだぞ?」

「え?!スナーチャさん魔法使いだったんですか?!」

「はい。シャスくんもスナーチャさんの弟子ですよ?」

「おぉ。そういえばサラを助ける時にスキル使ってたな」

「スナーチャは魔法使いじゃなくて魔導士だがな」

「魔導士?」

「魔法を限界まで高めた先にある魔道を更に高めた人のことです」

「無口なスナーチャさんがそんなすごい人だなんて知らなかった」

「本気で怒らせたらあいつはこの街を更地にできるだろうな。本気でそう思う」

「…………」


 スミスさんが少しだけ恐ろしそうに言った。怒らせたらいけない人っているよね~。


「俺も習えるかな?」

「できるんじゃないか?覚えるだけならそれほど難しくはないしな」

「難しくはないですね」

「だったら<魔法スキル>は除外だな」

「良いんですか?もし覚えられなかったら」

「その時はその時で」


 実際は軽く寝込むくらいはショックを受けそうだがな。


「ならどっちかだな」

「…………決めた。・ランダム称号にする!!」

「どうしてだ?」

「強くなれそうだから!!」

「お前、弱いからな」


 人外に言われたら人は皆、弱いだろう。俺が弱いのは事実だがな。


「ランダム称号を選んでっと」


 どんなのが来るか緊張するな!!


「…………」

「どうした」

「どんな称号ですか?」

「称号・久久能智神…………ヤバイな」

「ククノチ?何ですか?それ」

「俺も知らないな」


 俺も詳しくは知らないがPCに向かっていた時期は多い。暇つぶしに日本の神様について調べてたらあったような気がする。偉い神様だ。


「え~っと。俺の世界の神様の一人?だと思います」

「神様の称号ですか?」

「内容は見たか?」

「怖くて見てませんが見てみます」

「どんなのが来ても私は驚きませんよ!!」

「俺はまだ慣れんよ」

「えっと…………。あ、コレ、ヤバイ奴だ。ハハ。ハァ~~」

「どうした」

「もう笑うしかありませんよ」


 強いか弱いかで言ったら強い。当たりかハズレかで言ったら当たりだ。なぜこんなにも嬉しそうでないのかはその効果だ。


「・久久能智神の効果は<植木スキル><成長スキル><木属性付与スキル><木属性耐性スキル><木属性攻撃スキル>の五つをこの称号を持つ事により装備する必要なくステータスに反映されます。後、木の神の加護が付きます。どうです?この壊れ性能」

「言葉もない」

「ごめんなさい。とても驚きました」


 この称号は多分、この世界で持っている人は転生者でもいるのか怪しい程の加護だな。さすがは木の神様だ木オンリーだな。これだけ木が多いとゴミから木をリサイクルしちゃいそうだ。


 しかも、これだけあっても鍛えないと意味をなさない辺りは現実を感じるな。


 スキル装備は五つ。称号で常時装備スキル五つ。加護が二つか。強い!!と、思うじゃん?


「お前、どこに向かってるんだ?」

「……俺が知りたいです」

「……」

「これだけあって俺は全く強くないんですよ?」

「……そうなんだよな~」

「強くならないんですか?」

「鍛えれば強くはなるとは思う。けど現状はあまり変わらない」


 称号のスキルは一レべからスタート。たぶん【取得可能スキル一覧アプリ】の中にあるやつが五レべスタートでそれ以外は一レベからなのだろう。


「お前、今日からしばらく仕事休め」

「……何故か聞いていいですか?」

「お前を鍛える。任せろ」

「ガクさん。死なないでくださいね?」

「あなたは俺に何をさせる気だ!!」

「ん?…………まぁ、いろいろだ」

「逃げていいですか?」

「いいぞ。ただし、サラクは諦めろよ?」

「修行頑張ります!!」


 サラを出されちゃ引けないよ!!


 さて、やっと確認が終わった。


「サラはこれからお店?」

「そうです」

「お前は休みだぞ?」

「…………わかってます」


 サラは片付けをしてお店に向かってしまった。


 俺はスミスさんと二人。正直に言って逃げたい。


「ガク。装備に着替えて裏に出ろ」

「分かりました」


 俺は【アイテム収納アプリ】から直接着替えた。十秒もかからない早着替えだ。


「裏で待ってますね」

「あ、あぁ。早いな。これまでで一番驚いたかもしれん」


 スミスさんは目を見開き驚いている。俺はスマホをペンダントに変えておく。もちろん設定は変更済み。アイテムが消えるのはゴメンだ。


「俺、これが武器なんですけど」


 俺は武器を見せた。もちろん木の棒だ。ん?称号的にもいいのかな?…………なら木刀がいいな。


「…………。それでいいんじゃないか?」


 スミスさんも多分だが俺と同じ考えに至ったのだろう。


 裏庭でスミスさんを待つ間、スマホを開き木の神の加護を確認する。確認し忘れた。


「意味ワカメ」


 どういう事だ?この加護は。木との親和性が高まり、木に慕われやすくなる。


 俺は木と友達になれるってことかな?百人?本かな。百本は友達ほしいな~。なんて。……なぜだろう。涙が止まらないや。


「なに泣いてるんだ?」

「いえ。目にゴミが」

「どんなゴミが入ればそんなに涙が出るんだ。まったく」


 スミスさんは剣を持っている。服装は普段着ではないがラフな動きやすい物だな。……修道服じゃないよ?。


「スミスさん。どんな事するんですか?」

「どうしてだ?」

「内容によってはスキルの構成を変えようかと」

「……まだ、慣れないな」


 だろうな。スキルをコロコロ変える奴なんて今までにいなかっただろし、いたらそれは転生者だ。


「……まずは、お前が俺に攻撃しろ。その棒で構わない。遠慮も必要ない。まず当たらんしな」

「当たったらどうしますか?」

「そうだな。……貸しを一つでどうだ?」

「やる気が出てきました」


 スマホを開く。【取得可能スキル一覧アプリ】の中から<連撃スキル><剣スキル><先読みスキル>

<速度上昇スキル>を取得


 鑑定と地図と防御力上昇を外し、取得したスキルを装着。レベルが五あるからか、体が少し軽くなった。


「何かしたのか?」

「少しだけ」

「そうか。こい」

「フーー。行きます!!」


 俺は真っ直ぐ突っ込み棒を真っ直ぐ振り下げる。スミスさんは後ろに少しだけ下がり避ける。


 避けるのは振り下げている途中で読んでいたので連撃を使い更に攻撃。


 振り下げた棒の力を殺さずに横に振る。


 今度は剣で受け止められた。


「……当たる気がしない!!」

「当たり前だ」


 ムカ!!


 俺は先読みを使い。スミスさんの動きの先を読む。だがスミスさんは捕まらず捉えられず、剣で防がれ、避けられる。


 三十分ぐらいはがむしゃらに棒を振り続けたが体力の限界が来た。


 膝の力が抜け、まったく力が入らない。


「フム。スタミナ切れか。いったんここまでにするか」

「くそ!!汗の一つも掻いてない!!」


 汗どころか息も切らしてない。どうなってんだコンチクショウ!!


「やはりスゴイな」

「何がですか?」


 俺は地面に向かって話してるよ?


「パーティ編成だったか?」

「……。編成したままだった」

「お前、先読み系のスキルを使ってなかったか?」

「使ってました。なんでわかったんですか?」

「ん?お前の動きが先読みできたからな」

「……先読みの意味ないじゃんよ~」

「お前の単調な動きは予測しやすいが先読みできるならはっきり言って当たる気がしない」

「俺の使っていたスキルが使えるなら俺もスミスさんのスキル使えますよね?」

「使ってたんじゃないか?」

「そうですかね?」

「三十分も動けたのがそういうことだろう。あんなにスキルを使ってこんなに動けるんだ。間違いないだろう。」

「確かに。連撃に先読み、剣に速度に素早さ。これだけを使って三十分か」

「三十分でどのくらい成長した?」

「……あれ?あまり成長しない。最大で二レベ。上がってないのもありますね」


 なんでだ?


「フム」

「可能性としては、五レベスタートだから。スキルの数が多い。人数で分配される。ですかね」

「だとすれば、人数は違うだろうな」

「なぜです?」

「スキルは使わんとうまくわならん。これが多分レベルが上がるってことだろう」

「だと思います」

「なら、人数で分配されるのはおかしいだろう。そいつしか持っていないスキルなら分配も何もないのだから」

「確かに」

「だとすれば、レベル五スタートと数が原因だろう」

「ですね」

「そういえばパーティはどこまでが共有になるんだ?」

「どこまで?」


 どいうこと?


「俺はお前のスキルを使えたがお前は剣術使えないだろう?」

「俺の限界は今のですよ?」

「サラクの真眼はお前も俺も使えん」

「ですね」

「称号は共有になるのだろうか」

「称号?なぜです?」

「成長速度上昇が共有になれば俺もサラクも強くなりやすいだろう?」

「なるほど。……今、気が付いたんですけど、さっきのレベルの話で上りが遅い理由に成長速度上昇がパーティにも入り、俺が一人の時よりも上昇率が低くなったから遅く感じるのかも」

「だとすると、スキルも称号も共有できる奴とできないやつがあるってことでいいのか?」

「それでいいんじゃないですかね」

「検証する場合はどうする?」

「パーティを解散して鍛えるか、スミスさんのスキル一つをレベル一に変えて検証するか。ですかね」

「なるほど」


 ほかに検証方法あるかな?


「今日はいいだろう。休んだらもう一度だ。パーティは解散しなくていい」

「わかりました」


 その後、スミスさんに攻撃を当てるまで俺の気が収まらず夜までやることになった。けれど全く当たらず、結局、サラに止められ終了になった。


 くそ!!明日は絶対泣かす!!俺って意外に負けず嫌いだったのか。

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